代数方程式とガロア理論

代数方程式とガロア理論
著者 岡本 和夫 編集委員桂 利行 編集委員楠岡 成雄 編集委員坪井 俊 編集委員中島 匠一 著
分野 数学  > 代数学  > ガロア理論
シリーズ 数学  > 共立叢書 現代数学の潮流
発売日 2006/07/10
ISBN 9784320016965
体裁 A5・444頁
定価 4,400円 (本体4,000円 + 税10%)
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 本書は代数方程式とガロア理論について基本的なことをまとめた入門書である。ただし、入門書とはいっても、体のガロア理論で必要とされる事柄はほとんど盛り込んだつもりである。初学者のために詳しい説明を心がけながらガロア理論の「おもしろいところ」まで達することを目標にしたので、本書はちょっと厚めの本になってしまった。
 最初に、本書の「流れ」を簡単に述べておきたい。第1章では、代数方程式の解説を中心に、多項式にかかわる事柄をまとめた。また、代数学では多項式の既約性が重要であるので、第2章で既約性についてまとめてある。第1章と第2章は「ガロア理論を展開するための準備」という意味合いもあるけれども、多項式を扱う数学はそれ自体おもしろいものなので、直接ガロア理論とはかかわらないテーマも取り入れてある。ガロア理論を学ぶには線型代数の知識が欠かせないので、第3章で線型空間について必要な知識をまとめておいた。線型代数にもおもしろい事柄は多いが、それをすべて扱っていると長くなってしまうので、第3章ではあとで必要な結果に限定して解説をおこなった(ただし、必要なことはきちんと証明している)。
 本書の大きな目標は、体の代数拡大に関するガロア理論である。第4章では、ガロア理論が展開される対象である代数拡大について基本事項をまとめてある。第5章が本書の「心臓部」であって、第5章で「ガロア理論とはどんなものか」を解説して証明を与えている。第6章では、ガロア理論の応用の中から、わかりやすいものをいくつか取り上げて説明してある。「ガロア理論を学ぶと何がわかるのか?」という疑問をもっている読者は、まず第6章の内容を眺めてみるのがいいかもしれない。最後の付録では、本書の各所で必要とされる基礎事項をまとめてある。
 「この本の特徴は何なのか」という問いかけに答えるために、本書を書くにあたって筆者が心がけたことを述べておきたい。
 (1) 本書が「入門書」であることを強く意識し、初学者にもわかりやすい説明をすることを心がけた。具体的には
  (a) いたずらに多くのことを扱うのではなく、基本的なことに絞って丁寧に解説した。
  (b) 実例をなるべく多く取り上げるようにした。
  (c) 数学的内容をただ論理的に述べるだけでなく、その事柄の背景や意義なども説明した。
  (d) 証明の過程で「何から何が導かれるか」という筋道がたどりやすいように、推論の根拠となる事柄を明示するようにした。
などの点に配慮してあるのが本書の特徴といえるだろう。
 (2) 数学の中の「おもしろいこと」を取り上げるように心がけた。数学にどっぷり漬かっている数学者にとっては、数学の学習・研究が「自己目的」と化してしまうことが多いのは否定できない。しかし、入門書である本書では「初心」を思い出して、数学の「おもしろさ」や「すごさ」が伝えられるように努力した。具体的には、第6章で取り上げたガロア理論の応用例はどれもとてもおもしろいと思うし、その他にも、ラグランジュ補間式や対称式に関するニュートンの公式なども魅力的な数学である。
 (3) 数学的内容は「本格的」であることを心がけた。本書が入門書だという意味は、内容が"ダイジェスト"だということではない。本書は「ガロア理論をきちんと理解すること」という高い地点を目標にしており、この点で譲歩はしていない。ただ、数学の学習の過程で引っ掛かりそうな「気になるところ」についてあれやこれやと解説を加えている、というのが「入門書」という意味である。だから、本文の中では「ウルサイ!」といわれるくらい"能書き"をたれている(済みません)が、定理や命題という数学的な主張については、極力無駄を省いて正確で簡潔な記述をしたつもりである。数学の学習に慣れてきて「筆者のオシャベリにつきあっているほど暇じゃない」と感じる(いいことです)読者には、本書の定義・命題・定理だけを抜きだして自力で理解し証明していくことをお勧めしたい。そのような読者の鑑賞にも堪えられると思う、というのが「本格的」という意味である。
 本書を執筆してみて、あらためてガロア理論は代数学の華であると感じた。もちろん、ガロア理論は多くの卓越した応用をもつ代数学の大理論であり、その意味で「代数学の華」である。しかし、筆者が今回感じたのは、ガロア理論を構成していく過程自体に代数学のエッセンスが詰まっている、ということである。線型空間や群・環・体といった代数学の「スター」たちが集まり代数学特有の明確で鮮やかな論理展開で協力しあうことによってガロア理論が作り上げられている感がある。この意味で、ガロア理論は「スターの中のスター」であり「代数学の華」なのである。本書を通じて、読者がこの「代数学の華」の魅力に触れていただければ、筆者としても本望である。
(「まえがき」より抜粋)
第1章 代数方程式
1.多項式の根
2.微分
3.対称式
4.代数方程式の解の公式
演習問題

第2章 多項式の既約性
1.既約多項式
2.整数係数多項式
3.分離多項式
演習問題

第3章 線型空間
1.基本事項
2.線型独立性
3.線型空間の基底と次元
4.次元の性質
5.斉次形の連立1次方程式
演習問題

第4章 体の代数拡大
1.体の拡大
2.代数拡大
演習問題

第5章 ガロア理論
1.ガロア拡大とガロア対応
2.ガロア拡大と多項式
3.ベキ根による拡大
4.ガロア拡大に関するまとめ
演習問題

第6章 ガロア理論の応用
1.作図問題
2.代数方程式の解の公式
3.有限体
4.mod p の可約性
演習問題

付録A 必要事項のまとめ
1.集合・写像・論理
2.実数と複素数
3.環と体のまとめ
4.群のまとめ
5.可解群
演習問題

参考文献
索引

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