大型陸上哺乳類の調査法

書籍情報
シリーズ名生態学フィールド調査法シリーズ 【9】巻
ISBN978-4-320-05757-9
判型A5 
ページ数186ページ
発売日2017年07月12日
本体価格2,600円
大型陸上哺乳類の調査法 書影
大型陸上哺乳類の調査法

新刊

 世界的に見て多くの野生動物の個体群やその生息地は急速に減少している。一方で,日本国内ではシカ,イノシシの急激な分布の拡大に伴い,農林業の被害のみならず,生態系の改変を通じた生物多様性の低下といったさまざまな問題が生じている。野生動物の保全および科学的な管理のために関係者が果たすべき役割はこれからますます重要になり,高度な知識や技術が求められるだろう。こうした問題に対処するためには,質の高い調査・研究によって得られた,客観的かつ科学的な情報が必要となる。

 本書は,野生動物,特に我々と身近に接することの多い大型陸上哺乳類に焦点を絞っている。大型陸上哺乳類の調査では,野外調査を始める前に法令や取り扱いに伴う生命倫理への正しい理解が求められ,実際の野外調査には,観察や捕獲,機材,取得サンプルの解析手法等,調査・研究を行う上での非常に多岐にわたる知識が必要となる。野生動物管理にあたっては,さらに応用的な知識が求められる。したがって大型陸上哺乳類の調査では,必然的にほかの生物種群の野外生態調査よりスケールや知識範囲は広くなるが,本書はそれらを網羅的に扱うとともに最新の内容も盛り込み,多くの関係者にとって有益な書籍となっている。これからの大型陸上哺乳類の野外生態調査・研究や,その後の実際の野生動物の保全や管理に,本書が果たす役割はきわめて大きいだろう。

目次

第1章 調査・研究に関連する法令の理解と動物の取り扱いの倫理
1.1 はじめに
1.2 調査地への立ち入りおよび調査機材の設置など
  1.2.1 国有林への入林/調査機材の設置
  1.2.2 民有林への入林/調査機材の設置
  1.2.3 自然公園への機材の設置
  1.2.4 道路通行許可
  1.2.5 緊急時の安全確保のための方策
1.3 野生動物の捕獲
  1.3.1 鳥獣保護管理法による捕獲
  1.3.2 天然記念物の捕獲
1.4 調査・研究機材の運用
  1.4.1 電波発信機を用いた行動追跡調査
  1.4.2 テレメトリー装置の回収装置
  1.4.3 麻酔銃および刃物の取り扱い
  1.4.4 麻酔薬の使用
  1.4.5 その他注意が必要な機材
1.5 外来種の取り扱い
  1.5.1 運搬/飼養
1.6 標本や試料の取り扱い
1.7 野生動物研究の倫理
  1.7.1 研究にあたっての倫理的な配慮
  1.7.2 捕殺措置

第2章 行動観察のための捕獲と標識・機材の装着
2.1 はじめに
2.2 捕獲
  2.2.1 捕獲の方法
  2.2.2 ハンドリングの方法
2.3 捕獲後のサンプリング
  2.3.1 血液
  2.3.2 体毛/組織
  2.3.3 外部寄生虫
  2.3.4 歯牙
  2.3.5 その他のサンプル
2.4 体計測
2.5 栄養状態の判定
2.6 マーキングおよび機材の装着方法
  2.6.1 マイクロチップ
  2.6.2 標識
  2.6.3 ブラインド/入れ墨
  2.6.4 首輪

第3章 行動に関する研究方法と解析手法
3.1 はじめに
3.2 直接観察法
3.3 テレメトリー法
  3.3.1 テレメトリー法運用の際のモラル
  3.3.2 ラジオテレメトリー法
3.4 GPSテレメトリー法
  3.4.1 GPSテレメトリーシステムの概要
  3.4.2 データ回収
  3.4.3 GPS装置取り付けの際のティップおよび倫理
  3.4.4 装置の取り外し
  3.4.5 空中からの個体の探索
  3.4.6 行動圏の推定
3.5 バイオロギング/バイオテレメトリー
  3.5.1 活動量センサー
  3.5.2 温度計/心拍計
  3.5.3 動物装着カメラ
  3.5.4 空間近接ロガー(spatial proximity logger/sensor)
  3.5.5 センサー式自動撮影カメラ

第4章 捕獲個体からの科学的データ収集
4.1 はじめに
4.2 どうやって死体を集めるのか
  4.2.1 狩猟およびそれ以外による捕獲個体
  4.2.2 ロードキル個体
  4.2.3 動物園死亡個体
  4.2.4 死体の一時保管方法
  4.2.5 自然史系博物館の標本類
4.3 集めた個体を用いた研究
4.4 標本としての恒久的な保管とデータベースの構築

第5章 生態・生理データのサンプリング
5.1 はじめに
5.2 体計測
5.3 齢査定
  5.3.1 歯根部セメント層を用いた齢査定
  5.3.2 歯牙の萌出・交換・磨滅程度を用いた齢査定
  5.3.3 角の年輪を用いた齢査定
5.4 栄養状態判定
  5.4.1 体重の計測
  5.4.2 体内脂肪量の計測
  5.4.3 血中レプチン濃度の計測
  5.4.4 体脂肪量の推定
  5.4.5 ボディコンディションの評価
5.5 繁殖に関する情報
5.6 心拍/体温

第6章 食性にかかわる調査
6.1 はじめに
6.2 採食物の特定と定量的な評価
  6.2.1 直接観察法
  6.2.2 植生変化調査法
  6.2.3 食痕調査法
  6.2.4 糞内容物分析法
  6.2.5 胃内容物分析法
  6.2.6 体組織(特に体毛)の安定同位体比を用いた方法
6.3 栄養学的な視点による食性調査
6.4 今後の研究の展開や展望

第7章 生息環境の評価
7.1 はじめに
7.2 動物の分布情報・利用状況・生息状況の把握と測定
  7.2.1 動物の在・不在データの取得
  7.2.2 動物の利用状況の把握
  7.2.3 動物の生息状況の把握
7.3 環境特性の測定
  7.3.1 測定項目の選出
  7.3.2 環境特性情報の収集
7.4 生息地評価の解析方法
  7.4.1 定量的な在データを用いた生息環境の評価
  7.4.2 定性的な在・不在データを用いた生息環境の評価
  7.4.3 在データのみを用いた生息環境の評価
  7.4.4 生息地の評価モデル

第8章 個体群動態の把握
8.1 はじめに
  8.1.1 分布調査
  8.1.2 広域スケールのグリッドを用いた野生動物の分布調査の事例
8.2 個体数の算出
  8.2.1 動物の数を数える
  8.2.2 正確度と精度
  8.2.3 個体数評価技術
8.3 絶対数推定のためのセンサス技術
  8.3.1 すべての個体がカウントされる:全数カウント
  8.3.2 すべての個体が発見されない
8.4 密度指標(間接法)
8.5 生態的指標の利用
8.6 状態空間モデルを用いた個体数推定

索 引