ナノ構造の科学とナノテクノロジー

―量子デバイスの基礎を学ぶために―

ナノ構造の科学とナノテクノロジー
著者 Edward L.Wolf 著吉村 雅満 訳目良 裕 訳重川 美咲子 訳重川 秀実 訳
分野 物理学  > 応用物理
発売日 2011/01/21
ISBN 9784320071810
体裁 B5・294頁
定価 6,600円 (本体6,000円 + 税10%)
在庫 品切れ・重版未定
  • この本の
    内容
  • 目次
"Nanophysics and Nanotechnology-An Introduction to Modern Concepts in Nanoscience- Second、 Updated and Enlarged Edition"、Edward L. Wolf(エドワード・L・ウルフ)著の翻訳書。
原著は海外で評価の高い「ナノテクノロジー」「ナノ物理」のテキストブックである。ナノテクノロジーの舞台となる、ナノスケールの世界で現れる量子効果を理解し活用するための基礎科学「ナノ物理」の概念を学ぶことが本書の目的となっている。
内容構成は全10章であり、ナノ物理の基礎から工学への応用までを網羅する。第1章では、まずナノスケールの世界の概念、及び江崎ダイオードやハードディスクなど身近な例が示される。第2章では、縮小化した場合の様々な物理現象のスケーリング則、第3章では縮小化の限界が検討され、生体デバイスやナノデバイスの作製法を概観する。第4章ではナノ構造の世界で現れる量子性を学ぶための基礎となるシュレディンガー方程式やボーアモデルが登場する。さらにトンネル効果や磁気モーメントについての詳細が議論なされている。第5章はこの量子性がマクロな物性、例えば強磁性等をどのように記述するかを理解するためにさかれ、第6章では自己組織化に注目し、自然界並びに人工的に作製されるナノ構造が、また第7章では物理的な手法によるナノ構造作製法の実際が紹介される。あわせて、個々の原子を動かすことのできるプローブ顕微鏡法について、その可能性が議論されている。第8章では、ナノ物理に基づく量子テクノロジーとして、磁性、電子、核スピンが切り拓く応用例-ハードディスクやMRI等の医療機器で用いられるスピンデバイス、未来の計算手法となる量子コンピュータや、超電導デバイスについて述べられており、第9章では、将来のシリコンデバイス、例えば、有機分子やカーボンナノチューブを用いた分子エレクトロニクス、及び電荷量子ビットを利用した量子コンピュータ、あるいは単電子トランジスタ等が紹介される。そして、第10章は最終章として、ナノテクノロジーが人類にとってどのような意味を持つか、その位置付けについて、ともに議論する形でまとめられている。
このように、幅広い分野を網羅した内容を対象としてナノ物理を基礎から説き起こすバランスのとれた本書は、学部上級、大学院修士課程の学生に向けて、そして、ナノテクノロジーに興味をもつ技術者・研究者に向けての教科書として最適な内容構成となっている。
第1章 はじめに
1.1 ナノメートル,マイクロメートル,ミリメートル
1.2 ムーアの法則
1.3 江崎の量子トンネルダイオード
1.4 さまざまな色の量子ドット
1.5 GMR100Gbit ハードディスクの「読み取り」ヘッド
1.6 われわれの車の加速度計
1.7 ナノ小孔フィルタ
1.8 従来技術によるナノ材料
参考文献

第2章 物質を小さくすると
2.1 小さな系で機械的周波数は大きくなる
2.2 単振動モデルによるスケーリング
2.3 単純な回路素子によるスケーリング則
2.4 熱時定数と温度差は減少する
2.5 流体中における微粒子の強い粘性力
2.6 高対称性の分子システムにおけるゼロ摩擦力
参考文献
コラム1―フォノン(基本格子が2個の原子を含む場合)

第3章 どこまで小さくできるか?
3.1 物質の粒子性:光子,電子,原子,分子
3.2 生体に見るナノモーターとナノデバイス
  3.2.1 直進バネモーター
  3.2.2 トラック上の直進エンジン
  3.2.3 回転モーター
  3.2.4 イオンチャネル,生体ナノトランジスタ
3.3 どれだけ小さいものが作れるか?
  3.3.1 小さな物体を作る方法
  3.3.2 作りたいものをどうやって見るか?
  3.3.3 どうやって外界とつないでいくか?
  3.3.4 もし,目に見えず,あるいは配線ができないなら,自己組織化的に配列し機能できないか?
  3.3.5 微小3次元物体の作製方法
  3.3.6 DNA螺旋を用いてナノメートルサイズの構造を作る
参考文献

第4章 ナノの世界の量子性
4.1 ボーアの原子構造モデル
  4.1.1 角運動量の量子化
  4.1.2 ボーアモデルの拡張
4.2 物質と光:粒子と波の二重性
4.3 波動関数と確率密度:伝播する波,定在波
4.4 フォトンの波動関数としてのEとB,光ファイバーのモード
4.5 ハイゼンベルグの不確定性原理
4.6 シュレディンガー方程式,量子状態,エネルギー,トンネル現象
  4.6.1 1次元のシュレディンガー方程式
  4.6.2 1次元のポテンシャルに捕獲された粒子
  4.6.3 階段状ポテンシャルでの反射とトンネル
  4.6.4 2重障壁,井戸からの脱出時間
  4.6.5 2次元,3次元で捕獲された粒子:量子ドット
  4.6.6 量子井戸と量子細線(ワイヤ)
  4.6.7 単純な調和振動子
  4.6.8 球面極座標でのシュレディンガー方程式
4.7 水素原子,1電子原子,エキシトン
  4.7.1 磁気モーメント
  4.7.2 磁化と磁気感受率
  4.7.3 ポジトロニウムとエキシトン
4.8 フェルミ粒子,ボーズ粒子の占有についての規則
参考文献
コラム2―3,2,1次元の状態密度
コラム3―プラズモン

第5章 量子効果の巨視的世界への影響
5.1 元素周期律表
5.2 ナノ対称性,2原子分子,強磁性体
  5.2.1 区別できない粒子,その間の交換
  5.2.2 水素分子,2原子水素:共有結合
5.3 より純粋にナノ物理的な力:ファンデルワールス力,カシミール力,水素結合
  5.3.1 双極子相互作用,ファンデルワールスの揺らぎの力
  5.3.2 カシミール力
  5.3.3 水素結合
5.4 自由電子を入れる箱としての金属:フェルミレベル,状態密度,次元性
  5.4.1 電気伝導,抵抗率,平均自由行程,ホール効果,磁気抵抗
5.5 周期的構造と電子のエネルギーバンド
5.6 電子バンドと半導体,絶縁体での電気伝導:局在と非局在
5.7 水素状ドナーおよびアクセプタ
  5.7.1 半導体中のキャリア濃度,金属ドーピング
  5.7.2 pn接合,整流特性,電流注入型レーザー
5.8 再び強磁性について,ハードディスクのナノ物理的基礎
5.9 表面でのショットキー障壁
5.10 強誘電性,圧電性,焦電性:進化するナノテクノロジー
参考文献

第6章 自然,および人工的な自己組織ナノ構造
6.1 炭素原子:126C1s22p4(0.07nm)
6.2 メタンCH4,エタンC2H6,オクタンC8H18
6.3 エチレンC2H4,ベンゼンC6H6,アセチレンC2H2
6.4 C60バッキーボール(約0.5nm)
6.5 カーボンナノチューブ(約0.5nm)
  6.5.1 シリコンナノワイヤ(約5nm)
6.6 InAs量子ドット(約5nm)
6.7 AgBrナノクリスタル(0.1 ~ 2 1m)
6.8 走磁性細菌中のFe3O4 マグネタイト,Fe3S4グレイジャイト粒子
6.9 金やその他の平坦な表面上での自己組織化膜
参考文献

第7章 物理的手法によるナノ構造の作製
7.1 シリコンテクノロジー:ナノテクノロジーへのIntel-IBMのアプローチ
  7.1.1 パターニング,マスク,光リソグラフィ
  7.1.2 シリコンエッチング
  7.1.3 高伝導性電極領域の作製
  7.1.4 金属や絶縁膜の形成方法
7.2 横方向の分解能は光の波長で決まる
  7.2.1 光・X線リソグラフィ
  7.2.2 電子ビームリソグラフィ
7.3 犠牲層,架橋,単電子トランジスタ
7.4 シリコンコンピュータ技術の未来
7.5 放熱と高速単一磁束量子テクノロジー
7.6 走査プローブ法:1つずつ原子を動かす
7.7 STM:分子組立て装置
  7.7.1 金原子を動かして表面分子を作る
  7.7.2 STMによる有機分子の組立て
7.8 原子間力顕微鏡アレイ
  7.8.1 光リソグラフィによるカンチレバーアレイ
  7.8.2 AFMによるナノ加工
  7.8.3 磁気共鳴AFM による単一電子スピン検出
7.9 基本的な問題:速度,精度
参考文献

第8章 磁性,電子と核のスピン,超伝導を基礎とした量子テクノロジー
8.1 シュテルン-ゲルラッハの実験:電子のスピン1/2角運動量の観察
8.2 2つの核スピン効果:MRIと21.1cm線
8.3 量子コンピュータにとっての電子スピン1/2:量子重ね合わせ,コヒーレンス
8.4 硬磁性体と軟磁性体
8.5 GMR:スピンに依存した電子散乱
8.6 GMRスピンバルブ,ナノ磁気抵抗センサー
8.7 TMRトンネルバルブ,高感度ナノ磁場センサー
8.8 磁気ランダムアクセスメモリ
  8.8.1 磁気トンネル接合MRAMアレイ
  8.8.2 強磁性・半導体不揮発性ホール効果ゲート素子
8.9 スピン注入:Johnson-Silsbee効果
  8.9.1 強磁性体からカーボンナノチューブへのスピン注入
8.10 磁気論理デバイス:汎用多数決論理デバイス
8.11 超伝導と超伝導磁束量子
8.12 ジョセフソン効果と超伝導量子干渉検出器
8.13 超伝導RSFQ論理/メモリコンピュータ素子
参考文献

第9章 シリコンナノエレクトロニクス,そしてその先へ
9.1 コヒーレントな電子を用いた電子干渉素子
  9.1.1 スタブのある量子導波路での弾道的な電子輸送:実験と理論
  9.1.2 カーボンナノチューブにおける量子干渉効果
9.2 カーボンナノチューブセンサーと高密度な不揮発性RAM
  9.2.1 ナノチューブ固有の強い電場を用いた,カーボンナノチューブによる極性分子のセンサー
  9.2.2 超高密度超高速不揮発性RAM のためのカーボンナノチューブクロスバー配列
9.3 共鳴トンネルダイオード,トンネリングホットエレクトロン・トランジスタ
9.4 2重井戸型ポテンシャルによる電荷量子ビット
  9.4.1 シリコン技術に基づく量子コンピュータ量子ビット
9.5 単電子トランジスタ
  9.5.1 無線周波数単電子トランジスタ,役に立つ研究用ツール
  9.5.2 電荷量子ビットを素電荷以下の分解能で読み出す
  9.5.3 SETとRTD(共鳴トンネルダイオード)の動作比較
9.6 2重井戸電荷量子ビットへの実験的アプローチ
  9.6.1 2つの電荷量子ビットを固体素子で結合する
9.7 新しい量子ビットのためのGaAsチップ上のイオントラップ
9.8 電気回路中での能動要素としての単分子
9.9 シリコンCMOS技術と分子エレクトロニクスを組み合わせたハイブリッドナノエレクトロニクス:CMOL
参考文献

第10章 将来の展望
10.1 Drexlerの(分子)機械の回転軸と軸受け
  10.1.1 機械組立てに対するSmalleyの反論
  10.1.2 ファンデルワールス力による摩擦のない軸受け
10.2 分子組立ての概念における欠点
10.3 分子機械は技術を変革し自己複製を始めて地球の生命を脅かすだろうか?
10.4 遺伝子工学とロボットの危険性
10.5 バイオテクノロジーと合成生物学の社会と倫理との関わり
10.6 Fukuyamaが言う「ポスト人類」は存在するのか?

参考文献
出典
略語集
演習問題
演習問題の略解
物理定数表
参考文献(和書)
索引

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