保型関数―古典理論とその現代的応用― 

書籍情報
シリーズ名共立講座 数学の輝き 全40巻予定 【10】巻
ISBN978-4-320-11204-9
判型A5 
ページ数288ページ
発売予定2017年06月27日
本体価格4,300円
保型関数 書影
保型関数

新刊

 世の中に保型関数のテキストは数多くあるが,それらは保型関数の世界を社会構造論的に解説するものである。本書は,1変数の古典的保型関数論の基礎事項を述べた上で,その世界を支えている主要な函数たちを“列伝風”に描写しており,その意味で類書とは一線を画する。
 学部レベルの複素関数論,一通りの群・環・体論の知識を仮定し,まず保型関数の基礎を述べた上で,ヤコビのテータ函数・ガウスの超幾何函数の理論を概観し,それらを用いて重要な個別の保型関数を導入する。さらに,19世紀のクラインが研究した保型函数を紹介して,その現代的な応用例を詳述し,最後に志村五郎によって研究された高次虚数乗法論の明示的な実例を構成する。
 嘗て,高木貞治は『近世数学史談』において,楕円函数論を,ガウスの超幾何函数・ヤコビのテータ函数・アーベルの虚数乗法論の三幅対と見立てた。本書はこの高木の観点を拡大展開し,さらに将来の多変数保型関数論のための幾つかの切り口を用意する意図で展開されている。

目次

第1章 楕円曲線と楕円モジュラー
1.1 SL2(Z) と複素トーラスのモジュライ
1.2 SL2(Z) の基本領域と生成元
1.3 ワイエルストラス℘と2 重周期関数
1.4 3 次代数曲線論
1.5 ワイエルストラス℘による3 次曲線の助変数表示
1.6 楕円モジュラーj(τ)
1.7 楕円モジュラー曼荼羅

第2章 SL2(Z) に関する保型形式概論
2.1 保型形式の概念
2.2 アイゼンシュタイン級数
2.3 楕円曲線から導かれる保型形式,とくに判別式形式
2.4 保型形式環M(Γ)
2.5 デデキントのエータ
2.6 アイゼンシュタイン級数E2(z)
2.7 ゼータとテータ
2.8 余興:楕円曲線のハッセ-ヴェイユL

第3章 合同部分群に関する保型形式
3.1 概説と記号
3.2 尖点
3.3 合同部分群によって得られるリーマン面
3.4 主合同部分群Γ(N)
3.5 合同部分群に関する保型形式
3.6 コンパクト・リーマン面概説
3.7 リーマン-ロッホの定理概説
3.8 合同部分群に対する次元公式
3.9 Γ1(N) の基本領域と生成系
3.10 合同部分群の重要性

第4章 ヘッケ作用素と固有形式
4.1 予備的考察
4.2 ヘッケ写像
4.3 ヘッケ作用素T(n)
4.4 ヘッケ固有形式
4.5 ディリクレ級数:L 関数への準備
4.6 L関数への反映
4.7 2 つの典型的なヘッケ固有形式の例
4.8 合同部分群に関するヘッケ作用素:概説

第5章 ヤコビ・テータ
5.1 定義と主要な定理
5.2 ヤコビ・テータに関する主要定理の証明
5.3 ガウスの倍角公式
5.4 ヤコビ・テータの無限積表示とその応用
5.5 一般指標のテータとその変換公式

第6章 超幾何微分方程式から導かれる保型関数
6.1 ガウス超幾何微分方程式
6.2 超幾何微分方程式の解の表示
6.3 接続公式および周回行列の明示
6.4 ガウス超幾何微分方程式のシュワルツ写像
6.5 一般化された超幾何

第7章 クラインの保型とその応用例
7.1 ガウスの算術幾何平均定理とテータ零値についてのヤコビの公式
7.2 Γ1(3) の保型関数
7.3 Γ1(4) の保型形式とヘッケ作用素
7.4 Γ(5) およびΓ1(5) のモジュラーと,5 次方程式の解析的解法
7.5 Γ1(6) のモジュラー
7.6 Γ(7) とその部分群に関する各種の考察

第8章 超幾何保型と高次虚数乗法
8.1 ヒルベルト類体と古典虚数乗法論
8.2 総実体上の4 元数環
8.3 数論的三角群由来の4 元数環における志村虚数乗法論
8.4 単数群Δ(3, 3, 5) の場合の正準模型の明示式とその応用
8.5 高次ヒルベルト類体の実例

演習解答
参考文献
索引