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ゲノム系計算科学―バイオインフォマティクスを越え,ゲノムの実像に迫るアプローチ― 

書籍情報
シリーズ名計算科学講座 全10巻 第2部 計算科学の展開 【7】巻
ISBN978-4-320-12272-7
判型A5 
ページ数256ページ
発行年月2013年01月
本体価格3,800円
ゲノム系計算科学 書影
ゲノム系計算科学

 これまでゲノム関係のバイオインフォマティクスの書籍は多く出版されているが,「ゲノムは全体として何を書きこんでいるのか?」という疑問に対する考察は十分なされてこなかった。生物の設計図であるゲノムには情報的側面と物理的側面の2つの面があるのだが,今までは情報的側面に注目しすぎていたからである。本書では,ゲノムには物理的実体があるということに注目し,配列の物性分布の解析を中心として解説をしている。これまで類書はなく,ゲノム情報解析に関する世界的に見ても非常に独創的な書籍となっている。
 生物は,一次元の配列情報で設計され,三次元の生物体が実現されるという,実に複雑な構造を持った物質(物体)である。しかも,生物の配列情報はランダムな遺伝子変異の集積だけで進化してきたということがわかっている。本書では,この不思議な生物進化が,3つの概念で説明できることを示している。

 (1) 配列情報に対する遺伝子変異は,的のあるランダム過程によって駆動されている。
 (2) 生物体を作るタンパク質の構造は,配列の物性分布の粗視化によって大枠が決められている。
 (3) 生物ゲノムの中の遺伝子集団は,すでに遺伝子変異の平衡分布に到達している。

 これらの概念は,いくつかの計算科学的研究によって裏打ちされており,本書の各章で解説されている。
 生物科学の将来を指し示す書籍として,生物系の学生,研究者に本書をぜひ読んでもらいたいと思う。

目次

第1章 ゲノム系計算科学とは?(美宅成樹)
1.1 学問を定義する疑問
1.2 生物とは何か?
1.3 ヒトとは何か?
1.4 物質的性質の「粗視化」
1.5 生物における粗視化の難しさ
1.6 ゆらぎの単位と粗視化のユニット

第2章 進化の大事件を考える(美宅成樹)
2.1 生物の進化と多様化の歴史
2.2 進化とゲノムの関係
2.3 遺伝情報からタンパク質機能へ
2.4 タンパク質のアミノ酸配列の特殊性
2.5 タンパク質における分子認識
2.6 アミノ酸の多様性
2.7 遺伝暗号の謎
2.8 アレルゲンのアミノ酸配列が語る分子認識と遺伝暗号の関係
2.9 「進化の大事件」のまとめ

第3章 生物の多様性を生み出す遺伝子変異(美宅成樹)
3.1 生物科学の歴史
3.2 中立進化説の不思議
3.3 遺伝子変異の的
3.4 進化における中立的遺伝子変異の意味
3.5 遺伝子変異の平衡状態としてゲノム
3.6 遺伝子変異の仕組みの多様化
3.7 生物の階層構造と分子認識
3.8 遺伝子変異の計算科学と疾患

第4章 膜タンパク質の分類・予測
4.1 膜タンパク質における計算科学の役割(辻 敏之)
  4.1.1 膜タンパク質予測法の歴史と現状
  4.1.2 物理化学的アプローチ
  4.1.3 両新媒性インデックス
  4.1.4 物理化学的パラメータの粗視化による膜タンパク質予測
4.2 物理化学的な手法に基づいたゲノム情報解析(澤田隆介)
  4.2.1 生物ゲノム中の膜タンパク質の予測
  4.2.2 原核生物ゲノムのアミノ酸配列に着目したシミュレーション
  4.2.3 原核生物ゲノムの塩基配列に着目したシミュレーション
  4.2.4 おわりに

第5章 電荷28残基周期性の謎
5.1 はじめに(柯 閏聡)
5.2 ゲノムに含まれる全タンパク質における電荷自己相関の解析
  5.2.1 電荷の28残基周期性を持つタンパク質の発見
  5.2.2 電荷の28残基周期性を持つタンパク質群の抽出
  5.2.3 電荷の28残基周期性を持つタンパク質の細胞内局在
5.3 電荷の28残基周期性を持つタンパク質の核局在予測(﨑山則征)
  5.3.1 タンパク質の核局在とその予測
  5.3.2 データセット
  5.3.3 核PCP28と細胞質PCP28の物性解析
  5.3.4 まとめ
5.4 電荷の28残基周期性を持ったタンパク質の生物学的な役割
  5.4.1 ヒトゲノムに含まれる核PCP28の解析
  5.4.2 28残基周期性を持ったタンパク質のゲノム比較
  5.4.3 まとめ
5.5 おわりに

第6章 活性部位の量子力学計算(倭 剛久)
6.1 電子移動の量子力学計算
  6.1.1 はじめに
  6.1.2 タンパク質の不思議
  6.1.3 計算生物物理におけるタンパク質科学へのチャレンジ
  6.1.4 タンパク質の原子構造と電子構造
  6.1.5 電子移動反応理論
  6.1.6 電子移動反応理論
  6.1.7 電子移動反応と熱揺らぎ
  6.1.8 DNA光補修酵素
  6.1.9 DNA光補修酵素の熱揺らぎ
  6.1.10 DNA光補修酵素の電子移動反応
6.2 活性部位の進化的保存性
  6.2.1 はじめに
  6.2.2 機能を原子レベル・アミノ酸レベルで記述する
  6.2.3 原子レベルの機能解析とアミノ酸配列の進化的保存
  6.2.4 まとめ

第7章 生体分子の作るシステム(笹井理生・寺田智樹)
7.1 遺伝子発現の分子システム
  7.1.1 1遺伝子ネガティブフィードバック回路
  7.1.2 Gillespieのアルゴリズム
  7.1.3 Langevin方程式の方法
  7.1.4 モーメント展開の方法
  7.1.5 変分による方法:量子力学からのアナロジー
  7.1.6 断熱極限からのずれ
  7.1.7 3遺伝子振動回路:リプレッシレーター
7.2 蛋白質相互作用の分子システム
7.3 細胞周期の分子システム
7.4 生体分子システムにおける整合性

第8章 生物に対する誤解のまとめ(美宅成樹)
8.1 ホモロジーの呪縛と原子論の限界
8.2 「神は詳細に在り」の偏見
8.3 「ランダムは無秩序」の誤解
8.4 中立的遺伝子変異の背景
8.5 「生物ゲノムは遺伝子変異の平衡状態か?」という疑問
8.6 疾患感受性遺伝子変異の鳥かん図
8.7 生物科学の閉塞感からの脱却