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2003年 4月号
Vol.48 No.5
3月22日発売
定価1,580円
(本体1,505円)


特集 DNA二重らせん構造の半世紀(1)
編集:本誌編集委員会
 

特集の編者より
 WatsonとCrickがDNAの二重らせん構造モデルをNature誌に発表したのは1953年4月25日号で,ちょうど今年の4月で50周年を迎える.
 WatsonとCrickは繊維状に得られるDNAのX線回折像からの構造データをおもな拠り所として,針金と板を使ってDNAの構造はこうなるに違いないと確信がもてる分子模型を組み立てた. この構造によって生物の基本的な性質である増殖という現象が物理科学によって完全に説明できることが示された.この意義は誠に大きく,科学の20世紀における最高の業績とされている.50年を経た現在,遺伝子研究を基礎として生物科学はさらに大きな発展をしようとしている.
 この発展の出発点となったDNAの二重らせん構造の発表から半世紀というこの機会に,本誌では4月号と5月号の2回にわたってエッセイ中心に特集を組んで,この仕事が生まれた背景とこの仕事がその後与えた影響をたどることにする.ご期待を乞う. (三浦謹一郎)

 
   
序――二重らせん構造が与えた大きなインパクト 三浦謹一郎   
   
■Essay  
  • ゴールデン・ゲート・ブリッジに舞い降りた純白の“しめなわ” 渡邊 格
  • 生命現象と化学 野田春彦
  • シークエンス情報の解読を先導した人たち 高浪 満 
  • 収納DNAの分子構造 坪井正道
  • DNA二重らせんとシュレーディンガー 鈴木 理
  • 生物学に革命をもたらしたDNAの化学合成 大塚栄子
  • 最もエレガントな実験 大石道夫
  • For the love of Genomes 吉川 寛
  • DNA複製はいかにして開始されるか? 平賀壯太
  • 変わることと変わらないこと 真木寿治
  • DNA複製と四半世紀 釣本敏樹
  • DNAとそれを認識する蛋白質の多様性と普遍性 正井久雄
  • ヒトゲノム解読とワトソン博士 清水信義
  • 微生物の遺伝生化学をめざしたアメリカ留学(1953-1960) 由良 隆
  • DNA構造を知ったとき 堀田凱樹
  • DNAと抗体の多型 山岸秀夫
  • DNA二重らせん構造と分子進化学の誕生 宮田 隆
  • 提案 松原謙一
  • 分子生物学は生気論を撲滅させたのか 米本昌平
  • DNAの50年と社会 中村桂子
  • バイオの50年・科学批判の半世紀 廣野喜幸
 
   
■Review  
 

 

 
■Fraction Collector  
  • 沈黙に春?――ジーンサイレンシングを回避する機構
  • 炎症反応を迷走神経で断ち切る 
  • 毒をもって腫瘍を制す
  • 1型糖尿病におけるケモカインの役割――T細胞を膵島に誘導する機構
  • SNPから脳機能を理解する――分子神経生物学とヒトの脳機能解析の融合型研究
 
   
■シリーズ あなたにも役立つバイオインフォマティクスII
 
 
   
■解説
 
 
   
■シリーズ 科研費のしくみ  
  • (4)基盤研究とその審査のしくみ 小林 靖
 
   
■PNE chips
 
  • スペースシャトル・コロンビアの大惨事に接して 原田繁春
 
   
■Book Review
 
 
   
■Cuvette
 
  • 科学ジャーナリズム変革宣言(3)――日米科学記事対決
 

 



●Review●

走査型トンネル顕微鏡によるDNA分子構造の可視化
田中裕行 川合知二

試料表面の原子1つ1つを実空間で直接観察できる能力をもつ走査型トンネル顕微鏡(STM)と,独自に開発した試料固定方法を用いることにより,DNA分子構造の高分解能STM像を映し出すことに成功した.DNA分子の二重らせん構造や個々のヌクレオチドが画像化され,WatsonとCrickが提唱したように,二重鎖DNAを構成する1組みの単鎖DNAの塩基配列が互いに相補的になっていることも目で見て納得できる形で実証することができた.STM以外の顕微鏡によるDNA分子構造可視化研究について若干ふれ,筆者らのこれまでのおもな研究成果を紹介し,あわせて将来展望を試みる.

Key words【X線結晶構造解析】【顕微鏡】【走査型トンネル顕微鏡】【DNA】【二重らせん】【ヌクレオチド】【可視化】

Visualization of molecular structure of DNA using scanning tunneling microscopy


ウイルスゲノムの核内移行過程
  
――宿主細胞の核内輸送機能との相互作用とそれに伴う粒子構造変化
中西 章

核内でゲノムの増殖を行なうさまざまなウイルスにとって,そのゲノムを核内に輸送することは感染の成立に不可欠である.いくつかのウイルスでは,核内移行の際に提示されるウイルス側のシグナルとそれを認識する細胞側因子が同定され,これらの研究の過程でウイルスの核内移行には,粒子構造の変化が密接に関与していることが明らかになってきた.本稿では,ウイルス粒子と核内輸送機能とのかかわりを中心にして最近の研究を概説し,核内移行過程の理解がウイルス感染の制御に与える重要性について考察を加えた.

Key words【ウイルス感染】【核内移行】【importin】【構造変化】

Nuclear Entry of the Viral Genome:Interaction with the nuclear import machinery and structural alteration of the virion

●シリーズ あなたにも役立つバイオインフォマティクスII ●

多型データを活用する
鎌谷直之

遺伝法則は非決定論に基づいた法則である.非決定論の世界は論理のない世界ではない.決定論とはまったく異なった理論が必要である.表現型である疾患や薬剤への反応性などを対象とすると,確率論と統計学が主役になる.

Application of polymorphic dat

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●解説●

国際イネゲノム全塩基配列解読プロジェクト(IRGSP)の足跡
佐々木卓治

国際イネゲノム全塩基配列解読プロジェクト(IRGSP)によるフェーズ2での解読が2002年12月に終了した.1997年に結成され,1年に2回の会議をもち,各構成メンバー間の意志疎通をはかりながら,外部との政策的な交渉を行ない,とにかく一区切りをつけることができた.IRGSPは地図情報と結びついた高精度の塩基配列解読を目標にかかげている.ここで得られた配列データはイネのみならず他の穀類および植物科学の基礎および応用面でのこれからの発展の基礎になる情報である.本稿ではその発足から今日に至る経緯を,その運営に携わった立場から解説する.

Key words【国際イネゲノム全塩基配列解読プロジェクト】【国際協調と競争】【フェーズ2塩基配列】【イネ】

What and how International Rice Genome Sequencing Project(IRGSP)played from its birth to present to get success

イネゲノム機能解析関連分野プロジェクトの紹介
肥後健一

1991年に日本は世界に先駆けて,これまでの長いイネ研究の蓄積を生かしつつ,まったく新しいアプローチであるイネのゲノム解析を開始した.ゲノム塩基配列の解読に一段落がついたこれからは,遺伝子の単離と機能解析がよりいっそう加速される.さまざまな研究材料や解析手法の特徴を生かしたプロジェクトの概略を簡単に紹介する.

Key words【イネ】【ゲノム研究】【遺伝子単離】【機能解析】【プロテオーム】【ゲノムリソース】

Rice genome projects for gene discovery and functional analyses

●Book Review●  

ゲノムネットのデータベース利用法 第3版
金久 實 著
B5判/208ページ/ 本体2,900円
共立出版/ISBN:4-320-05595-0

 本書は,「ゲノムネット」サービスを提供している京都大学バイオインフォマティクスセンターを中心に,ゲノムネットデータベースサービスの構築運営に直接かかわっている人々によって執筆された,ゲノムネットデータベースサービスの実践的利用法を述べた手引書である.初版は1996年に発行されたが,今回第3版で全面的に内容が一新された.一言でいえばパスウェイ(ネットワーク)という視点で統一されたことである.
 それは第1章の概要でも端的に示されており,また本書後半大部分はパスウェイデータベースとして国際的に定評のあるKEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)の説明にあてられていることからもうかがえよう.だからといって,基本的なテキスト検索やホモロジー検索などの説明が軽視されているわけでは決してない.DBGETはゲノムネットデータベースの基盤的検索ツールとして要領よくまとめられており,ホモロジー検索も単にツールの使い方だけでなく,アルゴリズムの骨子や使用上の指針なども簡潔に述べられている.ただし,ここでもホモロジー検索をグラフ問題として捉えるというようなパスウェイ的視点での解釈まで言及されている.
 このほか,従来から提供されているモチーフ検索に加え,構造予測・機能予測の章ではゲノムネット外部の代表的なツールにも言及されているため,さまざまなバイオインフォマティクスのリソースを駆使して,興味ある遺伝子や蛋白質などを解析しようとしているバイオロジストにとって,本書は有益であろう.
 ただ,せっかく本書を利用してゲノムネットのリソースを活用しようと考えられている読者は,一部分の機能を使うためのマニュアルとしてではなく,実際にコンピュータに向かって確かめながら一通り読んでみて全容をつかまれることをお勧めしたい.本書はいわゆるマニュアル本のように,イラストや図版が多くて一見とっつきやすいものの単に手続きしか書かれておらず,応用しようとした場合にどうしてよいのかわからないといった類の手引書ではない.むしろ途中にはバイオインフォマティクス関係者以外にはとっつきにくい原理の説明などもあって,最初はわかりにくいこともあるかもしれないが,背景知識としてこれらのことを理解することは,これを利用して新たな研究の方向を開く際のヒントになるかもしれない.またKEGG関係の応用ツールはこの先どんどん新しいものが開発されてくると期待しているが,現時点でのKEGGの全容を理解するには本書が最適であろう.
 最後に,限られた誌面の本欄ではゲノムネットやKEGGそのものについては既知として説明しなかったが,もしまだご存知なければ,ぜひ http://www.genome.ad.jp/ にアクセスしてみていただきたい.


荻原 淳(東京医科大学臨床プロテオームセンター)


 

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