■次世代高速シークエンサーの応用と情報解析
次世代高速シークエンサーの特性と情報処理
森下真一
次世代高速シークエンサーの能力は,2007年以降,著しく改善されてきている.改善のポイントとして単位時間あたりの塩基解読能力がしばしば強調されるが,このパラメーターだけでは異なる次世代高速シークエンサーの特性を吟味するのには不十分である.ほかに注目すべきパラメーターとはなにか? 本稿では,サンプル量,リード長,リード数,塩基精度,メイトペア,などに配慮することが大切であることを述べる.つづいて,各パラメーターの改善が新たにどのような応用例を開拓するかについての見通しを述べる.一方,パラメーターの改善によって,分析ソフトウェアの取り組む問題の一部はやさしくなり,一部はむずかしくなる.したがって,ソフトウェアを逐次的にチューニングして解析速度と精度とを同時に向上させる努力も欠かせない.以上のような観点から,本稿では,次世代高速シークエンサーを軸に急展開していくゲノムサイエンスについて解説する.
Key words:ゲノム 次世代高速シークエンサー 情報処理
How can we combine next-generation DNA sequencing and bioinformatics
to reveal novel findings?
ChIP-seq法によるクロマチンと転写因子のゲノムワイド解析
SOLiDを用いた解析の現状
倉田哲也
近年の次世代高速シークエンサーの発展により,ゲノムワイドなトランスクリプトーム解析やゲノム再シークエンスなど多くの解析が可能になってきた.本稿では,これまでの手法と比べより高感度・高解像度となったChIP-seq法について,修飾ヒストンや転写因子の結合部位のゲノムワイドな解析を中心に紹介する.また,SOLiDを用いた植物の多能性幹細胞化におけるヒストン修飾の解析も紹介しつつ,次世代高速シークエンサーによるChIP-seq解析について述べていきたい.
Key words:ChIP-seq法 ヒストン修飾 転写因子 SOLiD
Genome-wide analysis of chromatin and transcription factor by ChIP-seq
次世代高速シークエンサーによるRNA解析
Illumina GAを用いて
鈴木 穣・土原一哉
いわゆる次世代高速シークエンサーの登場により,数日のうちに数十億塩基対,数百億塩基対といった大量の塩基配列を決定することが可能となった.何千人という個人のゲノムの再シークエンスによりゲノムに存在する塩基多型の解析を行なうといったパーソナルゲノム解析が進められる一方で,その高いスループットと試料調製・データ処理の画一性を背景に,遺伝子発現や転写因子結合部位の同定など,多角的な計測装置としても数多くの応用が開発・実用化されている.本稿では,近年,報告された次世代高速シークエンサーの応用のうち,転写産物の配列決定あるいはその発現量の計測をめざしたものを中心に概説する.
Key words:DGEプロファイリング法 RNA-seq法 miRNA-seq法 TSS-seq法
Transcriptome analyses using massively paralleled sequencers
メタゲノム研究の最前線
454とメタゲノム解析
森 宙史・林 哲也・黒川 顕
培養が困難なためその解析のむずかしかった環境中の細菌群集は,細菌群集まるごとからDNAを抽出して塩基配列を決定する“メタゲノム解析”によって,その全体像を解析することが可能となった.本稿では,次世代高速シークエンサーの利用およびバイオインフォマティクス技術の発展によって加速の一途をたどるメタゲノム解析について,現在までの研究の成果とこれからさきの研究の方向性を中心に述べる.
Key words:メタゲノム解析 細菌群集 バイオインフォマティクス メタデータ
The forefront of Metagenomics
ゲノム解読の高速化
次世代高速シークエンサーによるゲノム配列決定
豊田 敦・藤山秋佐夫
次世代高速シークエンサーとよばれる,革新的な配列決定技術を備えた装置やその周辺機器がつぎつぎと登場し,マッピングによる再シークエンスだけでなく,アセンブリーによる新規のゲノム配列の再構築も可能になってきた.また,圧倒的な解析処理能力を利用して特定のDNA配列を定量することも可能である.このように,配列決定の高速化,低コスト化,および,情報処理能力の進展を背景に,生命科学分野は新たな展開をむかえようとしている.本稿では,次世代高速シークエンサーによるゲノム配列決定とその技術の特徴について紹介する.
Key words:次世代高速シークエンサー 再シークエンス 遺伝的多様性 アセンブリー マッピング
Next generation sequencing
■Short Review
セントロメアでのクロマチン構造の形成に必要なヒストンバリアントとDNA結合蛋白質
堀 哲也・深川竜郎
細胞分裂期において正常な染色体分配が遂行されるためには,両極から伸びた微小管が染色体のセントロメアとよばれる領域を正確にとらえることが必要である.細胞分裂の際,セントロメアDNAには100種類程度の蛋白質が集合して,微小管と染色体との正確な結合を保障している.この100種類もの蛋白質の正確な集合の引き金は,セントロメアに特異的なクロマチン構造の形成である.セントロメアにはCENP-AとよばれるヒストンH3のバリアントが存在し,セントロメアに特異的なクロマチン構造のマークとして機能しているものと考えられる.しかしながら,CENP-Aのみでは機能的なセントロメアを形成することはできない.最近,筆者らは,セントロメアDNAと結合する複数の蛋白質を同定し,これらのDNA結合蛋白質とCENP-Aとの協調によってセントロメアに特異的なクロマチン構造が形成されるというモデルを提唱した.本稿では,このモデルを中心とした,セントロメアに特異的なクロマチン構造の形成機構について解説する.
Key words:セントロメア キネトコア ヒストン DNA結合蛋白質 染色体分配
DNA-binding proteins are involved in establishment of centromere chromatin
structure coordinately with centromere specific histone variant, CENP-A
インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼの機能とその阻害による創薬
山下 誠
ウイルスの複製過程のどこかを阻害することのできる化合物は,抗ウイルス薬となりうる.インフルエンザウイルスの複製に必須のノイラミニダーゼの役割を解説するとともに,ウイルスの増殖阻害機構をもつノイラミニダーゼ阻害薬について紹介する.また,あわせて,インフルエンザウイルスのユニークな抗原変異機構や,既存薬に対する耐性機構に関する最近の知見を紹介する.
Key words:インフルエンザウイルス ノイラミニダーゼ阻害薬 長期貯留性 薬剤耐性ウイルス
Function of neuraminidase of influenza virus and anti influenza compounds
by its inhibition
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