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2009年 9月号
Vol.54 No.11

8月22日発売

定価1,580円
(本体1,505円)


■Review
 
 
■Short Review  
 
■Fraction Collector  
  • 鎖がからまないようにする――ハンチントン病で神経細胞死にかかわる低分子量G蛋白質
  • 伝染し拡大する動かぬ証拠――タウオパチーは第2のプリオン病か?:パート2
  • B型の人はノロウイルスに感染しにくい?
  • 生命の起原前のRNA合成の新たな道
  • EGF受容体の非対称なホモ2量体形成によるキナーゼ活性化
  • ダウン症からみえてきた抗腫瘍戦略
  • 血栓の成長を促進するメカニズム――ずり応力変化の重要性
  • 細胞内のプリオンによるユビキチンリガーゼの障害
  • 自己免疫疾患の夢の治療薬――自己応答性Th17細胞を抑制する低分子化合物
 
■シリーズ サロン・ド・バイオイメージング  
  • GFPの遺伝子が使えなかった頃に 宮脇敦史
 
■シリーズ ライフサイエンス系企業が博士卒人材に期待すること  
  • 製薬企業の創薬研究者としての期待 高柳輝夫
 
■Book Review  
  • 博士号を取る時に考えること 取った後できること――生命科学を学んだ人の人生設計
 
■Cuvette  
  • 学振をとおして研究をかえりみる:前編
 

 



■Review

DNAトポイソメラーゼUβによる神経関連遺伝子の発現制御
筒井 研・筒井公子・宮地まり・佐野訓明

脊椎動物のもつ2種類のU型トポイソメラーゼのうち,トポイソメラーゼUαは細胞増殖に必須であるため抗がん剤の標的として早くから多くの研究がなされてきた.一方,トポイソメラーゼUβの生理的な役割については長いあいだ不明であったが,最近になり,神経細胞の分化過程で誘導される遺伝子や,核内受容体を介して誘導される遺伝子の転写活性化にかかわっていることが明らかにされつつある.この酵素の作用点と,神経機能に必須の一群の遺伝子がしめるゲノム上の位置とのあいだには強い相関が認められ,哺乳類のゲノム構成や精神疾患の責任遺伝子の研究においても新たな展望が開けてきた.

Key words:U型トポイソメラーゼ 神経細胞分化 転写誘導 遺伝子局在
Regulation of neuronal gene expression by DNA topoisomeraseUβ


蛍光プローブの精密設計による生細胞応答の観測とin vivoがんイメージングの実現
浦野泰照

筆者らは,最近までに,低分子有機化合物をベースとする蛍光プローブの論理的な精密設計法を確立し,種々の検出対象を可視化するまったく新しい蛍光プローブの開発に成功した.実際,これらのプローブを培養細胞系などに適用することで,従来,知られていなかった生物学的な事象を発見した.さらに,in vivoへの適用が可能な新たな蛍光プローブを開発し,生きている状態のマウス個体内で1 mm以下の微小がんを明確に検出することにも成功した.

Key words:蛍光プローブ in vivoがんイメージング 細胞応答イメージング 光誘起電子移動
Rational and precise design of novel fluorescence probes and their application to cellular response and in vivo tumor imaging


■Short Review

リボソームの活性部位にあるRNA分子スイッチの“動き”=“はたらき”を探る
近藤次郎

リボソームの活性部位であるAサイトにはRNAからなる分子スイッチがある.このスイッチが正しいtRNAを選択することが,正確な蛋白質合成,ひいては,生命維持の鍵となっている.筆者らは,このRNA分子スイッチの“動き”をX線結晶解析と物理化学的な計算でとらえることにより,その“はたらき”を探った.本稿では,細菌とヒトのRNA分子スイッチのはたらき方の違い,突然変異により壊れたRNA分子スイッチがひき起こす非症候性難聴の発症機構,RNA分子スイッチに作用する抗生物質の殺菌および副作用における機構,の3つのテーマを紹介する.

Key words:リボソーム RNA分子スイッチ 非症候性難聴 抗生物質 ノンコーディングRNA
Exploring the“motion”=“function”of the ribosomal A-site molecular switch


神経幹細胞の非対称分裂における蛋白質局在の制御機構
西村隆史

細胞の多様性を生み出すメカニズムのひとつに非対称分裂がある.細胞は運命決定因子を非対称に分配させることで異なる性質をもった娘細胞を生み出す.たとえば,幹細胞は非対称に分裂し,分化する娘細胞と自己複製する幹細胞自体を生み出している.非対称分裂の異常は幹細胞に由来する腫瘍形成の原因ともなりうる.ここでは,ショウジョウバエ幼虫脳の神経幹細胞をモデルとして,幹細胞における非対称分裂の分子基盤について述べる.とくに,分裂期における細胞運命決定因子の局在制御機構について,筆者らの研究成果を中心に概説する.

Key words:幹細胞 非対称分裂 神経分化 腫瘍形成
Molecular mechanisms for asymmetric cell division in Drosophila neural stem cells


微小管と細胞間接着装置との相互作用
孟 文翔

細胞どうしの接着・認識は多細胞動物の形成・維持のため必須である.カドヘリンは細胞間の接着に中心的な役割をはたす蛋白質で,カテニンを介してアクチン線維と結合し,細胞間の接着を動的に制御している.しかし,カドヘリンと微小管との関係はよくわかっていなかった.本稿では,微小管はそのマイナス端を介してカドヘリンと結合し,上皮細胞の細胞間接着構造を特徴づけている“接着帯”の維持にはたらく,という最近の発見を紹介する.

Key words:接着結合 接着帯 微小管 p120カテニン PLEKHA7 Nezha KIFC3
Interactions between the microtubule minus-end and cell-cell adhesion machinery


トランスポーター発見によるスフィンゴシン1-リン酸シグナル研究の新展開
望月直樹

これまで,スフィンゴ脂質のひとつスフィンゴシン1-リン酸がG蛋白質共役型受容体を活性化して細胞への生理活性を示すことが明らかにされてきた.スフィンゴシン1-リン酸はおもに血管系に作用すると考えられてきたが,免疫や骨代謝にもかかわることが明らかになった.スフィンゴシン1-リン酸は細胞内で生成されるが,細胞表面の受容体に作用するためには細胞外に排出されなければならない.しかし,この排出のためのトランスポーターは不明であった.今回,Spinster2(Spns2)がスフィンゴシン1-リン酸トランスポーター活性をもつことがわかり,今後,生体内の局所でのスフィンゴシン1-リン酸シグナルによる生理的な作用の明らかにされることが期待される.

Key words:スフィンゴシン1-リン酸 トランスポーター 血管内皮細胞 血小板 免疫
Discovery of S1P transporter may uncover the unidentified S1P-regulated signal in circulation, immunity, and bone metabolism


アミノ酸ホモポリマーを合成する新たなペプチド合成酵素
濱野吉十・山中一也・丸山千登勢・高木博史

放線菌により生産され抗菌活性と高い安全性とをあわせもつε-ポリ-L-リジンは,“天然”の食品保存料として国内外で利用されている.ε-ポリ-L-リジンはL-リジンがイソペプチド結合で直鎖状につながった単純なホモポリマーであるにもかかわらず,微生物におけるその生合成機構は不明のままであった.最近,筆者らは,この機構を明らかにし,多種多様な応用の期待できる機能性ポリアミノ酸の創製の可能性を見いだした.本稿では,これら研究成果について解説する.

Key words:ペプチド合成酵素 抗生物質 ε-ポリ-L-リジン 放線菌
A highly unusual non-ribosomal peptide synthetase producing an amino-acid homopolymer


ダイナミックな光学分割による光学活性アミノ酸の合成
α-アミノ-ε-カプロラクタムラセマーゼの構造と機能
岡崎誠司・山根 隆・浅野泰久

Achromobacter obaeに由来するα-アミノ-ε-カプロラクタムラセマーゼからアミノ酸アミドラセミ化活性が見いだされ,この酵素とOchrobactrum anthropiに由来するD-アミノペプチダーゼなどを組み合わせて用いることで,アミノ酸アミドのダイナミックな光学分割が可能となった.また,X線結晶構造解析により,この酵素単独,および,この酵素の阻害剤であるε-カプロラクタムとの複合体の立体構造が決定された.α-アミノ-ε-カプロラクタムラセマーゼは環状ラクタムやアミドなど窒素原子をもつ基質のラセミ化を触媒する,ピリドキサールリン酸依存性のラセマーゼである.立体構造から示唆された基質認識機構や反応機構などの機能について述べる.

Key words:アミノ酸アミド ダイナミックな光学分割 ピリドキサールリン酸依存性ラセマーゼ X線結晶構造解析
Dynamic kinetic resolution of amino acid amides to form chiral amino acids: structure and function of α-amino-ε-caprolactam racemase


蛋白質の内部にある疎水性空洞の“深呼吸”をみる
時間分解X線構造解析法による蛋白質ダイナミクスの研究

富田文菜・足立伸一・腰原伸也

蛋白質が機能を発現する機構を理解するためには,その静的な構造だけでなく,機能を発現しているときの動的な構造を知ることが不可欠である.筆者らは,酸素貯蔵蛋白質であるミオグロビンに新たに開発した時間分解X線構造解析法を適用し,その内部を移動する一酸化炭素の動きを明らかにした.さらに,ミオグロビンの内部にある疎水性空洞の一酸化炭素輸送にともなう変形を時間分解して観測することにも成功した.

Key words:ミオグロビン 蛋白質ダイナミクス 時間分解X線構造解析法
Watching “deep breathing motion” of the hydrophobic cavities in a protein molecule


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