平均曲率流

―部分多様体の時間発展―

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平均曲率流
著者 小池 直之 著
分野 数学  > 幾何学  > 微分幾何学
発売日 2019/04/10
ISBN 9784320113763
体裁 A5・376頁
定価 5,280円 (本体4,800円 + 税10%)
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 平面を2つの領域に分ける曲線や、空間を2つの領域に分ける曲面は界面とよばれる。例えば、水と油のように、2つの領域に別々の物質があるとき、それらの物質を分ける境界面という意味合いで界面という言葉が用いられている。界面は時間の経過とともに動く。その動きの法則を記述する方程式は界面運動方程式とよばれる。
 界面の内側、外側の物理的状態によらない界面の形状のみに依存する界面運動方程式の代表例として、平均曲率流方程式が知られており、平均曲率流方程式の解を与える界面の1パラメーター族を平均曲率流とよぶ。
 近年、平均曲率流をはめ込み写像の発展として捉える、微分幾何学的アプローチが注目されている。例えば、ポアンカレ予想の解決に用いられたリッチ流は、リーマン計量の時間発展であり、ベクトルバンドルの切断の同種の発展とみなせるため、平均曲率流の研究と密接に関わっている。また、シンプレクティック幾何において、ラグランジュ平均曲率流の研究が盛んに行われており、余次元2以上の平均曲率流を取り扱える、はめ込み写像の時間発展としての平均曲率流の研究が重要性を増している。
 本書は、微分幾何学の視点から平均曲率流を学ぶための初の和書であり、微分幾何学・位相幾何学と解析学の懸け橋になることを目指して執筆された。

<書評掲載案内>
■第74巻 第2号(2022年4月春季号)『数学』(評者:國川慶太)

第1章 バックグラウンド
1.1 平均曲率流とは
1.2 平均曲率流への3つのアプローチ
1.3 体積汎関数の勾配流としての平均曲率流
1.4 平均曲率流とリッチ流

第2章 微分幾何学における基礎概念および事実
2.1 多様体論における基礎概念
2.2 テンソル場・微分形式・リーマン計量
2.3 ストークスの定理
2.4 リーマン接続・曲率テンソル場
2.5 平行移動・測地線・指数写像
2.6 測地変分とヤコビ場
2.7 Myersの定理・球面定理
2.8 実ベクトルバンドルの接続と曲率テンソル場
2.9 概複素構造・複素構造・ケーラー構造
2.10 リーマン部分多様体
2.11 ガウスの方程式・コダッチの方程式・リッチの方程式
2.12 主曲率・主曲率ベクトル・全臍性・強凸性
2.13 体積汎関数の変分公式
2.14 リー群・リー代数・リー変換群・対称空間
2.15 アダマール多様体の理想境界とホロ球面
2.16 管状超曲面(チューブ)
2.17 ラグランジュ部分多様体

第3章 平均曲率流
3.1 平均曲率流方程式の解の短時間における存在性および一意性定理
3.2 平均曲率流に沿う基本的な幾何学量の発展
3.3 最大値の原理
3.4 ヘルダー空間・ソボレフ空間・Ascoli-Arzeláの定理
3.5 部分多様体に対するソボレフ不等式
3.6 基本的な積分不等式(ヘルダー不等式,補間不等式等)
3.7 微分作用素の線形化

第4章 ユークリッド空間内の超曲面を発する平均曲率流
4.1 平均曲率流の類別
4.2 I型の特異点を生ずる平均曲率流と自己相似解
4.3 II型の平均曲率流とトランスレーティングソリトン

第5章 強凸閉超曲面を発する平均曲率流
5.1 ユークリッド空間内の強凸閉超曲面を発する平均曲率流
5.2 強凸性保存性
5.3 全臍的はめ込みを発する平均曲率流への漸近性
5.4 平均曲率のグラジエント評価
5.5 ||kA||の評価
5.6 ||A||の非有界性
5.7 平均曲率の最大値と最小値の比率の収束性
5.8 崩壊定理の証明
5.9 リスケールされた平均曲率流に関する基本的事実
5.10 収束定理の証明
5.11 有界曲率をもつリーマン多様体内の強凸閉超曲面を発する平均曲率流

第6章 保存則をもつ平均曲率流
6.1 保存則をもつ平均曲率流
6.2 保存則をもつ平均曲率流に沿う基本的な幾何学量の発展
6.3 ユークリッド空間内の強凸閉超曲面を発する体積を保存する平均曲率流
6.4 双曲空間内の強ホロ凸閉超曲面を発する体積を保存する平均曲率流
6.5 管状超曲面を発するノイマン条件を満たす体積を保存する平均曲率流I
6.6 管状超曲面を発するノイマン条件を満たす体積を保存する平均曲率流II

第7章 曲率関数の定める曲率流
7.1 曲率流
7.2 曲率流に沿う基本的な幾何学量の発展
7.3 Penrose予想と逆平均曲率流

第8章 ラグランジュ平均曲率流
8.1 Calabi-Yau多様体と特殊ラグランジュ部分多様体
8.2 平均曲率流に沿うラグランジュ性保存性定理
8.3 Thomas-Yau予想
8.4 概Calabi-Yau多様体内の一般化されたラグランジュ平均曲率流

第9章 手術付きリッチ流を用いた幾何化予想の解決
9.1 Gromov-Hausdorff収束とHamilton収束
9.2 Hamiltonのコンパクト性定理とPerelmanの非局所崩壊性定理
9.3 古代κ解とリッチソリトン
9.4 曲率が爆発する部分の近傍の構造
9.5 ネック,および半ネックの手術
9.6 手術付きリッチ流の構成と幾何化予想の解決

第10章 外在的手術付き平均曲率流
10.1 超曲面ネック
10.2 超曲面ネックの外在的手術
10.3 2凸閉超曲面を発する外在的手術付き平均曲率流
『平均曲率流』読者アンケート

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