理論生物学概論
本書のもう一つの大きな特徴として、理論生物学における新しい方法である「構造理論」を学べる初めての教科書であることが挙げられる。構造理論は、力学システムの動的性質の重要な側面を、ネットワーク情報だけから決定する数学理論である。これは近年著者らが開発し、細胞分化の遺伝子ネットワークや、植物代謝ネットワークなどの実際の生命システムの解明に用いられ、かつてない成果を挙げている。また、生命システムを超えて様々な複雑システムに適用できる可能性があることから、広く理論科学分野で注目されている。
理論生物学の教科書であると同時に、数理的手法の学習書でもあり、新しい数理理論を学べる専門書としての側面を持つなど、本書は様々な特徴を備えている。
【第1部 時間的な変動の数理】
第2章 1変数力学システム
第3章 遺伝子調節システムとそのダイナミクス
第4章 振動する生命システム I ―体内時計と分節時計
第5章 振動する生命システム II ―シアノバクテリア体内時計
【第2部 ネットワークの数理】
第6章 遺伝子調節システムと細胞の多様性
第7章 調節ネットワークの構造とダイナミクス
第8章 化学反応システム I ―酵素による制御
第9章 化学反応システム II ―振る舞いの多様性と分岐
【第3部 時空間パターンの数理】
第10章 神経細胞と興奮系の数理
第11章 反応拡散方程式とチューリングの拡散不安定性
第12章 生物で見られる様々な自己組織的周期パターン
第13章 自己組織的形態形成を実現する反応ネットワーク
第14章 細胞極性
第15章 細胞移動による形態形成
第16章 細胞や組織の変形ダイナミクス
参考文献
略 解