近年、自然科学には社会への貢献が強く求められるようになり、生物多様性および生態系サービスに関する社会的要請が年々高まっている。では、どのようにして、生態系サービスを享受できる自然共生社会を作ればよいのだろうか。そのためには、現在の人間活動によって生態系がどのように壊れてしまっているのかという個々の問題を理解する必要がある。そこで、人間活動と生態系に関する諸問題について、応用生態学の分野で活躍する17名の研究者が基礎から応用的側面まで含めて概説したものが本書である。今後の生態学は、基礎的な生物学に留まらず、人間社会を扱う境界領域が発展していくことが予想される。本書はこの領域の充実に寄与し、生態学の社会貢献を加速するための一助となるだろう。
第1章 人間活動の歴史
第2章 生物多様性の危機
第3章 都市の自然環境
第4章 二次的な自然環境
第5章 生息地の分断化
第6章 農業の特性と生物の応答
第7章 林業の特性と生物の多様性
第8章 漁業の特性と生物の適応
第9章 環境汚染と生態影響評価
第10章 外来生物の生態学
第11章 野生生物資源の管理と持続的利用
第12章 生態系の保全と再生