D加群
D-加群はその中心的な理論で、たとえば解析学上の関数の初等的演算をD-加群を介して抽象化することで、それまで困難だった線形偏微分方程式の一般理論の解析が可能となった。
その後のD-加群研究の進展に伴って適用範囲はますます広がりをみせており、現在は代数・幾何・解析の3分野すべてに関係する極めて重要な理論体系となっている。
本書では、D-加群の理論全体をなるべく少ない労力で理解できるよう、わかりやすく解説した。
前半のパートでは、読者の親しみやすさなども考慮し、複素多様体上の解析的D-加群を扱う。
後半部では、D-加群の幾何学への応用を具体例を通して学んでいく。
また、これまでD-加群の理論を学ぶ上で大きな障害であった、層とその導来圏に関するわかりやすい付録をつけた。
○特に次の分野に多くの応用がある: 代数幾何、偏微分方程式、特異点理論、表現論、数理物理、超関数論、環論、数論幾何、超幾何関数、トポロジー、ゼータ関数、圏論、計算数学
1.1 環の層DXとDX-加群
1.2 層DXの代数的性質
1.3 特性多様体
第2章 Cauchy-Kowalevski-柏原の定理
2.1 D-加群の逆像とその連接性が成り立つ条件
2.2 主定理とその証明
第3章 ホロノミーD-加群の正則関数解
3.1 D-加群の双対
3.2 構成可能層と偏屈層
3.3 層の超局所解析の理論
3.4 柏原の構成可能定理
第4章 D-加群の様々な公式
4.1 D-加群のテンソル積
4.2 D-加群の逆像再論
4.3 D-加群の積分
4.4 柏原の圏同値
第5章 偏屈層
5.1 t-構造
5.2 偏屈層とその性質
第6章 交叉コホモロジーの理論
6.1 極小拡張の理論
6.2 交叉コホモロジー群の定義と基本的な性質
第7章 近接および消滅サイクルの理論とその応用
7.1 層の近接および消滅サイクル
7.2 ミルナー束とそのモノドロミーとの関係
7.3 モノドロミーゼータ関数の理論
第8章 D-加群の指数定理
8.1 準備
8.2 偏屈層の特性サイクル
8.3 オイラー障害
8.4 柏原の指数定理
第9章 代数的D-加群の理論の概要
9.1 代数的D-加群
9.2 代数的ホロノミーD-加群
9.3 代数的D-加群に対するリーマン・ヒルベルト対応
第10章 混合Hodge 加群の理論の概要
10.1 Hodge 構造と混合Hodge 構造
10.2 Hodge 加群と混合Hodge 加群
第11章 トーリック多様体の交叉コホモロジーとその応用
11.1 準備
11.2 トーリック多様体の交叉コホモロジー
11.3 トーリック超曲面への応用
第12章 多項式写像の無限遠点におけるモノドロミー
12.1 無限遠点におけるモノドロミーの固有値
12.2 Denef-Loeser の理論
12.3 無限遠点におけるモノドロミーのジョルダン標準型
付録A 層の理論
付録B 導来圏の理論
参考文献/索引