素数とゼータ関数
本著は、素数定理と算術級数定理の証明を省略なく self-contained に行うことを主な目的としている。全6章で構成される本著では、まず前半でゼータの研究に必要な技法をまとめ、他の類書では省略されることが多い事項(二重級数、二変数O記号、無限積、ガンマ関数、ポアソンの和公式、オイラーの総和法など)の解説を詳しく行う。続く第3、 4章では、ゼータ関数の基本的な性質を、証明の省略をすることなく一通り解説した。後半では、教科書としては世界で初めて「深いリーマン予想」の解説をしている。「深いリーマン予想」は、最先端の研究が2012年以降に到達した新しい概念であり、リーマン予想研究に新たな指針を与える考え方である。
第1章 素数に関する初等的考察
1.1 素数と素数の逆数和の無限性
1.2 素数の占める割合が0%であること
1.3 n番目の素数の大きさ(粗い素数定理)
1.4 素数の逆数の和の増大度
1.5 素数定理に対数が現れる理由
1.6 特定の形の素数
1.7 算術級数定理の初等的考察
1.8 オイラーの定数
第2章 ゼータ研究の技法
2.1 実数上の複素数値関数
2.2 オイラー・マクローリンの方法
2.3 無限積の基本
2.4 ガンマ関数
2.5 ポアソンの和公式
2.6 アーベルの総和法
2.7 二重級数の基礎
2.8 メビウス反転公式
第3章 リーマン・ゼータの基本
3.1 絶対収束域
3.2 絶対収束域外のディリクレ級数
3.3 絶対収束域外のオイラー積
3.4 解析接続(初等的方法)
3.5 解析接続(積分表示)
3.6 関数等式
3.7 特殊値(正の整数)
3.8 特殊値(0または負の整数)
3.9 ゼータ関数の位数とアダマール積
第4章 明示公式と素数定理
4.1 臨界領域
4.2 非自明零点の個数
4.3 解析接続できない例
4.4 明示公式と素数定理
第5章 ディリクレの素数定理
5.1 ディリクレL関数とは
5.2 絶対収束域(Re(s>1)と右半平面(Re(s>0)
5.3 解析接続と関数等式
5.4 指標付き明示公式とディリクレの素数定理
第6章 深いリーマン予想
6.1 リーマン予想を支持する結果(ボーア・ランダウの定理)
6.2 オイラー積の収束
6.3 素数定理の誤差項との関連
6.4 ζ(s)の深いリーマン予想
あとがき/参考文献/索引