安定同位体を用いた餌資源・食物網調査法
そこで本書では、安定同位体解析を使って食う-食われる関係を探る一連の手法、すなわち、同位体比の基礎から、調査方法、サンプル処理法、データ解析法までについて解説する。さらにその手法を用いて食物網を解析した研究例について紹介するとともに、近年発展している新たな同位体指標である炭素の放射性同位体とアミノ酸の窒素安定同位体比についても取り上げる。これから安定同位体を用いた研究や実務を進めようとする方に手法を使っていただけるように、餌資源、食物網解析について、調査デザインから採集、測定、解析に至るまでできるだけ網羅的に紹介することを目指した。
1.1 はじめに
1.2 安定同位体とは
1.2.1 平衡同位体効果
1.2.2 速度論的同位体効果
1.3 同位体分析の歴史
1.4 生態系における同位体比の変動要因
第2章 陸上生態系での調査手法
2.1 はじめに
2.2 フィールドのサンプリング
2.3 陸上生態系での安定同位体解析の事例
第3章 湖沼・海洋における調査手法
3.1 はじめに
3.2 フィールドのサンプリング
3.2.1 一次生産者:植物プランクトン
3.2.2 吸引濾過によるフィルターへの採集
3.2.3 動物プランクトン
3.2.4 底生動物・魚
3.2.5 無機炭素
3.2.6 無機窒素
3.3 湖沼・海洋での安定同位体解析の事例
第4章 河川における調査手法
4.1 はじめに
4.2 フィールドのサンプリング
4.2.1 藻類・落ち葉などの生産者
4.2.2 流下有機物
4.2.3 底生動物
4.2.4 魚類などの大型消費者
4.3 河川での安定同位体解析の事例
第5章 安定同位体試料の処理・測定
5.1 はじめに
5.2 脱炭酸塩処理
5.3 脱脂処理
5.4 試料の秤量と包み方
5.5 試料の送付法
第6章 安定同位体比データの解析方法
6.1 はじめに
6.2 同位体濃縮
6.3 混合モデル
6.4 栄養ポジションと食物連鎖長
6.4.1 窒素安定同位体比を用いた栄養ポジションの推定
6.4.2 窒素安定同位体比を用いた食物連鎖長の測定
第7章 陸上生態系における同位体解析
7.1 はじめに
7.2 陸上生態系における炭素同位体比解析の研究例
7.2.1 C3植物とC4植物の違い
7.2.2 森林における炭素安定同位体比の垂直分布
7.2.3 海洋や河川由来の炭素
7.2.4 菌類の重要性
7.3 陸上生態系における窒素同位体比解析の研究例
7.3.1 陸上動物による海産物の利用
7.3.2 大気中窒素の利用
7.3.3 資源解析
7.3.4 環境変化に伴う食性の変化
第8章 湖沼・沿岸における同位体比解析
8.1 はじめに
8.2 同位体比解析の研究例
8.2.1 食物網の歴史的変動について
8.2.2 湖沼生態系での炭素安定同位体添加実験
8.2.3 水域生態系での食物連鎖長研究
8.2.4 沿岸における研究例
8.3 メタン食物網
第9章 新たな同位体比分析手法
9.1 はじめに
9.2 放射性炭素
9.3 放射性炭素を用いた研究事例
9.3.1 陸域生態系の事例
9.3.2 水域生態系の事例
9.4 アミノ酸窒素同位体比
9.5 アミノ酸窒素同位体比を用いた研究事例
9.6 その他の同位体指標
索 引