フッ素化合物の分解と環境化学
フッ素化合物は耐熱性や耐薬品性に優れていることが大きな利点であるが、その裏返しで廃棄物や排水の分解処理は厄介である。分解・無害化は大変やりがいのある研究分野で、環境保全の世界では大きな位置を占めている。ところが大学の化学系学科の授業ではあまり出てこないためか、化学出身者でそういう仕事に従事している人は少ない。分解も化学反応なのでこのような分野こそ化学出身者の活躍が期待できる。
本書では、フッ素化合物の分解と環境化学的な挙動について、全くの初心者でもわかるようにまとめられている。第1章では水中の有機化合物を分解・無害化するさまざまな方法について紹介されている。第2章ではそれらを踏まえて、フッ素化合物の種類別の分解方法が解説されている。第3章ではフッ素化合物の地球規模での振る舞いについて、昔から知られているクロロフルオロカーボン類や、近年になって生態系への影響が懸念されているPFOSやPFOAと呼ばれる化合物を中心に取り上げている。
1.1 紫外線照射(UV)
1.2 促進酸化法(AOP)
1.3 フェントン反応(Fenton's reaction)
1.4 ペルオキソ二硫酸イオン
1.5 ペルオキソ一硫酸イオン(オキソン)
1.6 超音波照射
1.7 熱水(亜臨界水,超臨界水)
1.8 メカノケミカル反応
第2章 フッ素化合物の分解方法
2.1 なぜ分解技術の開発が必要なのか
2.2 PFCA類の分解方法
2.2.1 ヘテロポリ酸光触媒
2.2.2 S2O82-+UV
2.2.3 S2O82-+温水
2.2.4 S2O82-+超音波照射
2.2.5 鉄イオンを用いたPFCA類の光触媒分解
2.3 PFAS類の分解方法
2.4 フッ素系イオン液体の分解方法
2.5 フッ素系イオン交換膜(ポリマー)の分解方法
2.6 熱可塑性フッ素ポリマーの分解方法
第3章 フッ素化合物の環境化学
3.1 大気の構造
3.2 海洋の構造
3.3 成層圏のオゾン
3.4 CFCsによるオゾン層の破壊
3.5 代替フロンと温暖化
3.6 有機フッ素化合物PFOS,PFOA
3.7 PFOS,PFOAの環境残留性と生体蓄積性
3.8 PFOS,PFOAの分析の難しさ
3.9 PFOS,PFOAの物理化学的な性質
3.10 PFOS,PFOA問題の今後の動向
おわりに