弾性力学
学生諸君の多くは材料力学を学んだ後に弾性力学を学ぶため、材料力学の延長上に弾性力学を位置づけているが、これは真逆である。本来は弾性力学を正確に理解してから材料力学へと進むべきであるが、弾性力学ではテンソル表記や連立偏微分方程式が多用されることから、学生にとっては難関とみなされてしまい、まずは材料力学を学ばせるようである。しかし、応力もひずみもテンソル量であるとはいえ、結局は、6つの独立な成分しか示さないことから、それらを抽出したマトリクス表記による議論を行うことで十分弾性力学の目的は達成される。本書においては、テンソル表記や総和規約のような表記は使用せず、6つの独立な応力と工学ひずみを起点として議論を進めることにより、材料の異方性に対する正確な記述を省略することなく、弾性力学の本質を理解できるように工夫した。さらに、材料力学の諸問題との関係を示すことにより、弾性力学の知見がどのように材料力学において反映されているかを明確に記述した。したがって、本書は材料力学を学ぶ前のあるいは学んだ後の両方の場合において使用可能なテキストである。
2.ひずみテンソルと工学ひずみ
3.座標変換
4.フックの法則と弾性定数
5.工学弾性定数と等方体近似
6.原子間ポテンシャルと弾性定数
7.平衡方程式
8.直交座標系と円柱座標系における諸式
9.ひずみエネルギ
10.仮想仕事の原理
11.リッツ法
12.補仮想仕事の原理とカスティリアーノの定理
13.二次元問題
14.円筒の問題