エルゴード理論と特性指数
本書は、上で述べた内容を解説していく.前半は統計力学的展開のもとで、ギブス測度、変分原理、平衡測度を紹介し、その後で双曲的アトラクターにふれる。後半では、特性指数を与え、それに基づいてリャプノフ指数を導き、リャプノフ指数から不安定多様体の存在を明らかにする。リャプノフ指数がすべて零でない場合は非一様追跡性補題が確立され、このことから無数に双曲性をもつ集合の存在、さらに測度的エントロピーは双曲性をもつ集合の上の位相的エントロピーで近似されることを見る。読者にとって容易に理解できるように、力学系の実解析を基礎から始めて最先端の入り口までを紹介する。ルベーグ積分などの知識をもち合せていない初学者は第I巻の「力学系の実解析入門」を参考にすれば、困難なく読み進むことができるように配慮している。
0.1 非線形解析の一側面
0.2 一様双曲的集合
0.3 非一様双曲的集合
0.4 リャプノフ指数の線形理論
0.5 一様双曲性への近似
0.6 基本定理
第1章 ギブス測度,圧力,エントロピー
1.1 ギブス測度
1.2 ギブス測度の構成
1.3 変分原理
1.4 平衡測度
1.5 エントロピー関数
1.6 周期点とエントロピー
第2章 アトラクター
2.1 双曲的アトラクター
2.2 一様双曲性に対する体積補題
2.3 ポアンカレ写像(一様双曲的)
第3章 力学系の特性指数
3.1 特性指数
3.2 標準的な基底
3.3 乗法エルゴード定理
3.4 ルエルの不等式
第4章 非線形写像の局所線形化
4.1 リャプノフ計量
4.2 リャプノフ座標系
4.3 不安定多様体
4.4 正則点集合の構造
4.5 多様体の上の力学的構造
第5章 非一様追跡性と馬蹄
5.1 非一様追跡性補題
5.2 閉補題
5.3 双曲型測度と非一様馬蹄
5.4 エントロピーと非一様馬蹄
5.5 不変分解のヘルダー連続性