現代ベクトル解析の原理と応用

現代ベクトル解析の原理と応用
著者 新井 朝雄 著
分野 数学  > 解析学  > ベクトル解析
発売日 2006/02/10
ISBN 9784320018174
体裁 A5・376頁
定価 4,400円 (本体4,000円 + 税10%)
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 ベクトル解析の分野に関する書物のほとんどは、3次元ユークリッドベクトル空間あるいはその一般化であるn次元ユークリッドベクトル空間上のベクトル解析に限定されている。しかも、多くの場合、一見無関係に見える個々の事実の羅列と、公式を使いこなすための具体的な計算練習に終始するのが常である。だが、これでは、ほとんどの学習者は、ベクトル解析の根底にある統一的な原理や自律的で有機的な思考の流れを把握するにはいたらないであろうし、それらの存在の予感さえもちえないかもしれない。
 本書の1章で示すように、n次元ユークリッドベクトル空間のベクトル構造は、普遍的な意味でのベクトル空間という理念(イデア)に昇華される。この理念の現われとして、ベクトル空間をその要素とする"無限宇宙"とでもよぶべき、数学的理念界の壮大な領界が見出される。
 本書の目的は、読者を、いま言及した、数学的理念界の壮大な領界へと案内し、ベクトル解析学を一望のもとに統一的に生き生きと俯瞰できる、より高次の視点を示唆することである。本書が提供しようとするベクトル空間界に関する眺望は、そこに含まれる内容をひとたび実体験的に手にいれれば、現代数学の他の分野や現代的な数理物理学を学ぶのにも本質的な意味で役立つような、そういった実質性を有する眺望である。
 本書の主眼は、その題が示すように、ベクトル解析学の原理的な側面を解説することにある.応用にしても、個別的・具体的な問題ではなく、自然・宇宙が、ベクトル解析学の普遍的諸原理を、物理学の諸原理として、いかに使用しているかを認識するということに力点が置かれている。
 本書は、基本的に、第1章で提示するベクトル空間の公理系から導かれる普遍的な諸事実を論述するものである。単一の公理系から、これほど豊かな理論-本書ではその一部しか記述できない-が展開されるというのは実に驚嘆に値する。
 第1章から第3章までは、ベクトル空間の純代数的構造に関わる事柄を論じる。第1章で示すように、ベクトル空間は、有限次元と無限次元の二つの範疇にわけられる.本書の特色のひとつは、有限次元だけでなく、無限次元の場合も扱うことである。これは、本書の先にあるヒルベルト空間論やバナッハ空間論を見越してのことである。これによって、これらの理論への参入がより容易になるであろう。
 ところで、ベクトル空間がもちうる構造は、純代数的構造だけではない.純代数的構造に計量的構造が加わることにより、ベクトル空間は、一段と豊かな響きを持ち始め、より豊饒な(形而上的)存在の次元が立ち現れてくる。だが、通常のベクトル空間論で扱う計量は、ほとんどの場合、内積とよばれる正値計量である。しかし、とらわれのない観点に立つならば、計量を正値計量に限る、アプリオリな必然性はない。そこで、本書では、不定計量のベクトル空間も扱う。ただし、ベクトル空間の位相が重要な働きをする、曲線論や場の理論(第6章から第9章)では、不定計量ベクトル空間の次元が有限の場合だけを扱う。
 最後の章では、物理学への応用として、古典力学、特殊相対性理論、古典電磁気学、流体力学をとりあげ、本書のような、座標から自由な絶対的・普遍的アプローチが、物理学の諸原理をいかに簡潔かつ明晰にとらえることを可能にするかを示す。
(「まえがき」より)
第1章 ベクトル空間
1.1 ベクトル空間の公理系
1.2 部分空間と直和
1.3 線形独立性
1.4 基底と次元
1.5 基底によるベクトルの展開と座標系
1.6 基底の変換と座標変換
1.7 直和ベクトル空間
1.8 商ベクトル空間

第2章 線形作用素
2.1 定義と基本概念
2.2 線形作用素の積
2.3 ベクトル空間の同型
2.4 次元定理と同型定理
2.5 線形作用素の行列表示
2.6 線形作用素の空間
2.7 双対空間
2.8 双対作用素
2.9 固有ベクトルと固有値
2.10 線形作用素のトレース
2.11 アファイン空間

第3章 テンソル空間
3.1 多重線形写像
3.2 テンソル積
3.3 テンソルの積演算
3.4 テンソルの型
3.5 対称テンソルと反対称テンソル
3.6 2階のテンソル空間の性質
3.7 対称テンソル空間の基底
3.8 反対称テンソル空間の構造
3.9 線形作用素のテンソル積
3.10 ベクトル空間の向き

第4章 ベクトル空間の計量
4.1 はじめに
4.2 計量ベクトル空間
4.3 直交系と直交補空間
4.4 内積空間の基本的性質
4.5 計量の標準形
4.6 ミンコフスキーベクトル空間
4.7 計量の成分と複素計量の構造
4.8 有限次元ベクトル空間における計量の構造
4.9 展開定理と直交分解
4.10 同型性
4.11 線形汎関数に関する表現定理と同型定理
4.12 共役作用素,対称作用素,反対称作用素
4.13 テンソル空間の計量
4.14 対称テンソル積空間と反対称テンソル積空間の計量
4.15 ホッジのスター作用素
4.16 3次元ユークリッドベクトル空間におけるベクトル積
4.17 n次元計量ベクトル空間の(n-1)次元部分空間

第5章 ベクトル空間における位相と計量アファイン空間
5.1 内積空間における点列の収束と極限
5.2 距離空間としての内積空間
5.3 開集合,閉集合,境界集合
5.4 有限次元ベクトル空間における距離の同値性
5.5 有限次元不定計量空間の位相
5.6 計量アファイン空間

第6章 ベクトル空間における曲線論
6.1 ベクトル空間上のベクトル値関数
6.2 曲線
6.3 曲線の微分
6.4 曲線の積分
6.5 曲線の長さ
6.6 曲線に関する幾何学的概念
6.7 微分方程式と流れ

第7章 スカラー場とベクトル場の理論
7.1 スカラー場
7.2 微分積分学の基本定理の普遍形
7.3 スカラー場の高階の微分とラプラシアン
7.4 ベクトル場の微分
7.5 ベクトル場の発散
7.6 3次元ユークリッドベクトル空間上のベクトル解析
7.7 パラメータ付き図形と接空間
7.8 積分量

第8章 テンソル場の理論
8.1 テンソル場
8.2 外微分作用素
8.3 反対称反変テンソル場に対する外微分作用素
8.4 異なる次数の外微分作用素の統一化
8.5 微分形式の引き戻し
8.6 ポアンカレの補題
8.7 余微分作用素

第9章 ストークスの定理
9.1 曲方体と鎖体
9.2 境鎖体
9.3 p鎖体上のp次微分形式の積分
9.4 ストークスの定理
9.5 応用―古典的積分定理の導出

第10章 物理学への応用
10.1 古典力学
10.2 特殊相対性理論
10.3 古典電磁気学
10.4 流体力学

付録A 集合と写像
A.1 基本的概念
A.2 直積
A.3 同値関係と商集合
A.4 写像
A.5 集合の写像特性
A.6 集合の対等と濃度

参考文献
演習問題の解答(略解)
索引

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