物理現象の数学的諸原理

―現代数理物理学入門―

物理現象の数学的諸原理
著者 新井 朝雄 著
分野 数学  > 解析学
発売日 2003/02/01
ISBN 9784320017269
体裁 A5・568頁
定価 6,270円 (本体5,700円 + 税10%)
  • この本の
    内容
  • 目次
 物理現象の本質を探究し、数学と物理学をより高次の次元で統合・発展させる数理科学―現代数理物理学の基本的特徴を一言で述べるとすればこのようになるであろうか。だが、著者の考える数理物理学は、いま述べた意味での数理科学としての側面だけでなく、厳密な学としての自然哲学、さらには数学、自然科学、芸術の統合をも射程にいれた新しい総合学の基礎を提供するものである。本書は、こうした、より広義の意味での現代数理物理学への前奏的入門書である。
 予備知識としては、大学の理工系1、2年で学ぶ程度の微分積分学および行列論、線形代数学に関する知識があればよい。これ以外に必要となる数学については、独立した章あるいは付録として論述した。
本書の叙述の基本的方針のひとつは、古典力学から量子力学まですべてにわたって、その基本原理を定式化するにあたっては、座標から自由な方式―これを著者は絶対的アプローチと呼ぶ―をとることであった。本書に特徴的な点があるとすれば、これがまず、その第一点である。
 絶対的アプローチは、単に数学的な見通しをよくするにとどまらず、物理現象の本質を究めるという意味では、必然的であり、不可欠のものである。だが、そのためには、どうしても抽象的にならざるを得ない。しかし、逆に、本書を読破することにより、数学および数理物理学における抽象の高次の意味が体験的にわかるはずである。
 いま述べた考え方に従って、まず、第1章~第3章においてベクトル解析の初歩を、また、その自然な延長として、第6章において、テンソル場の理論をそれぞれ、絶対的アプローチで論述する。この場合、代数的構造と計量的構造を峻別して記述し、しかる後に、それらがいかに調和的・有機的に融合して、数学的理念界の特定の領域を形成するか、その存在風景がよく"見える"ように叙述を試みた。
 古典物理学―ニュートン力学、電磁気学、相対性理論―の数学的理念の中枢をなすのは、ベクトル解析の理念である。この理念が種々様々に"分節"しながら、諸現象へと向かっていかに"下降"していくか、その構造・有り様を論述したのが第4章(ニュートン力学)、第5章(解析力学)、第7章(電磁気学)、第8章(相対性理論)である。相対性理論に対しては絶対的アプローチによる公理論的定式化を試みた。これは著者が最も力を注いだ点のひとつである。この方法によって、従来になく、相対性理論の数学的構造、その物理的および哲学的含意が明晰にされたと信ずる。
 相対性理論とともに現代物理学の根幹のひとつをなす量子力学の数理は、古典物理学のそれよりもはるかに抽象的になる。量子力学が対象とする現象領域の理念を司るのは、無限次元ヒルベルト空間とそこで働く線形作用素たちである。第9章において、これらの対象が形成する数学的理念界の領域の一部を論述し、それが量子力学のコンテクストではどのように現れるかを第10章に記述した。量子力学についても、絶対的アプローチによる公理論的定式化がなされている。これによって、ある種の代数的構造の無限次元ヒルベルト空間表現として量子力学の本質がとらえられることが示される。
(「まえがき」より)
序章 数理物理学とは何か

第1章 ベクトルとテンソル
1.1 ベクトル空間
1.2 線形写像
1.3 アファイン空間
1.4 テンソル
1.5 高階のテンソルとベクトル空間の向き
1.6 線形作用素の行列式
1.7 線形作用素の固有値と固有ベクトル

第2章 計量ベクトル空間
2.1 定義と例
2.2 直交系と直交補空間
2.3 内積空間の基本的性質
2.4 有限次元の計量ベクトル空間
2.5 共役作用素,対称作用素,反対称作用素
2.6 内積空間における位相的概念
2.7 ユークリッド空間とミンコフスキー空間
2.8 参考:位相空間

第3章 ベクトル空間上の解析学
3.1 ベクトル空間上のベクトル値関数
3.2 1変数のベクトル値関数―曲線
3.3 スカラー場

第4章 ニュートン力学の数学的原理
4.1 物理的空間と時間に関する古典的概念
4.2 ニュートンの運動方程式
4.3 質点系と力の場の例
4.4 ニュートンの運動方程式からのいくつかの一般的帰結
4.5 ケプラーの法則を現象させる力―万有引力への道
4.6 万有引力のもとでの2点系の運動―2体問題
4.7 ニュートンの運動方程式の解空間の構造―対対称

第5章 解析力学への道
5.1 自由度と一般化座標
5.2 ラグランジュ方程式
5.3 変分原理
5.4 ハミルトニアンと運動方程式の正準形

第6章 数学的間奏I―テンソル場の理論
6.1 反対称共変テンソル場=微分形式
6.2 外微分作用素
6.3 ポアンカレの補題
6.4 3次元ユークリッドベクトル空間における外微分作用素
6.5 余微分作用素とラプラス-ベルトラーミ作用素
6.6 微分形式の積分

第7章 マクスウェル方程式,ゲージ場,ミンコフスキー時空
7.1 はじめに―歴史的,物理的背景の素描
7.2 電磁現象の基礎方程式
7.3 電磁場が従う2階の偏微分方程式
7.4 電磁波の存在
7.5 電磁ポテンシャル
7.6 ゲージ対称性
7.7 物質場とゲージ場
7.8 マクスウェル理論の4次元的定式化―新しい時空概念

第8章 相対性理論の数学的基礎
8.1 はじめに
8.2 ミンコフスキーベクトル空間の幾何学
8.3 ローレンツ座標系
8.4 ローレンツ写像群
8.5 特殊相対性理論の幾何学的基礎
8.6 相対論的力学の原理
8.7 固有時の反転と反粒子
8.8 光的粒子と虚粒子
8.9 実粒子の分裂・融合および散乱
8.10 一般相対性理論

第9章 数学的間奏II―ヒルベルト空間上の線形作用素論
9.1 ヒルベルト空間に関わる基本的概念
9.2 正射影定理
9.3 ヒルベルト空間上の線形作用素
9.4 内積空間の完備化
9.5 共役作用素
9.6 閉作用素
9.7 数域,レゾルヴェント,スペクトル
9.8 エルミート作用素,対称作用素,自己共役作用素
9.9 作用素値汎関数とスペクトル定理
9.10 強連続1パラメータユニタリ群

第10章 量子力学の数学的原理
10.1 はじめに―物理的背景
10.2 量子力学の公理系
10.3 スピンと量子的粒子の2つの族
10.4 正準交換関係の表現と物理量
10.5 正準反交換関係
10.6 CCR,CARおよび代数の表現としての量子力学
10.7 CCRの表現の同値性と非同値性
10.8 CCRの表現の非有界性と不確定性関係
10.9 量子調和振動子

付録A 集合論の基礎事項
A.1 基本的概念
A.2 直積
A.3 同値関係と商集合
A.4 写像
A.5 写像の分類
A.6 集合の対等と濃度

付録B 3角関数と双曲線関数
B.1 指数関数と3角関数
B.2 双曲線関数

付録C 円錐曲線
C.1 楕円
C.2 双曲線
C.3 放物線
C.4 円錐曲線の統一形

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