ブラウン運動

ブラウン運動
著者 小出 昭一郎 編大槻 義彦 編米沢 富美子 著
分野 物理学  > 応用物理
シリーズ 物理学  > 物理学One Point 全30巻 27
発売日 1986/12/15
ISBN 9784320032361
体裁 B6・160頁
定価 1,870円 (本体1,700円 + 税10%)
  • この本の
    内容
  • 目次
(まえがきより抜粋)
 このシリーズの中の一冊を執筆するようにと最初にお勧めいただいたとき、大槻義彦先生からの課題は「拡散」であった。「拡散」を語るには、「ブラウン運動」を避けて通ることはできない。ブラウン運動を調べているうちに、その歴史的経緯を面白く思うようになった。もちろん、ブラウン運動の全容を述べるということになると、植物学に始まり、物理学、数学、天体物理学、気象学、生態学、通信工学から経済の動きや株価の予測に至るまで、およそ、ランダムな過程が全体動向を支配しているすべての事象に言及しなければならない。これはそもそも、本シリーズの目指すところではないし、著者の興味もそこにない。
 本シリーズの編集方針は、それぞれのテーマを、その分野の専門家ではない研究者に依頼し、その研究者が苦労しながらどのようにその問題を把握していていったかを伝えることにより、読者の理解の一助となす点にあると聞かされた。当該テーマについていえば、ブラウン運動に関する著者の把握の道程は、そのまま、物理学史においてブラウン運動の果たした役割の認識と重なっている。本書では、そこに焦点を絞ることにした。
 ブラウン運動という言葉を聞いたとき、それから連想するものは人によってかなり開きがあるようである。上述したように、ブラウン運動の理論の背景にある確率過程論的な考え方は、予想以上の広い分野で、それぞれ固有のとらえかたでもって展開がなされている。そういうなかで、本書では、あくまでも、自然現象としてのブラウン運動を対象に考えを進めて行くことにする。
 本書は科学史の本ではないが、科学史研究家であった故広重徹氏の姿勢が、なぜか執筆中、常に念頭にあった。広重氏の姿勢が一貫してそうであったように、伝説に頼ったり、他の本から安易に引き写したりすることなく、必要のものについては能う限り原典に当たり、不可能なものは信頼に足る論文・研究書に拠るという方針を守る努力をした。
1 ブラウンの発見
1-1 花粉の中にも生き物がいる!
1-2 石炭の中にも生き物がいる!?
1-3 無機物の中にさえ生き物がいる?
1-4 ブラウン粒子の集団は肉眼でも見られる
1-5 ブラウン粒子は正規分布の形に広がる

2 19世紀の原子論
2-1 今世紀初頭,アトムはまだ認知されていなかった
2-2 ドルトンは原子を,アボガドロは分子を考えた
2-3 原子論は着実に進歩していた
2-4 気体運動論は粘性も説明できた
2-5 アボガドロ数の勘定もできた
2-6 気体分子は突風のようだ
2-7 20世紀の幕開けにプランクがいた
2-8 それでも原子の概念は仮説にすぎなかった

3 19世紀におけるブラウン運動の研究
3-1 ブラウンの研究はあまねく知れわたっていた
3-2 ブラウン運動の性質がいくつか明らかにされた
3-3 水の分子の衝突がブラウン運動の原因である?
3-4 ブラウン粒子はエネルギー等分配則を満たさないか?

4 アインシュタインの理論
4-1 1905年はアインシュタインの奇跡の年だった
4-2 溶液の理論から浸透圧の公式を借用する
4-3 流体論からも公式を借用する
4-4 アインシュタインの関係式を求める
4-5 不規則な変位を確率過程として扱う

5 ペランの実験
5-1 「誰か」は速やかに現れた
5-2 均等な大きさの粒子を作る
5-3 ブラウン粒子にもストークスの法則が適用できる
5-4 気体の重さと平衡分布の関係を調べる
5-5 ブラウン粒子も希薄度の法則に従う
5-6 アインシュタインの理論が証明できる
5-7 原子の概念は完全に確立された

6 ゆらぎと確率
6-1 物理学は目覚しく進歩していた
6-2 ブラウン運動はゆらぎを目で見ていることになる
6-3 ブラウン粒子の速度はすぐに減衰する
6-4 ランジュバンは不規則な衝突の項を取り入れた
6-5 力学的量とゆらぎの量とが関係づけられる
6-6 空の青さもゆらぎが原因である
6-7 ばね振動子もゆらぎ力が働くとブラウン運動をする
6-8 気体中に吊るした小さな鏡もブラウン運動をする

7 ブラウン運動の数学的モデル
7-1 独立誤差の和は正規分布になる
7-2 酔っ払いは家に帰れるか?
7-3 一様乱数の和も正規分布になる
7-4 酔歩連続モデルは拡散過程と等価である
7-5 サイコロも酔っ払いも確率過程である
7-6 ブラウン運動も確率過程である
7-7 ブラウン粒子は十分酔っ払っているか?

8 ブラウン運動の普遍性
8-1 系が大きいとミクロなゆらぎは見られない
8-2 エントロピーは増大する
8-3 ミクロなレベルではエントロピーの減少も起こりうる
8-4 ゆらぎは抵抗の項とペアになっている
8-5 抵抗力があるときはエネルギーの散逸が起こる
8-6 アインシュタインの理論は非平衡統計力学の発展を促した
8-7 ブラウン運動の理論の応用範囲は広範である

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