超高温・高密度のクォーク物質

―素粒子の世界の相転移現象―

超高温・高密度のクォーク物質
著者 須藤 彰三 監修・ 岡 真 監修・ 北沢 正清 著・ 国広 悌二
分野 物理学  > 原子物理  > 原子核・放射線物理
物理学  > 原子物理  > 素粒子物理
シリーズ 物理学  > 基本法則から読み解く物理学最前線 29
発売日 2022/09/12
ISBN 9784320035492
体裁 A5・180頁
定価 2,420円 (本体2,200円 + 税10%)
  • この本の
    内容
  • 目次

 物質を細かく分解していくと、原子、原子核、核子(陽子と中性子)と階層を進み、核子はさらにクォークとグルーオンと呼ばれる素粒子に分解できる。宇宙初期や中性子星中心部などの超高温・高密度の世界ではクォークとグルーオンを基本自由度とした物質が実現し、そこでは真空の相転移である「カイラル対称性の自発的破れ」の回復や「カラー超伝導」と呼ばれる物質状態の実現などの多様な物性現象が発現すると考えられている。

 本書は、このような「素粒子の世界の相転移現象」に対する研究の基礎と新たな進展に関する最新の数値シミュレーションの結果や有効模型による解析を使った概説である。有効模型の解析に使われたPythonによる計算コードも公開しているので、数値計算の入門書としても活用できるであろう。

 本書の特徴としてその他に以下の事項を上げることができる。
(1) 意欲的な大学学部学生や修士課程の学生諸君を想定し、前提知識を極力廃して本書だけで学習事項が完結する構成になっている。公開されたPythonの計算コードを使い、更に理解を深めることもできる。
(2) ノーベル賞の対象となった南部陽一郎博士の研究の思想に従い、超伝導のBCS理論を基礎としてカイラル対称性の自発的破れとそれに伴う励起モード(南部―ゴールドストーンボソンとしてのπ中間子を含む)の理論が学べる構成となっている。
(3) 和書では初めてとなるカラー超伝導の解説が与えられている。またそこでは、その通常相での前駆現象にも焦点が当てられ、クォーク物質中の対場のゆらぎが引き起こす「擬ギャップ現象」や「伝導率の異常増大」およびその有限エネルギー版としての「電子対生成」の異常増大の可能性が議論されている。
(4) 高温・高密度のクォーク物質を網羅的に探索する高エネルギー重イオン衝突実験の現状と将来計画も紹介されている。

第1章 本書のねらい:超高温・高密度物質への誘い
 1.1 極限状態の物質と素粒子の世界の物性物理学
 1.2 計算コードについて
 1.3 本書で用いる単位系

第2章 QCDの相構造と相対論的重イオン衝突の物理
 2.1 量子色力学(QCD)
 2.2 QCDの相構造
 2.3 重イオン衝突実験による極限状態の探索

第3章 超高温・高密度物質の熱力学
 3.1 相対論的自由気体の熱力学
 3.2 QCDの熱力学量:格子QCDシミュレーションの結果
 3.3 有限バリオン数密度系の熱力学

第4章 フェルミ気体の統計力学と超伝導のBCS理論概説
 4.1 非相対論的自由粒子気体
 4.2 有限温度への拡張
 4.3 BCS理論

第5章 有限温度・有限密度におけるクォーク物質の相構造
 5.1 ディラック方程式入門
 5.2 南部―ヨナラシニオ(NJL)模型
 5.3 平均場近似による真空状態の決定
 5.4 有限温度・有限バリオン数密度の相構造
 5.5 カラー超伝導

第6章 線形応答理論入門
 6.1 古典力学における調和振動子の線形応答
 6.2 量子論における線形応答
 6.3 場の理論の線形応答

第7章 有限温度・有限密度での中間子励起とカイラル相転移のソフトモード
 7.1 スカラー中間子,擬スカラー中間子
 7.2 南部―ゴールドストンモードおよびソフトモード
 7.3 中間子質量の温度依存性

第8章 熱媒質中のクォーク励起の異常分散
 8.1 クォークスペクトル関数
 8.2 弱結合ゲージ理論におけるプラズミーノモードの出現
 8.3 格子QCDによるクォークスペクトル関数の数値計算
 8.4 有限質量ボース粒子との相互作用
 8.5 カイラル相転移点近傍のクォークスペクトル関数

第9章 カラー超伝導の前駆現象
 9.1 超伝導の前駆現象
 9.2 カラー超伝導のソフトモード
 9.3 カラー超伝導における擬ギャップ
 9.4 重イオン衝突実験におけるカラー超伝導の観測に向けて

第10章 おわりに:書き残したこととさらに勉強するための参考文献

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