脳進化絵巻―脊椎動物の進化神経学― 

書籍情報
シリーズ名共立スマートセレクション 【34】巻
ISBN978-4-320-00934-9
判型B6 
ページ数234ページ
発売日2021年04月13日
価格2,200円(税込)
脳進化絵巻 書影
脳進化絵巻

新刊

最近になって,脳を作る基本的な発生機構は脊椎動物の誕生とほぼ同時にできあがっていたことが明らかになってきた。このときにできあがった脳の原型は,脊椎動物の進化という大洋を筏のように漂流し,各系統の確立とともに様々な形に結実してきた。しかしながら,これまでこうした多種多様な脳が人々の関心に触れる機会は極めて少なかった。本書では,そうした脳に隠された秘境のような場所を紹介していく。

本書ではこれまでにない試みとして,最新の古生物学の知識を取り入れ,脊椎動物の歴史を紐解きながら,様々な脊椎動物の脳,その形態や発生,そして脳の進化を論じる。これにより,顎の獲得や四肢の発達,飛行能力の獲得といった進化イベントの際に,脳にどのような革新が生じたのかを物語を読むように理解できる。

著者のユニークでわかりやすい語り口も本書の大きな特徴である。さまざまな巨大生物・怪獣・宇宙生物を例にしたり,いわゆるソウルライクな死にゲーをする際のキャラクターのステータス割り振りになぞらえて(このようなゲームでは,ゲーム内で得た金銭や経験値をもとにして,筋力・体力・技量・魔力を割り振っていく),「視覚」「聴覚」「嗅覚」「運動能力」といったステータスを上げるにはそれぞれの脳領域をどのように進化させるとよさそうか,そして実際の脊椎動物ではどうなっているかといった説明がなされたり,読者の想像力と妄想力が大いにかきたてられる内容となっている。

目次

1 脳の概略
1.1 脳のはじまり
1.2 脳の進化を調べるということ
1.3 脳進化を探る際の心得

2 脳の進化発生学
2.1 なぜ発生なのか?
2.2 脳の発生

3 脊椎動物の進化
3.1 脊椎動物とは
3.2 脊椎動物の歴史
3.3 脊椎動物の黎明
3.4 脊椎動物の誕生と全ゲノム重複

4 初期の脊椎動物の形態と神経系
4.1 水中での活動
4.2 化石魚類の脳を調べるには
4.3 水中での世界認識
4.4 水中生活へのさらなる適応

5 脳の設計図
5.1 円口類と顎口類
5.2 脊椎動物の黎明期の脳
5.3 菱 脳
5.4 ミエリン鞘の獲得
5.5 中脳の構造
5.6 基幹脊椎動物の間脳
5.7 視床下部
5.8 脊椎動物の終脳
5.9 基幹脊椎動物の終脳

6 顎の成立と脳の改変
6.1 円口類の脳
6.2 ターリーモンスターの正体
6.3 顎の獲得
6.4 顎のための神経:三叉神経
6.5 水中での運動
6.6 小脳の形態
6.7 小脳の誕生
6.8 板皮類の脳

7 脊椎動物の繁栄
7.1 燃えるサメ軍団の襲撃
7.2 軟骨魚類の巨大脳
7.3 水界の覇者
7.4 条鰭類の脳の多様性
7.5 淡水中における適応放散と奇妙な形の脳の出現

8 地上への挑戦
8.1 肉鰭魚類と両生類
8.2 シーラカンスの脳
8.3 ハイギョの脳
8.4 四肢の誕生
8.5 両生類の脳
8.6 大量絶滅

9 陸海空の制覇
9.1 地上での適応放散
9.2 竜弓類
9.3 竜弓類の戦略
9.4 竜弓類の脳
9.5 脊椎動物で初めて空を飛ぶ:翼竜の脳
9.6 恐竜の性質
9.7 空中での適応放散
9.8 鳥類の脳
9.9 クチバシの進化

10 脳進化の極致へ
10.1 哺乳類の黎明
10.2 現代の哺乳類
10.3 現生哺乳類の脳
10.4 哺乳類の終脳中枢
10.5 化石哺乳類
10.6 新皮質
10.7 層構造
10.8 領 野
10.9 終脳の交連繊維
10.10 海 馬

11 再び海へ
11.1 水性になった羊膜類
11.2 クジラ類
11.3 クジラに見られる特殊化
11.4 クジラの脳
11.5 菱 脳
11.6 聴覚中枢
11.7 終 脳

12 脊椎動物以外の脳世界
12.1 無脊椎動物の脳
12.2 昆虫の繁栄
12.3 おわりに

文 献

脳が作り上げる世界の進化(コーディネーター:倉谷 滋)

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