非線形偏微分方程式は,数学のみならず科学および工学全般に広く登場するため,その研究も多岐にわたっているが,本書では,自己相似解とよばれる特 殊解を通じて,主として拡散型非線形偏微分方程式の解の挙動を調べる方法を紹介する。ナヴィエ・ストークス方程式をはじめ,各種の現象を記述する方程式を例にとり,最近の結果を含めて平易に解説した。この方法は「繰り込み群的方法」の一種とも解釈されるもので,非線形偏微分方程式の漸近解析において,近年強力な手法となっている。
また,本書に必要な予備知識は,大学初年級の微分積分学のみとした。偏微分方程式の解の挙動を調べていくうちに,自然と必要な解析的な力が身につけられるように配慮してあり,微分積分学の基礎が最先端の研究にどのようにつながっていくかがよくわかる。現代解析学の入門書としても最適である。