積分方程式は、逆問題の研究とも関連して,進展著しい分野である。本書は,その理論と応用について,歴史的背景も踏まえ,初歩から懇切丁寧に解説している。特異積分方程式・Wiener-Hopf積分方程式・非線形Volterra積分方程式など,21世紀の数学の展望に不可欠な方程式に力点がおかれているが,その叙述は熱伝導率同定問題,微分方程式の非線形性の決定問題,数理生態学のモデリングに関する逆問題といった多彩な非線形逆問題に動機づけされており,数学および数理科学に携わる学生・研究者にとって刺激的な書となるであろう。