スペクトル理論は20世紀中に多大なる発展を遂げ,物理学などに広範囲にわたって応用されている分野である。本書は,線型微分作用素のスペクトル理論の入門書である。大部分の話題を線型微分作用素,とくに二階の楕円型微分作用素に限定し,理論を詳述している。
作用素が滑らかな係数を持つことを仮定しないという点,および Sobolev の埋蔵定理を多用しないという点で他の楕円型微分作用素の入門書とは異なっている。また,スペクトルの上限と下限の評価に関する事項と作用素が作用する領域に関する定量的な仮定については,同程度の他の書籍と比べてより詳細な記述を行なっている。さらに,多くの定理においては,一般性よりも,読者が本質的な概念をより理解しやすいように記述し,その証明を与えている。
[原著名:Spectral Theory and Differential Operators]