代数方程式のガロアの理論

書籍情報
ISBN978-4-320-01770-2
判型A5 
ページ数360ページ
発行年月2005年03月
価格3,520円(税込)
代数方程式のガロアの理論 書影
代数方程式のガロアの理論

『代数方程式のガロアの理論』という題名からわかるように,この本は代数方程式を主題としてその背後にある考え方の変遷を扱っている。著者は序文で次のように述べている:「この本の主題は代数学ではなく,代数方程式の歴史でもなく,方法論なのである」と。この方法論を説明するための題材として選ばれたのが方程式の理論であるが,その理由は3つある。
 第一は,それが完全に初等的なことである。すなわち,問題を説明するにあたって実質的に数学的な背景とか,理解するための準備(高等的)とかはあまり必要ない。しかし,その内容は現代代数学の深い考えと基本的な概念に読者を導いていく。
 第二に,方程式の理論は長い発展の歴史を持っている。バビロニアの2次方程式についての解法から始まり,タルターリアとカルダーノの3次方程式,フェラーリの4次方程式の解法,そしてルフィニ,アーベルが懸案の5次方程式が代数的に解くことができないことを証明し,最後にガロアが代数方程式の不可解性の条件を完全な形で解決した。この間に,ラグランジュがそれまでの代数方程式の研究を詳細に考察した一般論,そしてまたヴァンデルモンドとガウスによる円分方程式の研究があり,アーベル,ガロアの研究のための準備の役割を果たした。
 第三に,方程式の代数的理論は完全に閉じている.それはずっと前に完全な成熟の域に達しているので,様々な角度から公平な評価をすることができる。
 また,この本の大きな特色は,代数方程式の解法をその時代時代の解き方で説明していることである。これはかなり時間と手間のかかる仕事であり,現代の我々はもっと効率的な手段と方法により短時間でそれをすませてしまうことが多い.
 4次方程式までは式の変形でなんとか説明するのはそれほど難しくない。5次以上になると代数的に式の変形とベキ根によっては解くことは難しくなり,実際解くことが不可能なことが証明された。フェラーリが4次方程式を解いてから,アーベルが5次方程式を代数的に解くことができないことを示すまでに約300年の時を経ている。
 この間にガウスとヴァンデルモンドの円分方程式の研究の後をたどり,ラグランジュが代数方程式を解くためにどのようなことを考えたかを詳細に考察している。特に,ヴァンデルモンドの研究については他書では見られない部分である。そして,アーベルの研究の後をたどると,今日,なぜ群という概念において可換群アーベル群と呼ばれているのかを理解することができる。このことも現代の教育の中で,群という概念を学ぶ場合になぜそのように呼ばれるのか不思議に思うことの一つであろう。
 そして最後にガロアにいたる。彼が18歳のときにフランス科学学士院に投稿した論文は1回目は失われ,2回目に投稿した論文は拒否された。しかしながら,彼の論文はリウヴィルにより忘却のかなたに失われる前に救われたという事件は歴史に残る有名な逸話である。ガロアはこの論文の中で今日方程式のガロア群として知られているものを導入している。この群の概念はそれ以後の数学をすべて書き換えてしまうほど基本的であり,現在でもまだ影響を及ぼしつつある。この本の著者はその論文を忠実にたどり,群は原初のかたちとして方程式の群として出現したことを明らかにしている。
 方程式の解法に関して膨大な数の文献を調べ上げて書かれた,切り口のユニークな大変面白い著作である。
[原著 Jean-Pierre Tignol: Galois' Theory of Algebraic Equations, World Scientific, 2001]

目次

第1章 2次方程式
1.1 はじめに
1.2 バビロニアの代数
1.3 ギリシャの代数
1.4 アラビアの代数

第2章 3次方程式
2.1 3次方程式の解法についての優先権論争
2.2 カルダーノの公式
2.3 カルダーノの公式から生じる展開

第3章 4次方程式
3.1 4次方程式の不自然さ
3.2 フェラーリの方法

第4章 多項式の創造
4.1 記号代数の発生
4.1.1 ステヴィンの「数論」
4.1.2 ヴィエトの「解析術序説」

4.2 根と係数の関係

第5章 多項式の現代的解釈
5.1 定義
5.2 ユークリッドの除法
5.3 既約多項式
5.4 根
5.5 重根と導関数
5.6 2つの多項式の共通根
付録:有理式の部分分数への分解

第6章 3次および4次方程式の新しい解法
6.1 ヴィエトによる3次方程式の解法
6.1.1 既約な場合の三角関数による解法
6.1.2 一般の場合に対する代数的な解法

6.2 デカルトによる4次方程式の解法
6.3 有理数係数方程式の有理解
6.4 チルンハウスの方法

第7章 1のベキ根
7.1 はじめに
7.2 ド・モアブルの公式の起源
7.3 1のベキ根
7.4 原始根と円分多項式
付録:ライプニッツとニュートンによる級数の和
練習問題

第8章 対称関数
8.1 はじめに
8.2 ウェアリングの方法
8.3 判別式
付録:完全平方数の逆数による級数のオイラー和
練習問題

第9章 代数学の基本定理
9.1 はじめに
9.2 ジラールの定理
9.3 代数学の基本定理の証明

第10章 ラグランジュ
10.1 方程式の理論の成熟
10.2 既知の方法に対するラグランジュの考察
10.3 群論とガロア理論の最初の成果
練習問題

第11章 ヴァンデルモンド
11.1 はじめに
11.2 一般方程式の解法
11.3 円分方程式
練習問題

第12章 ガウスの円分方程式
12.1 はじめに
12.2 整数論的準備
12.3 素数指数の円分多項式の既約性
12.4 円分方程式の周期
12.5 ベキ根による可解性
12.6 円分多項式の既約性
付録:正多角形の定規とコンパスによる作図
練習問題

第13章 一般方程式におけるルフィニとアーベル
13.1 はじめに
13.2 ベキ根拡大
13.3 自然な無理量についてのアーベルの定理
13.4 5次以上の一般方程式の不可解性の証明
練習問題

第14章 ガロア
14.1 はじめに
14.2 方程式のガロア群
14.3 体の拡大におけるガロア群
14.4 ベキ根による可解性
14.5 応用
付録:ガロアによる置換群の表現
練習問題

第15章 エピローグ

付録:ガロア理論の基本定理
練習問題

解 答

参考文献

訳者あとがき

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