黄金分割―自然と数理と芸術と― 

書籍情報
ISBN978-4-320-01781-8
判型A5 
ページ数192ページ
発行年月2005年03月
価格2,640円(税込)
黄金分割 書影
黄金分割

黄金分割というのは,純粋に数学的に定義された概念である.簡単にいってしまえば,1:(1+√5)/2 という比率,すなわち,黄金比に分割することにすぎないのだが,これが数学的に見ても深く,また豊富な内容をもっているのである.本書にも,黄金分割をめぐる多様な数学的話題が数多く,ていねいに述べられている.
 ところが,黄金分割は数学内部の問題にはとどまらない.われわれをとりまく自然の中のそこここに,黄金比とおぼしき比率が見え隠れするのである.植物にも動物にも,よく観察すればいろいろな場所に黄金分割を発見することができる.本書には,これらについても興味深い例が多数示されている.
 これは,自然界に調和をもたらす,見えざる神の手によるものか? いや自然の合目的性か? それとも美の本質か? 自然界の奥底に数理を見ようとする西欧的精神はこれを見逃がしてはおかない.黄金分割は,古代ギリシャ,中世・近世ヨーロッパを通じ今日に至るまで,飽くことのない研究対象である.
 このような観察からすれば,人の手による造形的創造に黄金分割を応用しようとする人が現われるのは当然である.黄金分割による建築上の作図法を構成する人もいる,黄金比に従って靴の木型を設計する人もいる,印刷面のレイアウトをする人もいる.…
 さらに,黄金分割によれば,美を達成することができるという"信徒"も現われる."過去の巨匠は実は(こっそりと?)黄金分割をもちいたのだ.いや,美しいものの中には必ず黄金分割が隠れているのだ"と信じ切って,建築,絵画,彫刻,音楽,詩歌にそのしるしを探す熱狂的な人々は跡を絶たない.しかし,決め手はなかなか見つからない.だが,これはただの偶然か? 無意識か? 眉唾か? 黄金分割と聞いただけで攻撃的になる人々もいる.著者の一人ボイテルスパッヒャーはドイツ数学啓蒙家の第一人者であるが,このへんのところを冷静に,しかし興味深く記述している.
 本書の読者のなかには,数学を好まない方々もおられよう.そのような方々には,まず第9章と第10章を読んでみることをお勧めしたい.細かい点はともかく,おおよその理解はできるだろうし,それだけでも,西欧的造形芸術に対する新しい視点を獲得することができよう.そのうえで,基礎的な積み上げの必要性を悟られ,第1章から読み始めて黄金分割とフィボナッチ数の関係などを知っていただければ幸いである.

目次

はじめに

第1章 基本事項
1.1 黄金分割の定義
1.2 数値φの性質
1.3 黄金分割の作図
1.4 黄金分割用コンパス
練習問題

第2章 正五角形
2.1 正五角形の対角線
2.2 黄金三角形
2.3 正五角形の幾何学的作図法
2.4 折り紙による正五角形のつくり方
2.5 歴史的なことに関するいくつかの注釈
練習問題

第3章 黄金分割とプラトン立体
3.1 黄金長方形
3.2 プラトン立体
練習問題

第4章 黄金螺旋と妙法螺旋
4.1 黄金螺旋
4.2 妙法螺旋
4.3 対数螺旋に関する注釈
練習問題

第5章 黄金分割をめぐる幾何学的性質のいろいろ
5.1 黄金直方体
5.2 半月形の重心
5.3 5枚の円板の問題
5.4 長方形内の三角形
5.5 ロレーヌの十字架
5.6 正方形内の三角形の内接円
5.7 三角形のフラクタル
5.8 最大面積
5.9 ペンローズの寄せ木貼り
練習問題

第6章 フィボナッチ数
6.1 家ウサギの問題
6.1.1 階段の登り方
6.1.2 雄のミツバチの系図
6.1.3 電子のエネルギー状態
6.2 黄金分割φとフィボナッチ数
6.3 幾何学的まやかし
練習問題

第7章 連分数,秩序とカオス
7.1 黄金分割の連分数表示
7.2 "カオスにおける最後の砦としての"黄金分割
練習問題

第8章 ゲーム
8.1 砂漠の中へ
8.2 Wythoffのゲーム
練習問題

第9章 自然界における黄金分割
9.1 ヒマワリ
9.2 葉序
9.3 パイナップルと樅ボックリ
9.4 五角形
9.5 葉と枝
9.6 人間的な,あまりにも人間的な
9.7 靴底の比率
練習問題

第10章 芸術,詩歌,音楽,機知,悪ふざけ,馬鹿騒ぎ,そして,錯乱
10.1 建築
10.2 造形芸術
10.3 文学
10.4 黄金分割と音楽
10.5 黄金分割はなぜかくも美しいのか?

原著文献(抄)

邦文・邦訳文献類

訳者あとがき