この本では信用リスクを概念的,実践的,また実証的に分析するうえでの基礎を,統一的な視点から解説している。基本的な話題は,ポートフォリオのリスク計測,倒産可能性がある債券やクレジットデリバティブ,その他の信用リスクに関連する証券の価格付けである。信用リスクのさまざまなモデルを紹介し,それぞれの長所と短所を評価している。信用リスクは市場リスク要因のひとつではあるが,逆選択やモラルハザードが重要な意味をもつため,他の市場リスク要因とは少し異なる。この本の多くの部分では,倒産と回収率のモデル化,そして信用リスクに関連する商品の価格付けについて論じている。他にも,相対取引されるデリバティブにおける信用リスク評価や,金融機関の(市場リスクと信用リスクの両方の)リスク全体の計測について考えていく。価格付けとリスク計測の両方を論じるうえで,ファイナンスの理論を制度とデータの両方と結びつけることに注意を払った。金融機関のリスク管理に携わる実務家,学術研究者,および大学院生にとって,信用リスクという興味深い問題を学ぶうえでの格好の入門書である。
[原著 D. Duffie and K. J. Singleton: Credit Risk --Pricing, Measurement, and Management, Princeton University Press, 2003]