近年,物理の理論は難しいというイメージを持つ学生が多い。それは,難しい数式を解析的に扱うためには,高度な数学力を必要とするからである。
一方,最近のコンピューター技術の急速な進歩に伴って,物理の数式を手で解くのではなく,計算機を使って解く研究が発展してきた。
このような研究は計算物理学と呼ばれ,実験物理学・理論物理学と並ぶ新しい物理学の柱となっている。
計算物理学の手法を使えば,難しい数学を使わなくても,物理の方程式をパソコンにインプットするだけで,数値的に解いてグラフが描けるばかりでなく,解析的には解けない方程式を,スーパーコンピューターを使って高精度の数値解を与え,最先端の研究への近道をも与えてくれる。
本書は,この計算物理学の初歩的な手法を紹介するとともに,最先端の研究につながる計算機実験への入門を目的とする。
すべての章を順を追って読む必要はなく,各自の目的や興味に応じて,必要な章だけピックアップして読み進めることができるように構成されている。
本書をきっかけとして,計算物理学を楽しむ学生が増えることを期待したい。