ニホニウム―超重元素・超重核の物理― 

書籍情報
シリーズ名基本法則から読み解く物理学最前線 【24】巻
ISBN978-4-320-03544-7
判型A5 
ページ数264ページ
発行年月2021年06月
価格2,640円(税込)
ニホニウム 書影
ニホニウム

 2015年12月31日,「日本に新元素の命名権が与えられる」というニュースは国内を駆け巡った。そして翌年6月8日,原子番号113番の元素の名前として「ニホニウム」が提案された。ニホニウムは元素の中で,現在のところ唯一日本にちなんで名付けられた元素である。
 ニホニウムは自然界には存在せず,日本の研究機関で2つの原子核をぶつけることにより人工的に合成された。ニホニウムは超重元素または超重核と呼ばれ,元素,原子核のフロンティアと呼べるものである。
 本書では,その合成・発見に至る物語を紹介するとともに,その周辺領域である超重元素・超重核の物理について解説する。元素は何番まで存在しうるのか,そして原子核はどこまで存在しうるか,原子物理・原子核物理の双方から,著者の見解も込めながら解説する。

目次

第1章 ニホニウムと超重元素
 1.1 ニホニウムの合成・発見:はじめに
  1.1.1 ニホニウムを含む新4元素の命名
  1.1.2 ニホニウム~アジアで初めての新元素~
  1.1.3 他の3元素~熾烈な国際研究競争の中で~
  1.1.4 “原子核”の合成
  1.1.5 超重元素,超重核
  1.1.6 本書の構成
 1.2 自然元素発見の歴史~超重元素研究前史~
  1.2.1 元素の概念と元素の周期表
  1.2.2 天然の新元素発見の限界
  1.2.3 日本の幻の43番元素ニッポニウム
 1.3 原子核の内部構造の発見~陽子と中性子,そして核図表~
  1.3.1 原子核の表記
  1.3.2 核図表
 1.4 原子核を人工的に「つくる」
 1.5 元素はなぜたくさんあるのか
 1.6 加速器の登場と超ウラン元素,そしてアクチノイド
  1.6.1 加速器の登場
  1.6.2 アクチノイド元素~米国の軽イオン融合反応~
  1.6.3 アクチノイドの概念
  1.6.4 ソビエト連邦の新元素研究
  1.6.5 日本の幻の93番元素
 1.7 超重元素
  1.7.1 超アクチノイド,そして超重元素
  1.7.2 アクチノイド・超アクチノイドの半減期減少~化学的同定から核物理的同定へ~
  1.7.3 超重元素の概念~超重核の安定の島~
  1.7.4 超重元素探索研究の意義
 1.8 超重核合成実験の様々な要素
  1.8.1 超重核合成の難しさ
  1.8.2 化学的同定から核物理的同定へ
  1.8.3 超重核合成に必要な高エネルギー・大強度ビーム~加速器~
  1.8.4 合成して超重核の分別~分離器~
  1.8.5 超重元素合成のポイント~まとめ~
 1.9 冷たい融合反応と熱い融合反応~重イオン原子核反応競争~
  1.9.1 超重元素合成の2つの戦略~ドイツGSIが選んだ鉛ビスマス標的~
  1.9.2 2つの超重元素合成の物理的違い~熱い融合反応と冷たい融合反応~
 1.10 ドイツの重イオン原子核反応~冷たい融合反応~
 1.11 ロシアの重イオン原子核反応~熱い融合反応~
 1.12 日本の重イオン原子核反応~ドイツ・ロシアとの競争~
  1.12.1 準備段階
  1.12.2 GARIS
  1.12.3 加速器
  1.12.4 実験
  1.12.5 2004年7月23日
  1.12.6 認定ならず
  1.12.7 補強実験
  1.12.8 そして3イベント目
  1.12.9 命名優先権の取得,そしてニホニウム
 1.13 まとめ
 1.14 超重元素探索研究の今後
  1.14.1 冷たい融合反応か熱い融合反応か
  1.14.2 119番元素,120番元素,そして

第2章 原子の構造
 2.1 水素様原子~1電子系~
 2.2 原子の閉殻構造~多体電子系~
  2.2.1 複数の電子の原子系
  2.2.2 縮退が解ける多電子原子の電子配置
  2.2.3 原子の閉殻構造
  2.2.4 マーデルング則
  2.2.5 周期表の第1周期から第7周期まで
  2.2.6 イオン化ポテンシャル
 2.3 相対論効果
  2.3.1 原子系のディラック方程式
  2.3.2 複数の電子の原子系のディラック方程式
  2.3.3 金で現れる相対論効果
  2.3.4 ローレンシウムから始まる電子配置の周期性からのずれ
  2.3.5 超重元素の化学的特性を求めて~実験化学~
  2.3.6 超重元素の化学的特性を求めて~理論化学~
 2.4 118番元素,そしてその先

第3章 原子核の構造
 3.1 原子核~概要~
  3.1.1 液滴模型
  3.1.2 独立粒子模型
  3.1.3 集団運動模型
  3.1.4 両者をつなぐもの
 3.2 結合エネルギーと原子質量
  3.2.1 質量の単位
  3.2.2 原子核の質量の質量欠損と結合エネルギー
  3.2.3 原子の質量
  3.2.4 原子の質量と結合エネルギー
  3.2.5 質量超過
 3.3 液滴描像と半経験的原子質量公式
  3.3.1 球形液滴模型(体積項,表面項,クーロン項)
  3.3.2 対称項
  3.3.3 平均的偶奇項
  3.3.4 実験値との比較
  3.3.5 安定原子核の位置
 3.4 原子核の閉殻構造
  3.4.1 l·s力の導入
  3.4.2 原子系のl·s力,原子核系のl·s
  3.4.3 Woods-Saxon型ポテンシャル
  3.4.4 超重核の閉核構造
 3.5 原子核の変形
  3.5.1 変形殻模型
  3.5.2 二ルソン図
  3.5.3 変形液滴模型
  3.5.4 基底状態の変形の実現
  3.5.5 系統的に現れる基底状態変形
 3.6 原子核の安定性・不安定性
  3.6.1 中性子,陽子ドリップ線
  3.6.2 β崩壊安定線
  3.6.3 原子核の存在領域

第4章 原子核の質量研究の現状
 4.1 核力
  4.1.1 “現実的”核力
  4.1.2 核力としての3体力
 4.2 原子核の理論計算の分類
  4.2.1 原子核の理論計算の外観
  4.2.2 殻模型計算と超重原子核
  4.2.3 密度汎関数法(density functional theory)
 4.3 巨視的-微視的法(macroscopic-microscipic法)
  4.3.1 液滴模型から有限レンジ液滴模型:FRDM質量公式
  4.3.2 大局的エネルギー+球形基底法:KTUY質量公式
 4.4 密度汎関数法(energy density functional法)
  4.4.1 スキルム力と密度汎関数法
  4.4.2 スキルム・ハートリー・フォックの原子質量計算
  4.4.3 相対論的平均場理論,または共変密度汎関数法
 4.5 原子質量計算,超重核への適用
  4.5.1 質量予測の精度
  4.5.2 質量差差分からみた超重核領域の閉殻予測
  4.5.3 実験Q値と理論Q値との比較~Z=108, N=162閉殻の出現~

第5章 原子核崩壊と原子核の安定性~超重核の安定の島~
 5.1 原子核崩壊
 5.2 原子核の崩壊様式の核図表上の様子
  5.2.1 核図表での原子核の崩壊の様子
  5.2.2 β崩壊の外観
  5.2.3 α崩壊の外観
  5.2.4 自発核分裂
  5.2.5 超重核領域の崩壊様式
 5.3 α崩壊
  5.3.1 α崩壊の概要
  5.3.2 偶偶核,奇質量数核,奇奇核と基底状態
  5.3.3 209Biのα崩壊,クラスター崩壊
 5.4 β崩壊
  5.4.1 β崩壊のハミルトニアン密度
  5.4.2 β崩壊の崩壊定数
  5.4.3 核行列要素の理論計算
 5.5 核分裂
  5.5.1 形状の記述
  5.5.2 ダイナミクス
 5.6 原子核の存在の範囲~超重核の安定の島~
  5.6.1 超重核の安定の島の指摘
  5.6.2 半減期を用いた範囲
  5.6.3 超重核の安定の島~崩壊様式~
  5.6.4 超重核の安定の島~半減期~
  5.6.5 超重核の安定の半島~次の領域へ~

第6章 超重元素を作る~原子核融合反応~
 6.1 原子核反応の基本事項
  6.1.1 反応Q値
  6.1.2 断面積
 6.2 冷たい融合反応と熱い融合反応~生成断面積の著しい減少~
 6.3 複合核
  6.3.1 複合核模型
  6.3.2 統計模型
  6.3.3 原子核同士の複合核反応~多段階過程~
  6.3.4 脱励起~蒸発過程と核分裂過程の競合~
 6.4 捕獲過程におけるクーロン透過~変形の効果~
 6.5 揺動散逸動力学
  6.5.1 揺動散逸動力学
  6.5.2 原子核への適用
  6.5.3 融合阻害
  6.5.4 統計崩壊
 6.6 Q値と励起関数~超重核合成反応の成否を分ける部分~
  6.6.1 接触点でのエネルギーとQ値
  6.6.2 Q値と励起エネルギー
 6.7 超重元素合成実験の展望
  6.7.1 119番元素以降~融合反応による拡張~
  6.7.2 超重核の安定の島へ~核子移行反応~
  6.7.3 大強度中性子による捕獲反応

第7章 超重元素・超重核研究の展望
 7.1 元素の存在限界
  7.1.1 点電荷原子核の水素様原子~Z=137までの解~
  7.1.2 有限半径の原子核~Z≈173までの解~
  7.1.3 スーパーアクチノイド
  7.1.4 155番元素以降
  7.1.5 173番元素以降と真空崩壊
  7.1.6 そのような原子核は存在するのか?
 7.2 原子核の存在限界
  7.2.1 次の安定の島~初期の研究~
  7.2.2 単一粒子準位の拡張~最も重い2重閉殻魔法数~
  7.2.3 半減期から見た原子核の存在領域
 7.3 中性子星内殻とパスタ原子核
 7.4 宇宙で作られた超重元素
  7.4.1 恒星における元素合成~鉄まで,そしてビスマスまで~
  7.4.2 r過程元素合成~中性子過剰超重元素を作る~
  7.4.3 r過程元素合成と超重元素~重い領域でつながる理解~
 7.5 終わりに
  7.5.1 より原子番号の大きい元素へ,より半減期の長い原子核へ
  7.5.2 超重原子核をどう作るか?
  7.5.3 元素の極限,原子核の極限
  7.5.4 非平衡の世界にいるわれわれ
  7.5.5 ニホニウム,そして新元素