メタマテリアルのつくりかた―光を曲げる「磁場」とベリー位相― 

書籍情報
シリーズ名マグネティクス・イントロダクション 全5巻 【2】巻
ISBN978-4-320-03572-0
判型A5 
ページ数224ページ
発行年月2019年07月
本体価格2,500円
メタマテリアルのつくりかた 書影
メタマテリアルのつくりかた

 本書は科学に興味がある高校生を主なターゲットとして,科学の面白さ,そして科学するこころについて伝えたいと執筆しました。
 磁気分野で最前線のトピックであるメタマテリアルとベリー位相は,近年注目を浴びています。しかしながら,それぞれ性質が常識外れであったり,高度な物理・数学の知識を必要としたりするために,プロの研究者にすら敷居が高く感じられ,きちんと理解されていないのが現状です。そこで本書では,予備知識が必要ないように基礎的な事柄から丁寧に説明し,数式を一切用いることなく,メタマテリアルとベリー位相の直観的イメージを伝えることを試みました。
 そのために我々が用いた武器は「アナロジー」,つまりたとえ話です。様々なアナロジーを駆使することにより,光と電子と物質という異なる対象に共通する考え方を学び,それらの立場を行ったり来たりしながら,メタマテリアルとはどういう考え方で,ベリー位相を用いるとどういうことが可能になるのかを説明しました。
 最終的にはメタマテリアルを用いて光を自在に操ることが,光のベリー位相理論でどのように考えることができるかを伝えます。
 結果として本書は高校生のみならず,大学生,及び専門内外の研究者にもリーダブルになったと感じます。本書の内容が読者のこころのどこかに示唆を与え,様々な思索を巡らせて新しいアイディアを生みだすきっかけとなれば,それは私たち筆者の望外の喜びです。

【本書の対象】
科学に興味がある高校生(たとえばスーパーサイエンスハイスクール在校生など)およびその関係者(教師や父兄),大学生,専門外の研究者(工学,化学,生物学),専門の研究者(物理)

目次

第1章 メタマテリアル最前線
1・1 対称性の破れと光
1・2 磁気カイラル効果
1・3 メタマテリアル
1・4 磁気カイラルメタ分子を作る、測る
1・5 光にとっての「磁場」をつくる

第2章 見方を変えてみよう
2・1 地図を読む
2・2 バスに乗る
2・3 ジェットコースター
2・4 モンキーハンティング
2・5 オイラーvsラグランジェ
2・6 磁気と相対性理論

第3章 磁気と電気の準備体操
3・1 身の回りの磁気と電気
3・2 磁気の原理は実は難しい
3・3 電界と磁界、電場と磁場
3・4 定性的と定量的
3・5 現象論
コラム3・1 半額セール

第4章 磁気とはなんだろう
4・1 フレミングの左手の法則から電磁気学の基礎へ
4・2 電磁気学から相対性理論へ
4・3 量子力学:粒子性と波動性
4・4 量子力学とスピン
コラム4・1 共役
4・5 歳差運動
4・6 スピンと軌道の相互作用

第5章 光と磁気
5・1 電磁波としての光
5・2 「見える」とはどういうことか
5・3 光と色
5・4 色は絶対的ではない
5・5 物質の電気的応答 ―誘電率―
5・6 物質の磁気的応答 ―透磁率―
コラム5・1 複素数
5・7 屈折率とインピーダンス
コラム5・2 インピーダンスに対応する日本語がない

第6章 メタマテリアルとはなんだろう
6・1 蚤に蹄鉄を打つ ―アイディアは40年前に誕生していた―
6・2 負の値をポジティブに使おう
6・3 蘇えるアイディア ―スイスロールとジャングルジム―
コラム6・1 ファラデーの電磁誘導
6・4 メタマテリアルの誕生
コラム6・2 科学的なプロセスとは
6・5 左利きと負屈折率
コラム6・3 波束
6・6 負屈折率メタマテリアル

第7章 波の性質
7・1 縦波と横波
7・2 位相速度と群速度
コラム7・1 光速を超えてもよい
7・3 波の干渉
7・4 コヒーレンス
7・5 「いそう」と「位相」
7・6 分散関係とバンドギャップ

第8章 メタマテリアルの過去、現在、そして未来
8・1 メタマテリアルの進撃
8・2 メタマテリアルの苦悩
8・3 メタマテリアルの未来

第9章 メタマテリアルで可能になったこと、なりそうなこと
9・1 負屈折率 ―光が「間違った」方向へ曲がる―
9・2 完全レンズ ―原子が見えるかもしれない―
9・3 不可視化クローク ―モノを見えなくする「隠れ蓑」―
9・4 完全吸収体 ―黒よりも黒く―
コラム9・1 2018年:ヴェセラゴ論文から50周年

第10章 アナロジー
10・1 アナロジーは異なる分野の橋渡し
10・2 屈折現象を説明してみよう
10・3 スーパーボールを使った実験
10・4 光の反射と透過へのアナロジー
10・5 古典力学から量子力学へのヒントにもなった
10・6 光にとって物質は「回路」

第11章 対称性の破れとメタマテリアル
11・1 対称性
11・2 偏光は光のスピン
コラム11・1 右回りか左回りか
11・3 屈折 ―並進対称性の破れ―
コラム11・2 偏光の使いみち
11・4 横シフト ―回転対称性の破れ―
11・5 砂糖水の自然光学活性 ―空間反転対称性の破れ―
11・6 磁石の磁気光学効果 ―時間反転対称性の破れ―
11・7 磁気カイラル効果 ―空間・時間の両方の反転対称性の破れ―
11・8 メタマテリアルで磁気カイラル効果を巨大化する
11・9 ホモキラリティや電気伝導
11・10 魔法の鏡と光にとっての「磁場」

第12章 光のベリー位相理論
12・1 腕とタオルをねじってみる
12・2 電子のベリー位相
12・3 地球は丸かった
12・4 続・地図を読む
12・5 幾何学とベリー位相の結びつき
12・6 ベリー位相と磁気
12・7 光ファイバーでの偏光回転
12・8 光の伝搬におけるベリー位相
12・9 波束の運動方程式
12・10 メタマテリアルとベリー位相
12・11 エッジ状態とトポロジー
12・12 歪みをもつ結晶中の光の横シフト
12・13 まとめ

参考文献
あとがき
索引