物理は自然科学の中で最も基礎的な学問分野の1つである。力学をはじめ,熱・統計力学,電磁気学,固体物理学やプラズマ物理学,量子力学,相対性理論,宇宙論などの多岐にわたる分野でもある。近年は,生物物理,医学物理などの幅広い領域への展開がなされてきている。
筆者は,現在いくつかの大学で基礎物理学,力学,電磁気学,エネルギー学などの講義を担当してきており,筆者のこれまでの講義をベースにして書き下ろしたのが本書である。理工系の力学や物理学の教科書として,また,生物系や医療系の基礎物理学の教科書として利用可能である。
前半に力学(剛体,流体を含めて)を,後半に様々なエネルギー編として,熱,波,電気,原子を,最後に生命と宇宙の特別編を記載している。高校での物理内容が「物理基礎」と「物理」とに最近変更になったことも考慮して,半年の理工系の基礎物理学(力学)の講義用と,半年の生物・医療系の基礎物理学の講義用とを一体化した教科書である。
各章ごとに5節にまとめてキーワード,本文,例題,演習問題を記した。これまでの講義では,関連しそうな映画の予告編ビデオを通じて物理の課題に興味を持ってもらうようにしていたが,この「映画の中の物理」のコラムも含めた。また,講義では意外と正解率の低かった「物理クイズ」も掲載し,さらに「科学史コラム」も各章の終わりに記載して物理に興味を持ってもらえるように配慮した。