電子移動は化学反応の基本となるものであり,電子移動反応の理論が化学反応論の基礎となっている。電子移動反応においてはその素過程の反応速度をかなりの精度で測定する方法が確立しているので,理論的に提案された化学反応論を検証しながら進めることができる研究分野でもある。
本書では,次の点を中心にわかりやすく解説しており,さらに電子移動関連の基礎から応用への理解を深めるためのコラム,演習問題も充実している。
・化学反応において基本的でかつ重要な反応の一つである電子移動反応の理論をフラーレン(C60)の最新の実例を数多く採用して記述している。
・電子移動のマーカス理論を多くの例でわかりやすく説明している。
・溶液中の基底状態で起きる熱的電子移動と励起状態での光誘起電子移動の両方を網羅しているので,有機反応の素過程から太陽電池や人工光合成への応用まで幅広く役立つ。