本書は,ナノカーボンの中心的物質であるフラーレンについて基礎化学の観点からまとめたものである。
炭素だけからなる単体物質としては,古くからダイヤモンドとグラファイトが知られているが,1985年にセレンディピティにより発見されたかご状の炭素同素体であるフラーレンC60は,
第三の同素体として注目され,ノーベル化学賞の受賞対象となるなど,20世紀最大の発見の一つに数えられている。
最近の研究では,星間物質にC60の存在が確認されたり,C60から超伝導物質や,太陽電池の材料,生理活性を示す物質が得られたりしている。
このようにフラーレンは化学だけでなく,物理学,生物学,医学など,科学のいろいろな分野とのかかわりがある。
本書では,C60に代表されるフラーレンの「合成・構造と性質」,「化学反応性と分子変換法」,「機能と応用」についてわかりやすく解説する。
本文では各所に引用文献を引いており,興味のある読者が原著論文をたどれるようになっている。