半導体ナノシートとは,厚さ約1nmと非常に薄い半導体特性を示す材料である。人間の髪の毛が0.1 mm程度くらいなので,1nmとはその10万分の1の大きさと想像すれば,この厚さがどれほど薄いか想像できるであろう。2000年頃から,このナノシートという材料を使った研究が物理や化学の最先端の研究領域で注目されるようになってきている。そのような情勢の下,2009年には炭素原子1個の厚さのグラフェンナノシートの研究に対してノーベル物理学賞が授与されている。
本書では,一般的なナノシートの定義や特徴,種類について概説し,半導体ナノシートとしての特徴を,いくつかの具体例を挙げて説明し,どのような分野で研究が進められているかを紹介する。本書の前半では,半導体の基礎物性の章も設け,初心者でも半導体の基礎物性を理解できるようしている。本書の後半では,半導体ナノシートの光電気化学特性,ナノシートを用いた光触媒,ナノシート発光材料,異種ナノシートの張り合わせ等,ナノシートの応用例について紹介する。