栽培漁業と統計モデル分析

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書籍情報
ISBN978-4-320-05570-4
判型A5 
ページ数354ページ
発行年月2001年02月
本体価格5,800円
栽培漁業と統計モデル分析 書影
栽培漁業と統計モデル分析

2025年には83億人に達するといわれる世界人口を支える食糧は,農業,畜産業,水産業が供給する。水産業の基幹である漁業では,天然資源の採取を主とした生産体系をとっている。 国連食糧農業機構は,世界の多くの漁業対象種で乱獲によって資源水準が悪化しており,将来の食糧安全保障と収入確保には自然・人工の水域での水産資源増強が重要な役割を果たすと予測している。
人工ふ化放流は130年の歴史をもっているが,ふ化したばかりの仔魚を放流するいわゆるふ化放流は失敗に終わった.海産魚を対象として1963年から始まった日本の栽培漁業は,世界にさきがけて,ふ化放流ではなく種苗生産技術によって,生き残りの高いサイズまで育成して放流することを目指し,36年が過ぎた。
たとえ公海であっても海洋資源の利用が厳しく制限されるようになり,排他的経済水域の本格化により,魚食民族である日本人は,今後日本の周辺海域の水産資源の持続的利用を余儀なくされている。栽培漁業がそのための方策の1つとして期待されている。高度経済成長の始まりとともに誕生し大きくなった栽培漁業は,環境問題,構造改革と国際化という問題を抱え,これまでとは違う大きな曲がり角にさしかかっている。

本書は,以下の3つの目的を持って書かれている。

栽培漁業への社会的関心を高め,理解を深める。
種苗放流によって,減少した資源の回復と漁業生産の増加が可能かどうかを評価する。
その評価を行うにあたって用いた統計手法の数々を整理する。

分析ではすべて実際のデータを用いているが,事例紹介的な扱いは避け,一般的な結果を抽出するようにした。種苗放流の影響の評価方法にも重点をおき,これまで研究した統計的評価手法を駆使して,具体的な分析例とともに紹介した。

目次

第1章 栽培漁業への期待と課題
1.1 200海里時代の到来
1.2 栽培漁業のぼっ興と環境保全の動き
1.3 本書で用いた統計手法

第2章 種苗放流の歴史と現状
2.1 サケから始まった人工ふ化放流
2.2 海産魚介類の放流
2.3 種苗放流の現状
2.4 主要対象種の放流強度
2.5 放流強度と混獲率

第3章 大量放流の教訓
3.1 シロザケ
3.2 ホテテガイ
3.3 用いた統計手法の補足
3.4 統計学一般の参考図書

第4章 栽培漁業の可能性と問題点
4.1 栽培漁業と環境収容力
4.2 栽培漁業が成功条件
4.3 種苗放流の損益
4.4 生物学的問題点
4.5 遺伝的影響の可能性

第5章 栽培漁業と資源管理
5.1 全国漁家調査
5.2 新たに提示される包括的資源管理の方向性
5.3 栽培漁業と資源管理の混乱
5.4 古典的資源管理と栽培漁業
5.5 包括的資源管理の新しい概念:資源計画
5.6 種苗放流の目的と機能
5.7 適応的管理
5.8 資源管理と水産資源学の参考図書

第6章 栽培漁業に対する住民意識
6.1 厚岸町での調査と回答者の特性
6.2 ニシン放流への賛否とロジスティック回帰
6.3 種苗放流に期待する役割
6.4 情報提供の必要性
6.5 今後のニシン放流:2回目調査から
6.6 関連する統計手法について
6.7 サンプリング理論の参考図書

第7章 標識放流による生残過程の推測:漁業によるサンプリング
7.1 標識によって異なる調査方法
7.2 生残率推定と漁獲の理論
7.3 多項分布と対数線形モデル
7.4 最尤法と最小2乗法
7.5 不等間隔のデータと部分尤度
7.6 初期死亡過程の分析:マダイの標識放流実験
7.7 実験計画への配慮:ガザミの自然死亡
7.8 漁獲率の推定精度
7.9 参考図書など

第8章 標識放流による生残過程の推測:調査によるサンプリング
8.1 試験操業調査と死亡係数の推定
8.2 個体数を推定する:標識最捕法
8.3 目視による滞留率の推定
8.4 確率変数とその分散
8.5 加重最小2乗法

第9章 放流効果の評価
9.1 再捕報告調査から市場調査へ
9.2 推定法が抱えていた問題点
9.3 2段サンプリングによる放流効果の推定
9.4 調査計画の検討:北海道のサクラマス
9.5 3段サンプリングの検討
9.6 標識率の影響
9.7 比推定法
9.8 放流魚の年級分離
9.9 調査実施上の注意
9.10 補足

第10章 遊漁の評価
10.1 種苗放流と遊魚
10.2 遊魚釣獲量の推定
10.3 漁期を通した総釣獲量
10.4 那珂川でのアユの調査
10.5 有限修正項の2つの表現

第11章 遺伝標識と混合率推定
11.1 GSI の統計モデル
11.2 部分尤度とEMアルゴリズム
11.3 分散の具体的表現
11.4 天然群に対する2つの放流群の影響の見積もりの例
11.5 誤差推定とブートストラップ法

第12章 集団間の遺伝的距離の評価
12.1 遺伝的差異の評価
12.2 遺伝的距離とその標本分布
12.3 ベイズの定理
12.4 ベイズ推定
12.5 経験ベイズ法
12.6 マダイの集団は遺伝的に異なっているか
12.7 標準化遺伝距離
12.8 確認されたマダイの遺伝的同一性
12.9 標本数とパラメータ推定値
12.10 過分散と遺伝的流動
12.11 ベイズ法と参考図書

第13章 有効集団サイズの評価
13.1 遺伝子頻度の変化と有効集団サイズの推定
13.2 厚岸ニシン
13.3 従来の方法との比較:ノーザンパイク
13.4 継代飼育アユ
13.5 Ne の推定精度とサンプリング
13.6 近親交配率による評価
13.7 ふ化場でのサンプリング
13.8 過分散の評価
13.9 集団遺伝学の参考図書

第14章 集団の形態分析:継代飼育の影響
14.1 天然アユと継代飼育アユ
14.2 継代飼育によって変化する形態
14.3 計数形質の特徴
14.4 遺伝的影響
14.5 多変数解析の参考図書

参考文献
あとがき
索引