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ナノテクノロジーによる生命科学 
ナノバイオロジー

書籍情報
ISBN978-4-320-05616-9
判型B5 
ページ数196ページ
発行年月2004年07月
本体価格3,800円
ナノバイオロジー 書影
ナノバイオロジー

21世紀に入って、"ナノ"という接頭語のついた言葉が以前にも増して聞かれるようになった。工学分野では「ナノテクノロジー」が開花し,半導体やレーザー技術のナノ化,マイクロマシーンの創生などが活発化している。物理学や化学の分野では,理論や実験において「ナノフィジックス」「ナノケミストリー」が定着しつつある。
現代生命科学も,"分子・細胞"という共通言語を基礎に生物学の諸分野を統合・発展し,当然の帰結として,ナノテクノロジーを活用するようになった。ここに、「ナノバイオロジー」という分野が生まれたわけである。
ナノバイオロジーは基礎科学(生物学)である,というのが本書の立場である。ナノテクノロジーという方法論を用いて,ナノメートル,ミリ~ナノ秒,ナノ~ピコニュートンのレベルで生命現象の分子機構を解析する分野である。
ナノバイオロジーは,まだ体系づけられた分野にはなっていない。しかし,それだからこそ,未開拓の多くの領域を含む魅力的な分野である。本書では,この魅力をわかりやすく,かつ科学的正確さを保ちながら,特に,「ナノテクノロジーを応用すれば,如何に面白い生命科学が展開できるか」という視点から,わが国を代表する第一線の研究者の方々に自身の専門領域について解説していただいている。

目次

chapter1 ナノバイオロジーのあけぼの
1 百聞は一見にしかず
1.1 ナノメートルの世界
1.2 ミリ~ナノ秒の世界

2 高分子としての物性が構造と機能を決める

3 細胞の研究は細胞膜から
3.1 細胞膜
3.2 膜タンパク質

4 1分子を操作する
4.1 ピコニュートンの世界
4.2 ナノマニピュレーション

5 ナノバイオロジーとゲノム科学の基本問題

● Key words

chapter2 蛍光でわかるナノの世界
生体高分子を"見ながら"細胞の機能を探る
1 なぜ,1分子細胞生物学か?:明解な一例

2 生細胞中での1分子観察/操作の利点のまとめ

3 さらにわかってきた生細胞中での1分子観察/操作の有用性

4 1分子法でわかってきたら手っ取り早い多分子法へと進めることも可能

5 生細胞中での1分子観察/操作の歴史

6 1分子法とナノ計測の整合性:1分子ナノバイオロジーの誕生

7 膜骨格による膜タンパク質と脂質の運動の抑制機構:1分子観察によって初めて見えてきた細胞膜のコンパートメント化
7.1 膜骨格の"フェンス"効果と"テザー(結合)"効果によって膜タンパク質の運動が抑制されている
7.2 膜骨格フェンスにアンカーされた膜タンパク質がピケラインを形成し,脂質も含めて,すべての膜分子の運動を遅くしている
7.3 オリゴマー化誘導トラッピングモデル(oligomerization-induced trapping model)
7.4 アンカーされた膜タンパク質がつくる細胞膜上のダム:細胞の極性を維持する機構

8 誰でもできる生細胞中での1分子観察

● Key words

chapter3 放射光で探るナノの世界 世界最高の光によるタンパク質結晶構造の決定
1 どのようにタンパク質の立体構造を決めるか

2 X線回折データ測定には放射光がきわめて強力である

3 セレノメチオニンタンパク質を用いた多波長異常分散法

4 タンパク質の構造からその機能を探る
4.1 イソクエン酸脱水素酵素:立体構造からの酵素反応機構と分子進化を解明
4.2 DNAと相互作用するタンパク質
4.3 リボソーム

● Key words

chapter4 膜タンパク質のナノバイオロジー チャネルの分子構造と機能
1 電子線結晶学
1.1 膜タンパク質の2次元結晶化
1.2 クライオ電子顕微鏡法
1.3 画像解析と3次元再構成

2 水チャネルの構造と機能
2.1 AQP1の立体構造
2.2 チャネルの選択性
2.3 水素結合ネットワークとプロトン透過制御
2.4 チャネルにおける透過速度

● Key words

chapter5 1分子生化学 生体分子の物性を測る
1 微小なナノ構造体の硬さ測定

2 タンパク質の力学

3 タンパク質の延伸実験
3.1 準 備
3.2 測定結果とその意味
3.3 リガンドと受容体の結合力測定など

4 他の分野との関連

● Key words

chapter6 ナノシミュレーション nano-physics から nano-biologyへ
1 生物と階層構造

2 コンピュータシミュレーション
2.1 位置づけ
2.2 手 法
2.3 モデル

3 DNAの階層性
3.1 硬い紐,軟らかい紐
3.2 DNA分子の階層構造

4 DNAの折りたたみ転移
4.1 生体内のDNA
4.2 コイル・グロビュール転移
4.3 DNAを直接見る
4.4 半屈曲鎖の折りたたみ
4.5 半屈曲鎖の折りたたみ過程

5 ねじれた紐状分子

6 ヌクレオソームモデル

7 多分子DNAによるバンドル形成

8 Aの高次構造転移と遺伝子活性

9 とめと展望

● Key words

chapter7 遺伝子のナノバイオロジー 遺伝子の高次構造と機能
1 原子間力顕微鏡を用いたナノイメージングの仕組みと方法
1.1 原子間力顕微鏡によるイメージングの原理
1.2 原子間力顕微鏡像に含まれる情報(探針の形状による効果)

2 原子間力顕微鏡で何を見るか

3 原子間力顕微鏡による遺伝子観察
3.1 試料の作製
3.2 大気中での観察
3.3 溶液中での観察

4 原子間力顕微鏡による遺伝子解析法(基本編):DNAとタンパク質の相互作用を可視化・解析する
4.1 DNAとタンパク質との相互作用の解析
4.2 転写因子によるDNAループ構造形成の機能解析

5 原子間力顕微鏡による遺伝子解析法(応用編):遺伝子の高次構造をひも解く
5.1 遺伝子の基本構造クロマチン
5.2 再構成クロマチンと原子間力顕微鏡による解析

6 遺伝子の高次構造と機能の関係:ゲノムの高次構造はDNAの物理的性質とDNA-タンパク質相互作用のバランスの上に構築される
6.1 DNA鎖の物理的性質と高次構造の関係
6.2 タンパク質の構造と機能が結びつくとき

7 染色体のナノバイオロジー
7.1 モデル生物としてのバクテリア
7.2 真核細胞ゲノムの微細構造
7.3 真核細胞の核内構造

● Key words

chaper8 1分子生理学 筋肉の収縮機構をナノテクノロジーで解明する
1 1分子のモーター分子による基本運動

2 滑り運動を顕微鏡下で見る

3 アクチンフィラメントを捕まえて操作し,その動きを計測する

4 ミオシンの基本ステップ運動を計測する

5 1分子を可視化する

6 エネルギー供給反応を1分子レベルで見る

7 エネルギー供給と力学反応のカップリング

8 ミオシン1分子を見る

9 ミオシン1分子を捕まえて操作する

10 ミオシン分子の運動をより詳細に記述する

11 構造変化とステップ運動

12 ナノマシンの動作原理

● Key words

chapter9 リアルタイムで"見る"ナノの世界 分子の動きを捉える
1 走査型プローブ顕微鏡
1.1 走査型トンネル顕微鏡(STM)
1.2 走査型近接場光学顕微鏡(SNOM)

2 原子間力顕微鏡の原理と走査手法

3 原子間力顕微鏡装置の構成
3.1 原子間力顕微鏡システムの概略
3.2 カンチレバー
3.3 光てこ法
3.4 振幅計測
3.5 スキャナー
3.6 フィードバック制御

4 原子間力顕微鏡の空間分解能
4.1 空間分解能(試料に働く力の影響)
4.2 空間分解能(針の太さの影響)
4.3 空間分解能(ピクセルの大きさ)

5 原子間力顕微鏡の時間分解能
5.1 Constant Heightモードにおける時間分解能
5.2 Constant Forceモードにおける時間分解能
5.3 Tappingモードにおける時間分解能

6 高速原子間力顕微鏡
6.1 高速走査用カンチレバー
6.2 高速振幅計測装置
6.3 光てこ光学系
6.4 高速スキャナー

7 イメージング
7.1 通常の撮影速度での動態イメージング
7.2 高速原子間力顕微鏡による動態イメージング

8 さまざまな工夫と改良
8.1 探針‐試料間に働く力の軽減化
8.2 同期観察
8.3 試料の基板への固定
8.4 高速スキャナー

Appendix●原理を深く知りたい人へ
A カンチレバーの力学
A-1 静力学
A-2 動力学

B PID制御のシミュレーション

● Key words

chapter10 カーボンナノチューブとナノバイオロジー
1 走査型プローブ顕微鏡の概要
1.1 測定モード
1.2 分解能

2 ナノチューブは究極の探針材料

3 ナノチューブの基礎特性
3.1 ナノチューブの構造
3.2 ナノチューブの機械的性質
3.3 ナノチューブの電子物性

4 ナノチューブ探針の作製
4.1 ナノチューブの合成とカートリッジの作製
4.2 走査型電子顕微鏡マニピュレータと探針作製

5 ナノチューブ探針による像観察
5.1 長寿命と高分解能性
5.2 急峻な凹凸観察
5.3 水分子層の観察

6 ナノチューブピンセット
6.1 ピンセット動作の原理
6.2 ピンセットの作製
6.3 ピンセットの特性
6.4 ナノマニピュレータ

● Key words

chapter11 ナノバイオロジーの将来
1 わが国のナノバイオロジー

2 短期的展望:走査型プローブ顕微鏡技術の向かう先
2.1 AFM/ SNOMの光と影
2.2 走査型マルチプローブ顕微鏡が切り開く1分子操作技術
2.3 光学顕微鏡の将来:光の限界を超えて

3 長期的展望

索引