切磋琢磨するアメリカの科学者たち―米国アカデミアと競争的資金の申請・審査の全貌― 

書籍情報
ISBN978-4-320-05620-6
判型A5 
ページ数176ページ
発行年月2004年10月
価格1,980円(税込)
切磋琢磨するアメリカの科学者たち 書影
切磋琢磨するアメリカの科学者たち

ロングセラー

 現在日本にはNIHなどの米国機関を解説した著書や米国の研究室を紹介する著書は多くあるようだが,残念ながら大学システムを含めた米国アカデミア全体を解説した著書はきわめて少ないように見受けられる。そういった意味で,本書では筆者の経験を基に,米国の大学システムがいかに科学研究費の申請・審査のシステムと絡み合うことで機能し,また,科学研究費のピアーレビューの批評と結果が米国の研究者の切磋琢磨する土壌を作り上げているかを解説したいと思っている。
 本書は,決して日本のシステムを批判することを目的にしているものではない。米国のシステムを表面的に導入することがいかに危険かということを,米国のアカデミックシステムの根本を理解することで読者に理解していただきたい。今必要なことは,米国のシステムの良い部分を理解し,またその中で日本に適応できない部分もしっかり認識した上で,日本の土壌にあったシステムを作り上げることが大切である。さらに,それが日本のアカデミックシステムの中で,効率良く機能することが重要である。そこには,当然米国とは違う,「独自性・独創性」が要求される。すなわち,前述の各大学の教育の独自性に加え,日本のアカデミックシステム全体の独自性が重要になってくるであろう。したがって,本書を大学教育にかかわる1人でも多くの方,それは現場の大学教員・研究者に限らず,政府・官僚側からその変革に携わる人たち,さらには将来携わる可能性のある大学生の方にも読んでいただくことを希望している。本書の読者が,日本の土壌において効率良く機能するシステムについて議論し,優れたアイディアが生まれれば,この本を執筆した目標は達成される。そのようなシステムを作ることこそが,日本の大学教育の質を向上させ,基礎研究の活性化を促すことになり,その活性化が企業へとつながり,さらに日本が技術大国として末永く世界に貢献できる国となることができるのではないだろうか。
 本書は,米国の大学システムを教育面と研究面に分け解説したのち,科学研究費システムを解説する。これらの章には,それぞれトピックスとしての見出しをつけている。全体を通して読むことをお勧めするが,興味ある項目から読み始めるのも悪くはないであろう。ただし,各章の項目はお互いに密接に関連しているため,アメリカのアカデミックシステムを正しく理解するためにも,最終的には全項目を読むことをお勧めする。

〔本書はこういう読者に読んで欲しい〕
 ・ 大学教職員に:米国の大学システムアカデミックカリキュラムの理解,そして米国の科学研究費申請と評価システムの理解のために。
 ・大学生・大学院生に:米国留学の手引き書として。ただし,ありきたりの手引き書でなく,留学後までの長い目でみた米国で生き残る研究者としてのアウトラインとして。
 ・科学研究費の支出に携わる省庁関係者に:米国の科学研究費申請と評価システム理解のために。
 ・大学・研究所で研究に携わる研究者に:米国の科学研究費申請と評価システムにより,いかに研究者が切磋琢磨し研究の質の向上に向けたモティベーションに駆られているかを理解して欲しい。

目次

モティベーション

1章 米国の大学教育システム
学部教育
1. 大学入試と大学の選択
2. MajorとMinor
3. 授業カリキュラム
4. 進学を目的とした専攻

大学院教育
1. 大学院生の選抜:獲得競争と流動性
2. 博士までの一貫教育と経済的サポート
3. 授業形態
4. Ph.D.資格適性試験(Qualification examination for Ph.D. candidacy)
A. Synopsis(研究概要)
B. Proposal(研究申請)
C. Presentation(口頭発表)
D. Thesis committee meeting(卒論審査会)
E. Cumulative examination(累積試験)
5. 卒業論文(Dissertation)と発表
6.学位授与式
7. 大学院教育の意義

2章 アカデミック研究を支える大学のシステム
1. 新任教員の採用
A. 公募と選抜,そしてインタビュー
B. 採用
C. スタートアップ費用

2. テニュア制度と審査
A. テニュア制度の意義
B. テニュア審査
(1) CV
(2) Teaching Portfolio
(3) 発表論文の別刷り
(4) 外部審査を行なうことのできる教授のリスト

3. Full Professorへのプロモーション

4. 教員の流動性

5. 大学・学科からの研究サポート体制
A. ストックルーム
B. 共通ファシリティー(設備)
C. 研究費申請のためのサポート体制
D. 研究費管理のためのサポート体制
E. TAサポートとRAサポート
F. 研究室面積
G. 秘書のサポート
H. 競争的大学内研究費(Seed funding)

6. 間接経費

7. 知的財産(Intellectual properties)

3章 アカデミック研究を支える科学研究費―その申請と審査のすべて
1. 科学研究費の種類

2. NIHの研究計画書申請
A. R01
(1) Preface(表紙)
(2) Abstract(概要)
(3) Table of contents(目次)
(4) Budget justification page:Modular research grant application(予算)
(5) Biographical sketch(履歴書)
(6) Resources(リソース)
(7) Research plan(研究計画)
Introduction(前置き)
a. Specific aims(研究目標)
b. Background and significance(背景と重要性)
c. Progress report and preliminary studies(進行報告と予備成果)
d. Research design and methods(リサーチデザインと方法)
e. Human subject
f. Vertebrate Animals
g. Literatures cited(参考文献)
(8) 提出とレビューセクションの指定
(9) 審査サイクルと申請時期
(10) WEBサイトの活用
B. R03とR21
C. SBIRとSTTR
D. T32:トレーニンググラント
E. F31(Individual pre-doctoral fellowship)とF32(Individual post-doctoral fellowship)
(1)Face page
(2)Abstract
(3) Table of contents
(4) 学業成績
(5) Background
(6) Research
(7) Sponso:
(8) 推薦状:

3. NIH研究計画書の審査
A. スタディーセクションとは
B. 研究計画書の割当と郵送
C. 批評
(1) Significance(重要性)
(2) Approach(方法論)
(3) Innovation(革新性)
(4) Investigator(研究者)
(5) Environment(研究環境)
(6) Overall evaluation(全体評価)
(7) Protection of human subjects from research risks
D. 予備優先得点とランキングの決定
E. Streamlined Review Procedures(SRP)方式
F. 審議会
G. 最終的な優先得点とパーセンタイル
H. NIHの部局とペイライン
I. 年度末レポートとリニューアル
J. 批評

4. NSFの研究計画書の申請と審査
A. 研究計画書の作成
B. 研究計画書の申請と申請サイクル
C. 審査

5. その他の連邦機関からの研究費

6. 私立財団からの研究費

4章 日本との比較―日本のシステムをどのように改革すべきか
1. 米国アカデミック研究の総括

2. 日本のアカデミック研究と教育の活性化に向けた提案
A.科学研究費の申請と評価システムの比較と改革の可能性
B.大学システムの比較と改革の可能性
C. 大学教育システムの比較と改革の可能性
D. 大学院教育の改革案

おわりに
あとがき
索引