生物学哲学の泰斗マイケル・ルースが,自身の研究の集大成として位置づけている三部作のひとつ。この自然世界,とくに生物の世界がどのように作られているのか,「デザイン」というキーワードの変遷と歴史を縦糸に,宗教や哲学・思想と科学の絡みを横糸に,縦横無尽に織り上げた金字塔。宗教と科学の関係,とくにキリスト教と進化論の関係も,実はそれほど単純ではないということが,膨大な領域を渉猟する中から鮮やかに描き出される。
科学という営みは,かくも見事にギリシア以来の西洋の知の系譜に連なる活動であるし,思想や科学の体系も,常に変容し続ける動的なシステムである。しばしば私たちはこれらのことを忘れて,教科書に固定化された科学や知識だけを受け入れてしまいがちだが,実はそれは科学的ではない思考なのだ。本書は,そのことを明確に教えてくれる。
生物の形(フィンチのくちばしなど)のデザインの進化には目的があるのか。「生物哲学」のパイオニアであるマイケル・ルースが答える。
[原著:Darwin and Design-Does evolution have a purpose?]