個体から生態系に至るまで,最新のフィールド調査法およびその分析・解析手法を幅広く紹介するシリーズ第1弾!
森林生態系の物質循環過程を調べることは,生態系の仕組みを正しく理解し,その環境保全機能解明に役立つものである。しかしながら,森林生態系における生物地球化学(生態系における物質循環を取り扱う研究分野)に関して,1冊として網羅的にまとめられたフィールド調査法の本はこれまで見当たらなかった。
そこで,本書ではこれから研究を始めようとしている大学生,大学院生,研究者,ならびに周辺分野の技術者や教員などの初学者を対象とし,森林集水域の物質循環調査法について,フィールドでの具体的な観測方法や機器,サンプルの取り扱い等についてできるだけ平易な解説をしている。取り扱っている観測項目は多様であり,大気沈着,林内雨・樹幹流,リターフォール,リター分解,土壌溶液,土壌微生物の物質代謝,植生バイオマス,植物の養分吸収,細根動態,河川水文・水質などが含まれ,各種機器分析の概要,サンプルの前処理,データの解析法,野外操作実験・プロセスモデル・データベースの活用についても言及している。
また,各調査項目において実際に観測される値を想像できるよう,できるだけ具体的な数値を図表に示した。特に,筆者がこれまで調査してきたデータを,国内外での研究事例とあわせて多く引用・紹介している。