生細胞蛍光イメージングは,いまや生命科学系の研究者にとって必須の研究ツールとなっている。しかし,実際に研究を行っている研究者は,その原理や正しい使い方が分からないまま使っていることも多く,十分な成果が挙げられないばかりか,やり方によっては間違った結論を出す可能性もあり,適切な教育が熱望されている。そのような状況から,2003年より,大学院博士課程の大学院生や若手の研究者を対象に,蛍光顕微鏡の原理や使い方を教える「細胞生物学ワークショップ」を開催してきた。そして開始から5年目となる2007年に,講師陣を中心にワークショップでの講義と実習の内容をまとめ,『講義と実習 生細胞蛍光イメージング』として出版し,教科書としてきた。
しかしそれから8年が経ち,その間に超解像顕微鏡法が開発され(2014年ノーベル化学賞),新しいイメージング法に適する蛍光プローブや新規の画像処理法が開発されるなど,この分野は日進月歩の勢いで進んできている。また,当時は発展過程にあったFRAP技術なども成熟してきた。そのような状況を鑑みて,最新の内容を加えて新版を作ることになった。新版の出版にあたって最もうれしいことは,過去のワークショップの受講生が執筆者に加わっていることである。
本書は,これから蛍光顕微鏡イメージングを行おうとする者に,基本から応用まで実践的な知識を与えることを目的に書かれている。そのために,顕微鏡装置やイメージング法の基本的知識を記述した講義編に加えて,試料の調製法や解析法について実践的な内容を実習編に記述した。これから蛍光イメージングをやってみようと思っている人,イメージングをやってみたがうまくいかなかった人,データ解析の方法が分からない人に必読の書であると確信している。実習編では,蛍光顕微鏡の講習会に必要な講義内容や試料の準備,実験の手順について再現しているので,これから同様の講習を行おうとする教師にとっても役に立つものになっている。この本が,これから蛍光顕微鏡法を学ぶ者にとって,また教える者にとって,道しるべとなることを願っている。