大脳基底核―意思と行動の狭間にある神経路― 

書籍情報
シリーズ名ブレインサイエンス・レクチャー 【7】巻
ISBN978-4-320-05797-5
判型A5 
ページ数166ページ
発売予定2019年07月25日
本体価格3,200円
大脳基底核 書影
大脳基底核

新刊

「こうしようと思う」ことと,「実際に動く」ことの間にいったい何があるのだろうか? パーキンソン病は,中脳という場所に存在するドーパミン神経細胞が失われることによって発症する病気である。パーキンソン病になるとただじっと動けなくなるというだけではなく,振戦というふるえ,つまり「動きたくないのに動いてしまう」症状が出たり,普段は歩けない床にチョークでラインを引いてあると歩けたりといったことが起こる。

ドーパミン神経細胞は,健康な状態では,大脳基底核という脳領域に投射している。つまりパーキンソン病の症状は,大脳基底核がドーパミンを受け取れなくなることで起きていると考えられる。しかしながら,パーキンソン病の症状はあまりにもミステリアスで,その説明はなかなか一筋縄ではいかない。実際に現在の最先端の研究でも,未解決の部分がたくさん残されている。

この本では,そんな思いどおりに動くための「大脳基底核」について,解剖,生理,薬理などいろいろな側面から解説した。未解決な部分は,できるだけ未解決であることがはっきり伝わるように書いたつもりである。未解決の部分を含めて読者の皆さんに少しでも興味をもっていただけるよう,専門的なやや難しい部分と読みもの的な部分,そして学術論文にはなかなか書けない筆者らの妄想も本書には盛り込んだ。研究分野として発展途上の領域のため,「わかる」ためではなく,「自分なりに推理する」つもりで読んでいただければと思う。

目次

第1章 はじめに
1.1 小脳との比較から
1.2 動きたいのに動けない

第2章 大脳基底核の構成要素
2.1 大脳基底核
  2.1.1 脳と神経細胞(ニューロン)の形
  2.1.2 大脳基底核の構造
  2.1.3 大脳基底核を構成するニューロンの数
  2.1.4 神経回路研究のキーワード
2.2 線条体
2.3 淡蒼球外節
2.4 視床下核
2.5 淡蒼球内節
2.6 黒質網様部
2.7 黒質緻密部

第3章 線条体には複数の神経回路がある
3.1 直接路と間接路
3.2 ストリオソームとマトリックス

第4章 大脳皮質―大脳基底核―視床ループ
4.1 線条体への興奮性入力と線条体のはたらき
  4.1.1 大脳皮質から線条体への興奮性入力
  4.1.2 視床から線条体への興奮性入力
  4.1.3 興奮性入力によって線条体はどのように動くのか
4.2 大脳基底核からの出力―視床とその他の神経核
4.3 ループ構造
4.4 大脳基底核回路研究の展望

第5章 大脳基底核は大脳皮質から入力を受ける:ふたたび
5.1 大脳皮質の構造
  5.1.1 大脳皮質の形
  5.1.2 どの大脳皮質細胞が線条体へ投射するのか―層構造と細胞のタイプ
5.2 2種類の大脳皮質─線条体投射とその機能を考える
  5.2.1 線条体へ投射する2種類の大脳皮質ニューロン
  5.2.2 大脳皮質出力をつくる局所神経回路
  5.2.3 大脳皮質から線条体への結合に法則があるか?
5.3 ハイパー直接路
  5.3.1 大脳皮質から入力を受ける基底核は線条体だけではない
  5.3.2 大脳皮質─視床下核投射は大脳皮質─線条体投射より速い
  5.3.3 大脳皮質─視床下核投射は興奮性回路を動かす
  5.3.4 ハイパー直接路は何をやっているのか

第6章 大脳基底核と学習
6.1 学習とは
6.2 報酬と学習

第7章 大脳基底核に由来する病気
7.1 パーキンソン病
  7.1.1 ドーパミンとパーキンソン病
  7.1.2 パーキンソン病の症状
  7.1.3 パーキンソン病の薬物治療
  7.1.4 パーキンソン病の外科治療─DBS
  7.1.5 今後の展開と新しい治療の可能性
7.2 ハンチントン病
7.3 ジストニア,その他

第8章 おわりに