Oxford分子医科学辞典

書籍情報
ISBN978-4-320-06148-4
判型A5 
装丁函入
ページ数1162ページ
発行年月2005年06月
本体価格57,000円
Oxford分子医科学辞典 書影
Oxford分子医科学辞典

(訳者の序より)
 内分泌学は,分子レベルの研究が進むにつれて他の生物医科学の分野,とくに神経,発生分化,免疫,増殖因子やサイトカインなどの研究分野と連係したネットワークの形成がますます密度を増してきた。本辞典のhormoneの項でも「もともとは,内分泌腺で合成され,血流を介して離れた場所にある標的器官に輸送される特殊な有機分子に対して用いられた語。現在では,生命体により合成され,高い親和性と特異性をもって同じ個体内の標的細胞の受容体に結合することにより細胞応答を開始する化学伝達物質すべてに対して用いられる」と述べられている。当然,その理解には,分子遺伝学,細胞生物学,生化学などの知識が背景にある。本辞典の翻訳出版は,そのような内分泌医科学の包括的な理解に適うもので,時機を得たものと考える。このことと関連して,本書の表題から原書にある「内分泌学」の名称をあえて除いた。私/監修者の認識が古いのかもしれないが,内分泌学をいまだに古典的な定義でとらえる人が多いとおそれたからである。この日本語表題の不備を補うため,原書のタイトルを併記して対処した。

 本辞典の特徴は,まず単独の執筆者によって編集されていることである。したがって,ページを繰ってみると,項目によっては説明が非常に詳細にわたるものが散見され,専門辞典にふつうに見られる内容の統制された均一配分からはみだした傾向が見られる。たとえば,hydrochloric acid <塩酸>項の説明は1ページの6割強に及び,食物摂取による神経刺激に出発する一連の内分泌と生化学的反応のネットワークから胃の疾患の原因論に至る動的な切り口が印象的である。また,薬化合物や生体化合物などの化学構造式やペプチドホルモンなどのアミノ酸配列がふんだんに示され,視覚に訴える魅力がある。

 この個性的でやや教科書的な辞典から私の頭に浮かんだのは,かつて留学した米国の医科大学の階段教室で教授がとうとうと講義を進めるなか,学生たちはしわぶき一つたてずに一語も聞き逃がすまいと一心不乱にノートをとっている情景である。しかも,教室の最後列には同僚の教授陣とポストドックたちがずらりと同席して講義を聴いている。Martin博士はおそらく長年の講義録をもとに本辞典を編集したことは想像に難くない。それにしても,項目数約13,000語の収録と2,000余の数の化学構造式を提示した著者の博学ぶりには敬意を表する。

 翻訳作業が進むにつれ,原著の出版から年月が経っていることも含めて記述内容の改正や確認事項が累積してきた。ところが,原著者と連絡をとる段階になって原著者Martin博士の死去という思わぬ事態を迎えた。Oxford University Press(New York)は当初われわれの指摘事項の科学的重要性を容易に理解できず,内容の改正変更は出版社の権限ではできないと難色を示した。度重なる交渉で最終的には,Oxford University Pressも米国のさる大学の当該専門分野の第三者に判断を委ねた結果,われわれの指摘事項が全面的に正しいと判定され,内容の補足改正は2次出版社である共立出版側の自由な裁量に任されることで決着した。以上の経緯から,翻訳担当者(および外部の研究者)には単なる翻訳作業を越えた科学的内容の照査をお願いする羽目になった。原著者の死亡という異例の事態に対処して共立出版側として遺漏なきように万全の体制で翻訳に臨み,総括編集段階でも多くの専門家に助言をいただきながら全体的な補足・修正を行なった。
監修者 瀬野悍二


●本辞典の特色
1.辞典で定評のあるOxford University Press刊"Dictionary of Endocrinology and Related Biomedical Sciences"(Constance R. Martin著,1995年)の全訳.

2.英語の見出しによる小項目方式による辞典で,収録項目数は約13,000。

3.カバーする範囲は医学,薬学,化学,生物学で,細分すれば内分泌学,薬理学,生理学,分子腫瘍学,免疫学,発生学,細胞生物学,生化学,分子遺伝学,微生物遺伝学,ウイルス学,生物物理学,進化など広範にわたる。

4.一人の著者によって編集された辞典なので,全体にわたって統一された内容を誇る。

5.医学の一領域としての狭義の内分泌学でなく,生体の機能的分子ネットワーク全体を捉えた新時代の内分泌学という観点で執筆されている。

6.記述内容に関しては平易な言葉での説明を心がけ,他分野の読者にとまどいを与えないよう,略語,同義語,別名などを多く収録。

7.記述分量に関しては,他の辞典に見られるような一定字数にはこだわらず,時には1頁を超える分量で内容を詳説。

8.科学的な議論には欠かせない化学式や化学構造式を積極的に収載し,収録した化学構造式は2,000余を数える。

9.DNAやRNAの塩基配列,ペプチドやタンパク質のアミノ酸配列も多く収載し,化学構造式とあわせて視覚に訴える魅力を持つ。

10.原著出版社との合意のうえで,必要に応じて2003年末の最新科学情報に基づいて記述内容を全体にわたって改訂した。

11.薬の代表的な商品名,開発元,発売状況(たとえば,日本で発売されているかどうか)を日本の実情にあわせて書き換えた。

12.ヒト白血球の分化抗原(CD)に関して,原著に収録されたCD1~78については最新情報により記述内容を更新するとともに名称の変遷表を別に用意し,その後に追加されたCD79~247については原稿を新たに書き起こして付録として本辞典に追加した。

13.化学構造式に関しては,原著では表記法の不統一が散見されたため,できるかぎり立体表記を心がけて正書法に則ってすべての化学構造式を描き直した。

14.見よ項目を適宜追加して,本体が英語索引としても使えるよう配慮した。

15.巻末には和文索引を付けたが,英語も併記したので見出し語の和英辞典としても使用できる。

〔日本図書館協会選定図書〕

目次

ギリシャ文字

A~Z

付録
付表1.ヒト赤血球のCD(cluster of differentiation)分類
付表2.辞典本文に記載してあるCD分類項目の改訂(削除・細分類・追加)表

和文索引