確率変数の収束と大数の完全法則―少しマニアックな確率論入門― 

書籍情報
ISBN978-4-320-11350-3
判型A5 
ページ数186ページ
発行年月2019年02月
本体価格2,900円
確率変数の収束と大数の完全法則 書影
確率変数の収束と大数の完全法則

 確率論において,「偏差のランダムな正負の打ち消し合い」という大数の法則,中でも大数の弱法則,強法則はよく知られた定理であるが,大数の完全法則は強法則の特別な場合についてやや強い結論を導く定理であり,様々な応用における数学的な拠り所となっている。本書は,通常の測度論に基づく確率論,特に実数値の独立確率変数列で書ける範囲を扱い,初等的な確率論の教科書に共通する基礎事項を随所に配置しながら,大数の法則,その中でも特に大数の完全法則を大テーマとしてとりあげていく,解析的な確率論の特徴的な入門書である。
 まず,確率論の基礎事項とも言える,確率変数列の確率収束,概収束,完全収束といった収束の定義の差異を紹介していく。次に,大数の完全法則の証明へと進み,さらに大数の法則と関係の深いグリヴェンコ・カンテリの定理の完全収束版に注目して議論を進めていく。最後に,セミノルム付き線形空間値の大数の完全法則まで議論する。

目次

第1章 大数の法則
1.1 積み上げることと正負の打ち消しと
1.2 大数の強法則
1.3 ランダムウォークとアボガドロ数
1.4 大数の完全法則の証明のあらすじ
1.5 グリヴェンコ・カンテリの定理

第2章 実確率変数の不等式と収束のオーソドックスな入門
2.1 基礎不等式
2.2 収束と距離
2.3 実確率変数列の確率収束
2.4 実確率変数列の概収束
2.5 実確率変数列の完全収束

第3章 独立実確率変数列の大数の完全法則の証明
3.1 大数の完全法則の証明
3.2 ヒンチンの不等式
3.3 イェンセンの不等式と条件付き期待値
3.4 マルチンケヴィチ・ジグムンドの不等式
3.5 大数の強法則の初等的証明

第4章 セミノルム付き線形空間の少しマニアックな入門
4.1 セミノルム付き線形空間
4.2 ヒンチンの不等式の一般化(性質 Kr,qK'U,r,q
4.3 有限次元線形空間のノルム
4.4 有限次元線形空間は性質 K2,q を持つ
4.5 有界差異法による K'U,r,qq = 1 への帰着

第5章 有界変動関数の空間と一般化したグリヴェンコ・カンテリの定理
5.1 単調関数の基礎性質
5.2 有界変動関数の線形空間 BV (R)
5.3 BV (R) は性質 Kr,q を持たないが性質 K'U,2,q を持つ
5.4 単調関数値に一般化したグリヴェンコ・カンテリの定理
5.5 Lp 空間は性質 K2∧p,q を持つ

第6章 一般化ヒンチンの不等式と線形空間値大数の完全法則
6.1 パンドラの箱
6.2 セミノルム付き線形空間値列の完全収束
6.3 確率空間と確率変数列への要請
6.4 セミノルム付き線形空間値の大数の完全法則
6.5 例:一様評価のノルム付き線形空間再訪