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量子コンピュータによる機械学習

書籍情報
ISBN978-4-320-12462-2
判型A5 
ページ数368ページ
発売予定2020年08月31日
本体価格4,400円
量子コンピュータによる機械学習 書影
量子コンピュータによる機械学習

新刊

量子機械学習は,量子力学に基づく計算手法という新しい概念と,近年隆盛をむかえる機械学習の両者が相まって非常に興奮を覚える新しい分野に感じられる。しかしその基礎を押さえた書籍は意外なことに少ない。研究内容を紹介するような文献はいくつか見られるものの,両者の初学者が手にとり,そしてお互いの分野を知り,橋渡しをするような本当に求められている人材を育成するような教科書になる文献は存在しなかった。

本書は,機械学習の概観を知り,しかし優しい言葉でわかったような気になるのではなく,量子機械学習の枠組みに昇華させるために必要な数学的な要素や用語を押さえて,後で納得感が得られる伏線がしっかりと張られた心地よい構成になっている。量子力学の説明にしても,従来の教科書の記述が冗長であると喝破して,必要最小限の記述で,直接的に量子コンピュータ,量子機械学習へのガイドとなっているところは,急速に進化するこの分野における教科書としての位置付けが明確である証左とも言える。いわゆるゲート式,アニーリング式のどちらに偏ることもなく,これまでの研究で重要な起点,進展の重要なところを取り上げており,読み終わった後に現在の研究の最前線においても陳腐化しない知識を抑えることができる。

本書はそうした量子機械学習の研究を始めるにあたり,それぞれの分野の研究者を始め,企業の開発者,大学院生,学部生が読み進めるのにちょうど良い難易度で,バランスよく両分野を意識した配置で書かれた良書である。

「量子機械学習,ないしは量子コンピュータの研究は,言葉だけを受け取ると障壁が高いように感じられる。しかしながらその正体は,両者の分野の過不足のない洗練された内容を学ぶチャンスと言える。両者ともに歴史が古いようで数学や物理学の多くの分野とは異なり,まだ新しい。特に量子コンピュータの登場により,量子力学は学ぶ内容や道筋について,再考が求められているときに来ているだろう。機械学習においてもだいぶその数理的内容が網羅的に整備された後であることを考えると,コンパクトにまとめて両者の関係を見つめながら学ぶのにもっとも効率的な時期を迎えていると個人的に強く思う。本書はそういう背景も踏まえて,だいぶスムーズに基礎的な事柄について学ぶこともできるため,どちらの分野にとっても有益で,相補的な書籍になることが期待できる。」
(監訳者まえがき より)

目次

第1章 はじめに
1.1 背景
 1.1.1 2つの学問の融合
 1.1.2 量子機械学習のはじまり
 1.1.3 4つのアプローチ
 1.1.4 教師あり学習のための量子計算
1.2 量子コンピュータによるデータの識別
 1.2.1 二乗距離識別器
 1.2.2 アダマール変換による干渉
 1.2.3 量子二乗距離識別器
 1.2.4 簡単な例から得られる知見
1.3 本書の構成
参考文献

第2章 機械学習
2.1 推定
 2.1.1 推定に関する4つの事例
 2.1.2 教師あり学習
2.2 モデル
 2.2.1 データはいかに推定モデルを導き出すか
 2.2.2 モデルの質の把握
 2.2.3 ベイズ学習
 2.2.4 カーネルと特徴写像
2.3 学習
 2.3.1 コスト関数
 2.3.2 確率的勾配降下法
2.4 機械学習の手法
 2.4.1 データフィッティング
 2.4.2 人工ニューラルネットワーク
 2.4.3 グラフィカルモデル
 2.4.4 カーネル法
参考文献

第3章 量子情報入門
3.1 量子論の入門
 3.1.1 量子論とは
 3.1.2 量子論のはじめ
 3.1.3 量子力学の仮定
3.2 量子計算入門
 3.2.1 量子計算とは何か
 3.2.2 古典ビットと量子ビット
 3.2.3 量子ゲート
 3.2.4 量子並列性と関数値評価
3.3 Deutsch-Joszaのアルゴリズム
 3.3.1 Deutchのアルゴリズム
 3.3.2 Deutsch-Joszaのアルゴリズム
 3.3.3 量子アニーリングと他の計算モデル
3.4 情報の符号化の方法
 3.4.1 計算基底符号化
 3.4.2 振幅符号化
 3.4.3 量子サンプル状態符号化
 3.4.4 ハミルトニアン符号化
3.5 重要な量子ルーチン
 3.5.1 グローバー探索
 3.5.2 量子位相推定
 3.5.3 行列の乗算と逆行列
参考文献

第4章 量子優位性
4.1 学習の計算複雑性
4.2 サンプル複雑性
 4.2.1 メンバシップクエリからの厳密な学習
 4.2.2 事例からのPAC学習
 4.2.3 ノイズの導入
4.3 モデル複雑性
参考文献

第5章 情報の符号化
5.1 計算基底符号化
 5.1.1 入力の重ね合わせ状態の準備
 5.1.2 計算基底符号化での計算
 5.1.3 量子ビットからのサンプリング
5.2 振幅符号化
 5.2.1 線形時間での量子状態準備
 5.2.2 量子ビット数に関して効率的な状態準備
 5.2.3 振幅を用いた計算
5.3 量子サンプル状態符号化
 5.3.1 同時確率分布
 5.3.2 周辺化
 5.3.3 棄却サンプリング
5.4 ハミルトニアン符号化
 5.4.1 多項式時間ハミルトニアンシミュレーション
 5.4.2 量子ビット数に関して効率的なハミルトニアンシミュレーション
 5.4.3 密度行列の指数関数化
参考文献

第6章 推論のための量子計算
6.1 線形モデル
 6.1.1 干渉回路による内積
 6.1.2 線形モデルとしての量子回路
 6.1.3 計算基底符号化における線形モデル
 6.1.4 非線形活性化関数
6.2 カーネル法
 6.2.1 カーネルと特徴写像
 6.2.2 表現定理
 6.2.3 量子カーネル
 6.2.4 距離に基づいた識別器
 6.2.5 密度グラム行列
6.3 確率モデル
 6.3.1 確率モデルとしての量子サンプル状態
 6.3.2 条件付き独立性を持つ量子サンプル状態
 6.3.3 平均場近似の量子サンプル状態
参考文献

第7章 量子計算による学習
7.1 量子BLAS
 7.1.1 基本的な考え方
 7.1.2 逆行列の計算法
 7.1.3 量子加速とさらなる応用
7.2 探索と振幅増幅
 7.2.1 最近傍データの発見
 7.2.2 データの重ね合わせ状態に対するグローバー探索の適用
 7.2.3 振幅増幅によるパーセプトロンの学習
7.3 さまざまなハイブリッドアルゴリズム
 7.3.1 変分アルゴリズム
 7.3.2 変分量子機械学習アルゴリズム
 7.3.3 数値最適化法
 7.3.4 変分識別器の解析的な勾配
7.4 量子断熱機械学習
 7.4.1 制約なし2次最適化問題
 7.4.2 サンプラーとしてのアニーリングマシン
 7.4.3 他のデバイス例
参考文献

第8章 量子モデルを利用した学習
8.1 イジング型模型の量子力学への拡張
 8.1.1 量子イジング模型
 8.1.2 量子ボルツマンマシンの訓練
 8.1.3 量子ホップフィールドモデル
 8.1.4 他の確率モデル
8.2 変分回路とニューラルネットワーク
 8.2.1 ニューラルネットワークの線形変換としての量子ゲート
 8.2.2 モデルパラメータ数の考慮
 8.2.3 ユニタリ変換を用いた回路
8.3 量子力学を利用したモデルに対する他のアプローチ
 8.3.1 量子ウォークモデル
 8.3.2 重ね合わせと量子アンサンブル
 8.3.3 QBoost
参考文献

第9章 これからの量子機械学習
9.1 スモールデータvsビッグデータ
9.2 ハイブリッドアプローチvs完全なコヒーレントアプローチ
9.3 定性的優位性vs定量的優位性
9.4 量子計算に対して機械学習は何ができるのだろうか
参考文献

索引