高校数学+α:基礎と論理の物語  

  • 宮腰 忠 
書籍情報
ISBN
978-4-320-01768-9
判型 A5
ページ数 584ページ
発行年月 2004年09月
本体価格 2,600円
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高校数学+α:基礎と論理の物語

 中学校までの数学は,具体的で目に見えるものが対象なので,「なるほど納得」でほとんどのことは理解できます。しかしながら,高校に入ると納得だけでやっていくのは無理があります。数学の対象が余りにも抽象的になるからです。特に数学の基礎に関する部分については,たとえ話のような説明は説得力をもちません。そこで,感覚的には完全には納得していないけれども,正しいことから出発し,「論理」によって"それ以外にはあり得ない"との結論を得る方法を活用する必要が出てきます。その一方で,高校生・大学生の学力低下は知識人の頭痛の種になり,今や「論理的思考能力」つまり「考える力」の向上が強く叫ばれています。その能力は高校生のときに訓練されるべきものです。このような状況を考えたとき,"高校生の考える力を養い,そして大学の数学にも自然に結びつく数学参考書はないものか",そんなことを考えてこの書は書き始められました。

 その目的のために,まず,この書の中心課題を数学の基礎に関する論理とその構造におきました。論理的能力を伸ばすためには,そもそも'論理とは何か'を理解しなければなりません。それも数学で用いられる超厳密な論理です。そのためには物事や言葉の意味を明確に限定する「定義」を強調し,「真に厳密な証明」とは何かを議論する必要があります。そのことは第1章で実行されます。

 次に,論理を大切にして高校数学の全体を統一的に議論し,その全体像がわかるような書き方に努めました。高校では新たに教わる多くの数学的対象や概念があります。それらに関する基礎事項を明確にし,論理的に物事を進めるためには,それらについての定義および問題意識が明確になる必要があります。そこで,新たな対象や概念を直感的に納得しやすくするためのイメージ作りも念入りに行い,数学史の話題もとり入れて意識を高めるようにしました。そのことは各章の始めの部分で感じられるでしょう。

 論理を大切にするということは基礎を大切にすることに直結します。基本となる定理や重要な公式はできるだけ証明します。実数の連続性,素因数分解の一意性定理,整数論の基本定理,代数学の基本定理,確率の正規分布の積分式など,高校の授業では省略しているものです。厳密な証明ではない場合もありますが納得できるものでしょう。そのために大学の知識が必要ならそれも厭いません。証明に必要な予備知識は全て自前で揃えて自己完結しているので,理解するのに心配は要りません。首尾一貫させるために,大学入試対策で重宝する高級な定理や公式などもきちんと証明しておきます。外積,行列の対角化,数列のはさみうちの原理,ロピタルの定理などです。

 高校の数学は何のためにあるかといえば,本来それは大学の数学を学ぶための準備の教育であって,偏差値を生徒に割り振るためでは決してありません。大学の数学の重要な2本の柱は,高校で習う「行列」と「積分」の発展形で,「行列の対角化(固有値問題)」と「微分方程式」という分野です。この参考書ではそれらが垣間見える形で議論します。それらはかつて大学入試問題でもしばしばとり上げられていました。

 この参考書を楽しく読み進められるように,いくつかの工夫をしました。その1つは,参考書のような書き方ではなく,物語風の書き方にしたことです。この書は君に語りかけます。君はこの書と会話をしながら読み進むことでしょう。その間に練習問題もさせられます。もう1つは数学の歴史の記述に力を入れたことです。また,例題や応用にとり上げる問題は,できるだけ意味があるもの,それも歴史的意味があるものを採用しました。インターネットのRSA公開暗号,フィボナッチ数列と植物の関係,3次方程式のカルダノの公式のパラドックス,ゼノンのパラドックス,関数電卓の原理,アルキメデスによるπの近似計算や放物線の積分,パスカルが受けたギャンブル相談,その他盛りだくさんです。その意味でこの書は数学の教育書の役割も担っています。

 以上述べたように,この書はちょっと風変わりな数学参考書となりました。そのために高校生や受験生以外の人にも役立ちます。

 近年,授業時間の短縮のために高校数学を全部終わらせずに大学に入学する人が多くなっています。また,最近は問題を解く受験技術ばかりが発達して,数学そのものは理解せずに大学に入学する人が多数派のようです。したがって,大学に目出度く入学したのはよいけれど,大学の講義に接してカルチャーショックを受ける大学生はかなり多いはずです。この参考書は,計らずも,その断絶を埋める役割を果たすものになりました。大学的発想で高校数学を見直し,大学1年次の講義に直結します。また,一部には数学科に進む人にも役立つような厳密な議論もとり入れています。例えば,はさみうちの原理の証明に必要なε-δ論法などです。

 この参考書は高校の授業のレベルより少し高く,また高校では証明なしで用いている定理や公式も証明しているので,高校の先生方が授業や課外活動の参考になされてもよいでしょう。実は,私がこの書を書き始めた意図の一つはここにありました。また,職業柄,高校数学と一部大学のものをきっちりと学ぶ必要がある人もおられるでしょう。この書は自己完結する形で書かれているので,それこそ'通分の知識'があれば他の参考書なしで読み進められます。私が密かに期待している読者層は,高校時代の数学は受験勉強だけだったけれど本当は数学が好きだった社会人の皆さん,あなたです。数学の面白さは,大袈裟にいうと'思考によって宇宙を組み立てるような感覚'に浸れる充実感でしょうか。単に問題を解くだけの数学から解放された今,本当の数学を楽しんでみませんか。
(「始めに」より抜粋)

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目次

第1章 数
1.1 数直線
1.2 自然数・整数・有理数
1.3 数学の論理
1.4 基本公式の導出
1.5 数学の論理構造
1.6 集合
1.7 2進法
1.8 実数の小数表示
1.9 実数の連続性
1.10 整数の性質
1.11 素数を利用した暗号

第2章 方程式
2.1 未知数・変数
2.2 2次方程式
2.3 虚数
2.4 因数定理

第3章 関数とグラフ
3.1 関数の定義
3.2 実数と点の1対1対応と座標軸
3.3 1次関数・2次関数のグラフ
3.4 2次関数のグラフの平行移動
3.5 方程式・不等式のグラフ解法
3.6 図形の変換
3.7 関数の概念の発展

第4章 三角関数
4.1 三角関数の定義
4.2 三角関数の相互関係
4.3 三角関数のグラフ
4.4 余弦定理・正弦定理
4.5 加法定理

第5章 平面図形とその方程式
5.1 曲線の方程式
5.2 領域
5.3 2次曲線

第6章 指数関数・対数関数
6.1 指数関数
6.2 対数関数

第7章 平面ベクトル
7.1 矢線からベクトルへ
7.2 ベクトルの演算
7.3 位置ベクトルの基本
7.4 ベクトルの1次独立と1次結合
7.5 ベクトルと図形(I)
7.6 ベクトルの内積
7.7 ベクトルと図形(II)

第8章 空間ベクトル
8.1 空間ベクトルの基礎
8.2 空間図形の方程式
8.3 空間ベクトルの技術

第9章 行列と線形変換
9.1 線形変換と行列
9.2 行列の一般化
9.3 2次曲線と行列の対角化

第10章 複素数
10.1 複素数
10.2 ド・モアブルの定理
10.3 方程式
10.4 複素平面上の図形と複素変換

第11章 数列
11.1 数列
11.2 階差と数列の和
11.3 漸化式
11.4 数学的帰納法
11.5 数列・級数の極限
11.6 ゼノンのパラドックスと極限
11.7 無限級数の積

第12章 微分-基礎編
12.1 0に近付ける極限操作
12.2 関数の極限
12.3 導関数
12.4 関数のグラフ
12.5 種々の微分法と導関数

第13章 微分-発展編
13.1 ロピタルの定理
13.2 テイラーの定理と関数の近似式
13.3 関数の無限級数表示
13.4 複素数の極形式と複素指数関数

第14章 積分
14.1 区分求積法
14.2 定積分
14.3 微積分学の基本定理と原始関数・不定積分
14.4 定積分と面積
14.5 積分の技術
14.6 体積と曲線の長さ
14.7 無限級数の項別微分積分
14.8 広義積分
14.9 微分方程式

第15章 確率・統計
15.1 場合の数と確率
15.2 確率
15.3 期待値と分散
15.4 二項分布
15.5 正規分布

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