複雑系叢書 全7巻

編:早稲田大学複雑系高等学術研究所

編集委員:相澤洋二・稲葉敏夫・鈴木 平・橋本周司・前田惠一・松本 隆・三輪敬之

 本叢書は、各分野のフロンティアで活躍されている方々にそれぞれの立場から「複雑系の問題」を、たとえば現象、実験、技術、理論、方法論、あるいは論理、歴史や思想など、テーマを自由に選んでいただき、専門を越えて議論の輪が広がるように、できるだけ平易な言葉で論じていただくために企画したものであります。
 1980年代に始まった現在の複雑系研究の流れは、自然科学、工学、人文社会科学、数学などの広範な分野に及んでいます。学問の総合化に向かう近年の時代の流れとも相俟って、分野横断的な共同研究を模索しつつ、学際領域の開拓や実際的な課題への挑戦に向けて展開してゆくのがこれからの複雑系研究の状況であろうかと思われます。近代以降に急速に発展した物質世界ならびに精神世界に関する人類の知と技術が、自らが齎した錯雑たる現実に対処するために、またこれまで積み残してきた重い課題に向けて歴史の歩を進めるために、相互の交流を開始していると言えるでしょう。
 複雑システムの誕生、維持、発展、崩壊、そしてつぎのシステムへの変遷など、そのそれぞれの段階に潜む未知の法則性を探り、拡大する予測困難さと多様性に対処する手法や論理を見いだすこと、また学習や教育、さらに科学技術に対する慎重な施策、展望を提供することなど、多くの役割が複雑系研究には期待されるところであります。一言で申せば、それらは繊細で寛容な構想力を培う「グローバルな知」の探求と言えるかもしれません。21世紀には人間活動の拡大がますます多様複雑に進行し、そのなかで複雑系研究に向ける努力は知性の新しい啓蒙にとってかけがえのない道標となるでしょう。そのためにも、高度に専門化した工学技術や社会技術も含めて、《諸学の新たな共同》が何にもまして求められてゆくものと思われます。
 そのような想いから、本叢書では、専門分野を異にする者同士がこれからの複雑系研究に対する期待と切り口をそれぞれの立場から提言し合うことによって、互いの成果とその背景にある理念を共有し、将来のより豊かで個性的な学問的土壌の形成に貢献したいと思います。
 なお、本叢書は、2000年に設立された早稲田大学複雑系高等学術研究所における学際的交流を通して企画・立案され、想いを共有する執筆者をはじめとする大勢の方々の熱意と共立出版のご好意に支えられて刊行を迎えることとなりました。自由の気風から生まれた手づくりの論文集として本叢書を世に送り出すに当たり、研究所の日頃の活動に対して早稲田大学から戴いたさまざまな支援に心からの感謝を表したいと思います。

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