数学と物理の交差点 全9巻

編集:谷島 賢二

自然科学の基礎として、人類の進歩に大きな役割を果たしてきた数学と物理学は、その発祥の時から互いを糧とし、刺激し合い、手を携えて発展してきた。数学は物理を記述する言葉である。しかしそれは単なる言葉ではない。物理学は数学によって思考するのである。
数え上げや、測量、天文学など実用と科学的探究心から誕生した数論や幾何学は様々な物理学との交流と、独自の一般化・抽象化を通して発展してきた。物体の運動の記述のために誕生した微分積分学も古典力学や流体力学などとの交流と、独自の厳密化・精密化を経て飛躍的に発展してきたのである。一方、 量子力学や一般相対性理論などにおける物理学の抽象的な記述はこのように発展した数学なしには可能とはならなかったであろう。したがって、このようなレベルにおける物理学のさらなる発展もまた数学なしにはありえない。数学と物理学は表裏一体の存在なのである。
現在、社会の急速な複雑化によって高度な自然科学的思考力がより強く求められている。これは自然科学の基礎の確固とした理解があって初めて獲得できる。物理学と数学の関わり合いに留意することはこのための大きな力になる。しかしながら、独立な科目として学習されるためからか、 とくにわが国において、このような深い関連性を意識しながら学ぶ機会が乏しくなっている。これは高校・大学の物理や数学の教員の共通の認識であろう。
本シリーズは、このような状況において現代の数学と物理学の具体的な交差の場面を様々な角度から鮮明に例示して、読者がこの重要な自然科学の基礎を学び、あるいは教育するための手助けとなることを目標として企画されたものである。この企画が人類の貴重な文化遺産である自然科学の基礎を深く理解し味わおうとする意欲的な読者のための一助となれば幸いである。

(シリーズ序文より)


《続刊テーマ》

第3巻 『相対論とリーマン幾何学』(山田 澄生)

第4巻 『非線形波動と偏微分方程式』(小澤 徹)

第6巻 『ランダム系のスペクトル理論』(南 就将)

第7巻 『カラビ・ヤウ多様体の幾何学』(細野 忍)

第8巻 『流体力学とトポロジー』(岡本 久)

第9巻 『量子情報の数理』(小澤 正直)

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