共立叢書 現代数学の潮流

編集委員:岡本和夫・桂 利行・楠岡成雄・坪井 俊

 『数学には、永い年月変わらない部分と、進歩と発展に伴って次々にその形を変化させていく部分とがある。これは、歴史と伝統に支えられている一方で現在も進化し続けている数学という学問の特質である。また、自然科学はもとより幅広い分野の基礎としての重要性を増していることは、現代における数学の特徴の一つである。
 「共立講座 21世紀の数学」シリーズでは、新しいが変わらない数学の基礎を提供した。これに引き続き、今を活きている数学の諸相を本の形で世に出したい。「共立講座 現代の数学」から30年。21世紀初頭の数学の姿を描くために、私達はこのシリーズを企画した。  これから順次出版されるものは、伝統に支えられた分野、新しい問題意識に支えられたテーマ、いずれにしても、現代の数学の潮流を表す題材であろう、と自負する。学部学生、大学院生はもとより、研究者を始めとする数学や数理科学に関わる多くの人々にとり、指針となれば幸いである。』


●《推薦のことば》

甘利俊一 (理化学研究所脳科学総合研究センター 領域ディレクター)
 『20世紀の数学の発展は驚くべきものである。嘗て数学は物理学などと一体となり、それを支える論理体系であったが、20世紀に入って現実世界の束縛をはなれ、純粋な知的思考の体系として発展した。こうして、数学は数々のすばらしい頂上を極めた。
 21世紀は分化した諸科学の方法を駆使した新しい形の科学の体系が生まれる。数学はその中で数理科学として指導的な役割を果たすに違いない。本シリーズは、この新しい流れを先取りしようというものである。』


砂田利一 (東北大学大学院理学研究科数学専攻・教授)
 『最近、学問の世界でも、市場原理を取り入れた競争原理とか、国際性とかが喧しく言われている。基礎科学、中でも数学を研究している者は、こんな安っぽいキャッチフレーズに呆れてしまうだろう。数学は、人との競争などと言う「ちゃちな」理由で発展するものではないし、国際性など始めから当たり前のことだからである。本シリーズのテーマと著者のリストを見れば、このような「浮かれた」言葉とは無縁に「深化」する、数学研究の水準の高さを感じることのできる。』


永山國昭 (岡崎国立共同研究機構統合バイオサイエンスセンター・教授)
 『数学は脳構造の写しだと言った人がいる。では現代数学とはどんな脳構造の反映か。ややもすれば私達が受ける引象は数学のための数学、すなわち自己の内側へ内側へと引きこもっていく現代的脳構造のそれである。しかし物理から数学が生まれ、数学が物理を導いたように、かつての現代数学は実世界に接点を持ち、そこから問題を吸収し、それを糧としつつ発展してきた。私自身、最近の経験から初等的な数学ですらまだまだ生きていて現実を駆動する力を秘めていると実感した。この「現代数学の潮流」シリーズが本来のこの数学力を十全に発揮し、新世紀における力強い水先案内役となることを期待したい。』


《続刊テーマ》

○アノソフ流の力学系
松元重則 著

○剛性
金井雅彦 著

○作用素環
荒木不二洋 著

○写像類群
森田茂之 著

○数理経済学
神谷和也 著

○制御と逆問題
山本昌宏 著

○特異点論における代数的手法
渡邊敬一・日高文夫 著

○粘性解
石井仁司 著

○ホッジ理論入門
斎藤政彦 著

分野で探す