アインシュタイン選集 全3巻

著:A.Einstein
監修:湯川秀樹

 アインシュタインは20世紀の物理学を代表する大学者である。彼の業績は原子・分子の微小世界の機構から、無数の星や星雲を包みこむ大宇宙の構造にまで及んでいる。彼は、他の学者たちの思いもかけぬ大胆な着想から出発して、独自の理論を建設することに何度も成功した。
 さらにまた彼は平和主義者として、戦争のない世界を実現するための先駆者の役割を果たしただけでなく、この理想に向っての努力を死の直前まで続けてきた。
 科学者の数の急激な増大に反比例して、個々の学者のスケールが小さくなり、思想が貧しくなりつつある今日、そして科学文明自身のあり方が根本から問い直されている今日、アインシュタインの学問と思想を、原著を通して知ることには、大きな意義があると考えられる。
 本選集の第1巻、第2巻には、彼の物理学に関する主要な論文を収録し、やや詳しい解説を付した。第3巻には、彼の認識論的考察、世界観、平和論、人物評論などのほかに、伝記およびアインシュタイン論を加えることにした。これらが相補って、この巨大な人間の全貌が浮びあがってくることを私たちは念願しているが、果たしてどこまで成功したかは、読者の賢察に待つほかない。

(監修者のことばより抜粋)

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